私の母はかなり個性が強烈な人です。
しっとりおしとやかなJW一世奥様とは程遠く、社交的でリーダーシップがあり、声も大きくてやたらと目立つタイプ。そんな母に憧れる姉妹たちは多く、野外奉仕が終わると皆でお惣菜を持ち寄って我が家に直行。毎日のように10数人が居間でぺちゃくちゃとお喋りに興じていたものです。
母は画家で、昔は新聞の連載小説にさし絵を提供していたこともありましたが、ある日仲の良かった画家の友人が「私ね、絵を描くのを止めたの。だってもっと素晴らしいものを見付けたから!」と言った事がきっかけとなり、エホバの証人との聖書研究が始まりました。
母は元々歴史や芸術や文化に関心が深く、その分野では非常に博識でした。
美術館などでギリシャ神話やホメロスの叙事詩などをテーマにした作品を前にすると、そのシーンを生き生きと解説してくれたものです。
教会や寺院を見学するのも大好きで関連資料にはいつも熱心に目を通しており、JW的な言い方をすると正に「真理を探している人」でした。そんな母が週に一回訪ねて来る姉妹と聖書研究を始めた訳ですが、ある日その姉妹が帰った後に突然押し入れのふすまを外し、その裏側に何かを熱心に書き始めました。
横からのぞくと「アダムの創造」から始まり聖書の中の重要な出来事を時系列にびっしりと書き込んでおり、後半は何やら年代計算のような物を夢中で書いています。そして最後に「1914年」と書いた後にすくっと立ち上がり、
「これは真理だ!」
と大声で叫んだのを今でも良く覚えています。