今日は、マニアックなメカの話なので、興味ない人は、スキップ願います。

 構造や仕掛けのシステムに、人の名が付いていることがある…車なら、オットーサイクルとかドディオンアクスルとかで、外国には多いが、日本には少ない。

 それは、発明や功績は、企業の物で、個人のものではないという、日本古来の悪弊文化だと思う。

 江戸時代の、良いことは藩主の功績、悪いことは家来の責任という悪弊が、明治を経て、今でも残っているようだ。

 

 さて、オートメカニック誌で、メカニズムofザ・イヤーという行事の、1991年の選出結果が出てきた。

1.世界初量産アルミボディーのNSX。

写真:ホンダNSX/大磯プリンスホテル。

2.エンジン横倒でフラットな床実現のエスティマ。

写真:トヨターエスティマ/九十九里大原漁港。

3.コスモREシーケンシャルターボ。4.三菱ディアマンテのより安全を目指すTCLサス。

写真:三菱ディアマンテとマツダ・コスモ/箱根試乗会。

5.ターセル・コルサのビスカスカップリング。

写真:トヨタ・ターセル/千葉大原漁港。

7.サニーのコンパクトGAエンジン。8.コスモのGPSナビ。9.パルサーの髙出力SR20DETエンジン。10.トヨタの鋳鉄型ブロックの集大成1JZ系エンジン。

 

 さて、6位が抜けているが、三代目いすゞジェミニの、ニシボリックサスペンションが、入っている。

 今回話題にする、人名表記の構造特許だ…開発はいすゞの西堀稔で、それでニシボリックなのだ。

写真:ニシボリックサスの三代目ジェミニ4ドア/箱根試乗会:下・美しいジェミニ3ドア/大網白里海岸。

 当時は、新しい技術のサスとして、四輪操舵=4WSが注目されてた時代だった…先ず、マツダとホンダが、世界初と名乗りをあげた。

 世界初が、二つもと首をかしげたら、マツダは電子制御で、ホンダは機械制御だというので、一件落着した。

 実はウチが世界初と、日産も名乗りをあげたが、厳密にいえば、日産のHICASは同位相操舵だから、ここでは世界初とは言いがたい。

 それを認めると、1977年登場のポルシェ928のバイザッハアクスルの方が、早いということになる。

写真:ポルシェ928/谷田部高速試験場。

 いずれにしても、マツダもホンダも、逆位相になり、小回り特性や高速安定性が抜群だったが、馴れるまでに、違和感があり、低速時に後部を壁にこすったり、特に駐車では決めた位置に停めるのが難しかったり。

 ニシボリック最大のメリットは、高価な電子制御やモーター不要…旋回中に発生する、車体のロールと横Gを利用して、逆位相から同位相に変化を繰り返して、やさしい操安性を得るというものだった。

 その動作は、サスの部品間の、ブッシュのたわみを利用するという、巧妙なし仕掛けだった。

 もっとも、ブッシュのたわみだけならポルシェが先だが、同位相だけ。ニシボリックは4WSで、旋回初動で後輪を前輪と逆位相にして、結果トーアウトでオーバーステア気味に。次ぎに、同位相に変化で姿勢を安定させる仕掛けだから、いすゞの独自技術と認められたのだ。

 

 さて、最近、四輪操舵=4WSを表てに出してPRすることはほとんどないが、技術進歩で違和感が解消するにしたがい、誰も気にしない当たり前のような技術になり、知らずに乗っている時代になったのである。

 いずれにしても、相変わらず日本では、手柄は会社の物で、個人名を冠した新機構、新技術は見つけることが難しい…それが良いことか、悪いことか、私には判らないが。