2014年に生まれたスズキ・ハスラーは、初年度に10万223台を売上げて以来、人気が衰えない。

 グッドデザイン賞、RJCカーofザイヤー、日本自動車殿堂入りなど、名誉と授賞を繰り返した車だから、当然なのだろう。

写真:報道試乗会/幕張。

 開発コンセプトは、ハイトワゴン+SUVを基本に、遊べる車という新ジャンルだったが、オフロードも走れるという欲張り車だった。

 大きな最低地上高・軽では大きめな15吋タイヤ・滑りやすい急坂の下りで威力を発揮するヒルディセントコントロール・アプローチアングル28度/ディパーチャー46度など、四駆としても高いレベルに達していた。

 が、人気の高さは、四駆性能だけではなく、遊びも感じる…少々ヒョウキンで存在感のある、姿も加味する必要があるだろう。

 プラットフォームは、ワゴンRだが、乗り心地はハスラーの方が良い…オフロード想定なのにサスが柔らか仕上げだから、ロールは大きめだが、この種の車で評価は不要だ。

 スズキには、軽では軽市場唯一、珍しい本格的四駆のジムニーがあるから、その延長で気軽に街乗りもできるクロスオーバーSUVの誕生かと思ったさにあらず。

写真:初代ジムニー/江の島。

 発想の原点は、1998年誕生のKeiだった…Keiが2009年で生産が終わるときに、それを惜しむ声を、鈴木修会長が耳にしたのが切っ掛けだったという。

 で、ハスラーは、Keiの後継とみるのが妥当のようだ…結局、セダンとSUVのハザマを狙った新ジャンルを開拓の車だったようだ。

 もちろん、ジムニーと競合せずも、開発コンセプトだったろう。

 Keiのトップバッターは3ドアだった…そのターボ仕様四ドア/105万円で、九十九里方面の試乗に出かけた。

 660cc・60馬力・10/15モード燃費19.4km/ℓの実走燃費は15.0km/ℓで、当時は低燃費と喜んだ記憶がある…100粁巡航時の騒音70dbは、ハスラーより少し高かった。

写真:Kei三ドア/大磯・下四ドア/九十九里方面

 ちなみに、ハスラーの試乗は沼津往復。車は、Xターボ/142.4万円・三気筒・64馬力+エネチャージ効果で、加速が鋭く、身軽な追いこしでストレスがたまらなかった。

 100粁巡航時の騒音69dbは、軽としては問題ない。沼津往復実走燃費は、19.8km/ℓ…同じターボの軽同士だが、15年ほど前のKeiと比較すれば、雲泥の差がある。

写真:ハスラー四ドア/沼津漁港。

 Keiからハスラー、古くはワゴンR、そしてアルト、ジムニー…これまで鈴木修御大が牽引するスズキという会社が、新ジャンルの軽を次々と開発して市場に投入すると、新しい市場が生まれて、軽自動車業界全体が恩恵をもらった。

 次から次へと独特な発想をする、鈴木御大の語録を二つほど…「トップダウンとはトップの号令で動くことではない・トップが現場に降りること」「金は現場に転がっている」見事なウンチクではないか。