「プー子ちゃんも聖書研究、やってみない?」

 

ニコニコしながら母が言う。

母の聖書研究の様子を横目で見ても、子供にはちんぷんかんぷんの難しい話ばかり。第一私はお勉強のようなものが大の苦手。

 

「え~?いいよ、やりたくない。」

と即答。

 

「見て。子供向けのこんな可愛い本があるの。」

と優しそうな姉妹がカバンから取り出したピンク色の「偉大な教え手」。

表紙にはいかにもアメリカンな七三分けの紳士と、50'sな少女が対話するイラスト。

 

「この目次の中からプー子ちゃんが一番面白そうだなと思うお話を選んでね。」

 

いつの間にか姉妹のペースに乗せられていることに気付かず、目次に目を通す私。

真っ先に目に飛び込んで来たのが「四日の間死んでいた人」。

 

うわっこれ怖いやつじゃん!死んでいた人がお墓から這い上がって来て夜な夜なドアをノックして。。。と、怖い話が苦手な私は戦慄。

でもこの優しそうな女の人と一緒なら怖くないかも!どうしよう、こわ面白そう!と、つい好奇心に負けてタイトルを指さす。

 

「あら、さすがプー子ちゃん!これはね、とても良いお話なのよ!」

 

横で見ていた母も満足そうにうなずく。

 

しかし、最初の三行で早くも押し付けがましい文体に急速に興味を失ってしまう。

つまらない つまらない つまらない つ・ま・ら・な・い!!

 

しかし、この日をきっかけに週に一度の聖書研究は義務と化し、私は自分の不満を最大限に表現するために本文を読み上げる時は感情を込めず、可能な限り一本調子でぶっきら棒に読むことに努め、さらに漢字をわざと変読みしては姉妹を笑わせ、研究を中断させました。

(例えば「その時楽園にいたのはエバ一人でした」という所を「エバ~じんでした」と読んでみたり。。。)

 

もちろん母にはこっぴどく叱られましたがつまらないものはつまらない。

他にどうしたら良いの?と逆に聞きたいくらいでした。