{わらぶき屋根の山門に・おじぎだけしてすするそば・昔をしのばす縁台に・明治の色の緋もうせん・そばにゆれてる葉隠れ日を・箸で口えとたぐり込む・清水の匂いと笹の香が・静かに鼻えとぬけゆく・雑木林にむさし野の・名残とどめる深大寺・このままであれとただ願う・さびしやわれも早や六十}・サトウハチロー。

 この詩は、深大寺門前の蕎屋屋の{門前}に掲げられていた。明治36年生まれのサトウハチローは、御存知有名な詩人・作詞&作家だ…きっと、旨い蕎を食べ、武蔵野の風情にひたりながら詠んだのであろう。。

 童謡♪ちいさい秋みつけた♪わらいかわせみに話すなよ♪の作詞家と言えば、判る人も。

 近くに調布飛行場があるので、深大寺には良く行ったが、信心ではない…目的は、蕎だ😄。

 深大寺近辺は、武蔵野湧水の名所…蕎を栽培・水車で粉に・捏ね・茹で・晒す。全てに水がかかわので、旨い蕎麦になるのだろう。

 いまや深大寺の周りは、広範囲に蕎屋だらけだが、昭和40年代も、かなりの数があった…その門前左右に並ぶのが、門前と嶋田屋だが、一番良い場所にいることからも、歴史的に見れば、多分この二軒が最古なのだろうと思う。

写真:門前と嶋田屋。

 両店ともに旨いが、店の雰囲気・味など、理由はないが、深大寺に行くと、文久年間創業の嶋田屋より、門前に足が向いてしまう。

 若いころは天麩羅や他の物も食べたが、年を取ってからは、もっぱら粗挽きそばだ…ちょっと色濃く、香り、舌触りなどが、私好みだからだ。

 そして、蕎麦がきゼンザイも、必ずだ。

 さて天台宗の深大寺は、天平5年=733年の奈良時代に、満功上人の開山と言われている。

 古い寺らしく、文化財的仏像絵画が沢山あるようだが、中でもピカイチは、国宝・釈迦如来像…身の丈84cmほどの銅の鋳造らしい。

 創建時に安置とあるから、飛鳥時代の作だろう。が、慶応3年の火災で焼失・再建された本堂裏に放置され、忘れられていた。

 が、明治42年に、発見されて安置。大正2年に、国宝に指定された。

 いずれにしても、武蔵野風情が濃く残る、深大寺周辺の蕎屋、見た目で撰ぶのも良し、駐車場付で撰ぶのも良し、池つきで鯉をめでながら蕎をたぐるのも良し。

 近くには、神代植物園もあり、名物・深大だるま市などに遭遇すれば、幸せというものである。