昨年、正月掲載の再収録です。

 

 謹賀新年…昔からの風習で書きぞめは一月二日なので、拙ブログも今日から始めさせて頂きますので、今年も宜しく御願い申しあげます。

 正月はメデタイ…メデタイから門松や初詣。食べものなら鯛や海老ということになるが、このメデタイ海老の中の伊勢海老を天丼にした店がある。

 千葉いすみ市岬町の{あき}で、海老天丼は全国何処にでもあるが、伊勢海老を天丼にしたのは、あきが初めてなのだそうだ…ちなみに近くの大原漁港は、伊勢海老水揚げ日本一と言われている。

写真:元祖伊勢海老天丼/2019・エビ二匹と頭の味噌椀で2200円

 あきの名物は、伊勢海老天丼、波の伊八御膳、おらが丼などだが、友人の奥さん連が喜んだのは、金目鯛の姿煮だった…私の大好きは刺身定食。

写真:大好物だった刺身定食1800円/2010頃・親方の包丁捌きは一流だった

 ちなみに、波の伊八のいわれは、江戸時代このあたりに住む武志伊八郎が、葛飾北斎名版画、富岳三十六景・神奈川沖浪裏にも影響をあたえたという、波の彫刻の名手だったことによる…近くの飯綱寺の天狗と牛若丸は、伊八の最高傑作と言われている。

 実家が網元の、あきの主人・片岡章人が造る刺身が旨いので通ったが、残念ながら数年前に癌で亡くなった…が、元気で明るい美人女将が旨い料理を出しているので、あいかわらず評判がいいようだ。

 まだ昭和の頃だった、新車試乗・撮影でよく通る道で新規開店したばかりの店に入ったら、大声だしても誰も出てこない。こんな店二度と来るもんかと思ったが、二年ほど経ったら車がたくさん駐まっているので、入ってみた。

 混んでいたので「一人だからカウンターで」と坐ったら目の前が親方…なぜか意気投合して、いらい親しい間柄になった…うちのカミさん料理好きで、親方にキンメの煮かたを教わると、魚の煮つけがプロ級に上手くなった。

 そのころチッチャな男の子が奥で遊んでるので、自動車メーカーやインポーターでもらった、新車のモデルトイなどをプレゼントすると喜んで遊んでいたが、親方がなくなる少し前「あの子も大人になって新宿で美容師やってます」などと女将さんが嬉しそうに話していた。

 親方は車好きで、私が行くたびに違う新車なので、出てきては眺めたり触ったりしていた…ある日「思い切ってセルシオ買いました」と嬉しそうに話していた顔がいまでも忘れられない。

 横綱・大鵬の額がある座敷から見える水槽には魚が泳ぎ、貝がへばりついている。著名自動車評論家・三本和彦を連れていったら「こいつはウメ~」と喜び、車好きの親方も喜び、ノレンの前での記念写真に喜んでいたが、しばらくして癌再発で入院、帰らぬ人となった…その三本和彦も2022年に亡くなった。

写真:左/三本和彦・右/あき主人・片岡章人

 正月から縁起が悪いとお叱りを受けるかもしれないが、あきの元祖伊勢海老天丼、ドライブがてらに食べて欲しい縁起物である…駐車場が広いのもありがたい。