江戸時代は松平肥前守屋敷、明治になると陸軍練兵場になり、明治36年に日比谷公園に変身した。

 その開園時に公園の中に開店したのが、洋食屋・松本楼だった。

 知る人ぞ知る松本楼だが、大木が茂る中にポツンと一軒、意外に知らない人も多い。また立派な建物なので入りそびれてしまう人もいるようだ。

 気にせずに入ってしまえば、店内は広く明るく、しかも値段が安いのだから嬉しくなる…昼どきは広い店内がサラリーマンらしき男女で一杯になる。。

 私が好きな、オムハヤシの1280円は、最近の諸物価高騰で1350円になったらしい。ここの名物ビーフカレーも980円から1100円になったようだが、それでも世間相場として高いとは思えない。

写真:サラダ

写真:オムハヤシ1280円

 都心の一等地にある立派な店、訓練いきとどいた従業員、上質で旨い料理を考えあわせれば、高いどころかむしろ安いとさえ感じるほどである。

 長い歴史があるだけに顧客の中には著名人がたくさんいる。夏目漱石なのどもその一人、疲れをいやす憩いの場だったらしい。

写真:カレー980円

 胡錦濤中国国家主席が来日したとき、福田康夫総理が歓迎夕食会を開いたのも松本楼だった。

 この日中友好に松本楼は適役だった…というのも、中国革命の父と呼ばれる孫文が、革命に失敗して日本に亡命した。そのときに終始面倒をみた梅屋庄吉の曾孫が松本楼の主という縁があるからだ。

 日本亡命で力を蓄えた孫文は、再度革命の成功で清を倒し、中華民国を建国、政治を民衆の手に取り戻した…有名な辛亥(シンガイ)革命である。

 松本楼のチャリティー10円カレーは有名な行事…昭和46年沖縄デーの混乱中の放火で全焼した松本楼が、昭和48年新装オープンの時に10円チャリティーカレーを開催。その売上げに松本楼の分をたして慈善団体に寄付をするもので、以後秋の恒例行事となった。

 とにかく、緑にかこまれたオ洒落な立派なレストランで、美味しくて安い食事、こいつは行かなきゃ損というものである。