アフガンハウンドという犬種をご存知でしょうか。

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https://www.youtube.com/watch?v=HgK7eN6ieq4

 

 

原産国アフガニスタンの狩猟犬。その美しい被毛と優雅な物腰で犬の世界の貴公子、またはトップモデルと呼ばれています。

 

両親と仲が良かった国際結婚のカップルがこのアフガンハウンドを飼っていました。

子供のいなかった夫婦はわざわざアメリカのブリーダーと交渉して、最高の血統を持つアフガンハウンドを日本に取り寄せて一人息子のように可愛がっていたのです。

 

その血統書の正式名は、

プリンス・ラッシャー・オブ・カブール星乙女のトキメキ

 

私は人間界にもこんな高貴なフルネームを持つ人物を他に知りません。

 

それなのにイギリス人のご主人は、この犬のカラーがまるでハッシュドポテトのようだからという理由でこの子を「ハッシャ」という愛称で呼んでいました。

この高貴なプリンスをイモ料理にちなんで名付けるのもどうかという感じですが、当時はプロレスラーのラッシャー木村やお笑い芸人のラッシャー板前がテレビで活躍していた時代と重なっており、人前で犬の名を呼ぶ時はラッシャーじゃなくて良かったなと思いました。

 

アフガンハウンドの性格は自由気ままで、命令を嫌う事から「世界一頭の悪い犬」とも言われていますが、この意見に同意する事はできません。ハッシャ君は礼儀正しく上品で、コマンドーにも忠実で学習能力の高い優等生。子供のいない夫婦と一緒の静かな暮らしに慣れていたはずですが、我が家に遊びに来ると騒々しい子供たちとも辛抱強く付き合ってくれて、「空気を読むことができる」犬でした。

 

ある時、両親がこのハッシャ君を我が家に迎える事を考えている、と言いました。

 

ハッシャ君を溺愛していた夫婦が急にイギリスに帰国しなければいけない事情ができてしまったのです。

イギリスは検疫が非常に厳しいだけでなく、犬の年齢がこの当時で既に8歳を超えており、まだ欧州までの直行便も無かったため体力的にも厳しいだろうとの事でした。

私たちは大好きなハッシャ君がうちの子になる!と大喜びでしたが、ご夫婦と犬の別れを考えると複雑な気持ちになりました。

 

我が家に連れて来られたハッシャ君は、まるで自分の身に起きた事情を理解しているようでした。

威嚇しまくりの先住猫に対しても決して反抗的な態度を取ったりせず、自ら進んで家族のヒエラルキーの最下位に身を置いて平和な関係を保ちました。

 

全く手の掛からない良い子でしたが、被毛の手入れは本当に大変でした。

 

ご夫婦が帰国する前は犬との別れを惜しんでたくさん野山を駆け回らせたらしく、小枝や枯葉の絡んだ毛玉がいくつかできていました。

何とか毛玉を解こうと母と一緒に四苦八苦しましたが、一度できてしまった毛玉は切り取らない限り日に日に巨大化していくようでした。さらに毛玉周辺はブラシが入りにくくなるため、次々と新しい毛玉が発生する悪循環。一度リセットするためにサロンで丸刈りにしてもらうのは?と提案しましたが父はハッシャ君の丸刈りに絶対反対だったため、結局できてしまった毛玉をその都度切り取るという対処しかできませんでした。このため、せっかく血統の良いプリンスなのにいつも微妙にデコボコしており、その事はいまだに残念に思っています。

 

大型犬で朝晩一時間ずつの運動が必要だったので、夜は会社から帰って来た父が1時間、朝は母が30分、午後は学校から帰った私が30分と、家族で手分けして世話をこなしました。

 

しかし、犬のために朝の貴重な30分を捧げるのが負担だったのか何なのか母が、

 

「すっごくいい事思いついたのよ!」

 

と張り切って言います。

 

もう嫌な予感しかしません。

 

「今朝ね、ハッシャ君を家から家の宣教奉仕に連れて行ったの!」

 

本気?お母さん正気?

 

「それがすごいの!どの家に入っても、皆すっごく話を聞いてくれるのよ!誰もやっていないけど、犬連れ奉仕って素晴らしい効果があるわよ!」

 

いや…それって多分、

どうして自分の玄関先にこんなトップモデルみたいな大型犬が連れて来られたのか、

その理由を家の人は知りたかったんじゃないのかな。

別に宗教の話に興味持った訳じゃないと思うけど・・・

 

それでも母は、この犬散歩と奉仕を兼ねた一石二鳥方式の成功に得意になっています。

 

「兄弟に怒られなかったの?」

と聞きますが、

 

「ぜ~んぜん!何か言いたそうにしていたけど、犬連れ奉仕はダメってどこにも書いてないもんね!」

 

と、まるでとんちの一休さん気取りです。

 

そりゃあお母さんみたいな発想の人が今までいなかったからに決まってるでしょ!と言いましたが、母は翌日もその次の日も犬同伴で奉仕に出掛けました。

 

そしてついにドクターストップならぬ長老ストップが出されて、犬と一緒の奉仕は禁止になってしまいました。

 

母は非常に不満そうにしていましたが、私自身は犬が苦手な人にショックを与えたり、犬嫌いの人にキレられたり、ハッシャ君に危害が及ぶ前に中止になって良かったなと思いました。