あの子の名は P （ ピィ ）
大ケガをした♀のフェレット
散歩中に体中をノラ猫に咬まれ
私の所に来た時は立つ事も出来ず
傷が痛むのか泣き止まず
胸の傷は腫瘍化
膿と血の混ざった浸出液が
白と茶の美しい体毛を
濡らし続けていた
これは私達が P と過ごした
半年間のお話
今から５年前
「 フェレットはいらんか？ 」 と
いきなり友人が聞いてきた
私のフェレット好きは皆知っている
彼の知り合いは
途方に暮れているらしい
それで手放す飼い主もどうかと思うけど
ショップで買えばもったいないと
色気を出したのが悪かった
それから半年間
P と我が家の
長い闘病生活が始まる
膿んでいる胸の腫瘍は
軍手を切り抜いた包帯で
とりあえず包んだが
一日たったら体液が滲み匂うため
毎日取り換えては洗濯し消毒
でも次の日はぐっしょり濡れている
他の傷は何とかなった
下手に触るより
食事をたくさん食べさせて
体力をつけさせる
後足はもう立てない
身体を前足で引きずりながら
部屋の中を這い回り
痛いはずなのに
この子は動く事を止めない
いたずらっぽく見上げては
目が合うと私の所まで
まっすぐに這って来る
私達よりずっと命に溢れ
懸命に生きている
いつのまにか彼女中心の生活
全てがスローで
時間はゆっくり流れ
人が大好きなあの子は
とても優しく
気高く美しかった
半年後、P は動かず
頭をもたげる事もなく
両手に抱きかかえると
まだ暖かく
僕はずっと待ってた
ね、遊ぼうよ
そんな目をまた
開けてくれる事を
（ P ）