関東大震災で日本橋から築地に移った魚市場は、さらに豊洲に移ったが、まだ築地だったころの築地場外市場に、仲卸業者直営の穴子の店があった…つきじ芳野・吉弥である。

写真:豊洲移転前の築地市場/1980年代空撮筆者・右上茶色ビル朝日新聞社・手前勝ち鬨橋

 

 混雑で歩きにくい横丁の乾物屋横の、すれ違いに肩がぶつかるような更に細い道の奥に、芳野は在った…大きな屋台のような小さな店で、カウンターだけ。食べていると、通行人が背中をコ摺っていくような店だった。

 店の親方は駄ジャレ好きなようで、カウンターの追いダレ容器の甘い方には{甘ったれ}・辛い方には{ばかったれ}と書いてあった。

 名物は、穴子の蒲焼き+炙り焼き煮がコンビで{ばかしあい}…この{ばかしあい}とは、鰻重と張りあっての駄洒落ではないかと推測する。

 しばらくすると、波除神社がある広い通りに店が移った。一階カウンター、二階テーブル席で、コ綺麗で旨そうな店構えになった。

 さっそく訪ねたら、ばかしあいも健在。注文したら、お膳に砂時計で「砂が全部落ちてから蓋を取ってください」という…穴子が蒸されて美味しくなるのか、穴子+ゴ飯+タレが馴染む時間がほしいのか?。

 相かわらず旨いが、値段が上がり3000円超えになったが、時節がら仕方なかろう。もっともランチなら、1000円台からあるので、それほど敷居が高いことはない。さらに刺身など鮮魚との組みあわせもあり、イロイロと楽しめる。