(注)今回のお話しは動物の死体が出て来るので、苦手な方はスルーしてくださいね。
十代の頃、大好きな動物の事が学べる専門学校に通っていました。
特に何か資格が取れるでもなく、学歴としても微妙な無認可の学校でしたが面白い体験も一杯できたし、一生の友人もできたので行って良かったと思っています。
私がその後バプテスマ→開拓奉仕と特に抵抗なく進めたのは、ほんの一時期でもやりたいことを思いっきりできたという満足感があったからです。
学校は東京にあり、定期的に長野の実習校で酪農実習や野鳥の観察なども行なっていましたが、その実習校で夕食後、誰かが「裏にタヌキがいるぞ!」と言い出したのです。
皆で懐中電灯を持ってそっと裏庭に出ると、茂みの中からうずくまるようにしてこちらをじっと見ているタヌキが確かにいました。でも不思議な事に逃げようとしませんし、その辺を嗅ぎまわる様子も見せません。
代わりにゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音が聞こえます。
先生の説明によると、多分病気か何かで具合が悪いんだろう、この様子だと長くはないだろうから今夜はそっとしてあげて明日また見に来ようとの事でした。
案の定、翌朝になるとタヌキは同じ場所で冷たくなっていました。
先生の提案で解剖が始まりました。胸を開くと片方の肺が赤く腫れあがっており、素人が見ても肺炎で死んでしまったことは明らかでした。一通りの解剖が終わると、実習を兼ねてこのタヌキの骨格標本を作ることになりました。
まず最初に目の細かい網の中にタヌキを入れ、早く分解されるように堆肥を敷き詰めた穴に埋め、数か月後の実習の際に掘り出しました。網ごとしばらく小川に漬けて置くと、だんだん白い骨格が現れてきました。
この骨をパーツごとに分けて希望者が持ち帰り、自宅で組み立てるのです。
私は片方の肩甲骨から前足の先端までを引き受ることになりました。
さっそく骨格図鑑を片手に骨を並べ、少しずつボンドを使って組み立てて行きました。
順調に進んで行きましたが細かい部分が出て来るとまだまだ肉の破片がこびり付いており、乾燥しているためピンセットを使ってもうまく剥がせないのです。
お湯でふやかしたらどうかなと思い、台所で使えそうな道具を探しました。さすがに人間用の調理具は使いたくなかったので、「犬鍋」で茹でてみる事にしました。
犬鍋というのは我が家の愛犬用にスジ肉や鳥ガラスープを作るための専用鍋です。
お湯が沸騰すると、肉片が柔らかくなり、自然に剥がれてきました。
それでも細かい部分はなかなか剥がれず、何度も犬鍋で茹で直しては組み立て作業を続けました。
特に指の関節は本当に細かくて難航しましたが、やり甲斐も感じて夢中で組み立てていきました。
そして夕食。
お味噌汁の中に、妙に硬くて小さな肉片が入っていました。
???!!
「お母さん、これってまさか犬鍋?!」
「大丈夫よ、ちゃんとワンコの分は取ってあるから。ちょっとお出汁にスジ肉スープを使っただけ。」