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好きな本の中から2冊ご紹介。


◆かくまつとむ 2009 『野山の名人秘伝帳』 農山漁村文化協会

農村や山里に伝わる、さまざまな暮らしの知恵。
消えつつある野山の伝承文化を各地に取材し記録した好著です。

これは読んでいて本当に面白い。

たとえば、ウナギ漁に用いるミミズを採る場面。
使うのは1mほどの棒が一本だけ。それを土の中へ差し込んでゴソゴソ動かすと、ミミズはなぜか地上に飛び出してくる。
これは、棒から伝わる振動をモグラの襲来と勘違いするミミズの習性を利用したもの。

そして桶作り。
同じような木材を使用するのではなく、
「幅を広めのものと細めのもの、硬めの材と柔らかめの材を交互にバランスよく配置すると、しっかり噛みあって強い桶になる」
伝い継がれた豊かな知恵に感心させられます。

私は考古学の勉強をしているのですが、発掘で出土した遺物からでは分からないことってたくさんあります。

物の観察からでは全く分からないコツや技。
それらは土の中に埋まっていたりしません。

もちろん、こういった野山の知恵を知ったからといって、考古学研究に利用できるとは限りません。

それでも、
単にワラビやゼンマイはあく抜きして食したという理解のみよりも、
採取の方法・ゆで方・乾燥の仕方それぞれに多くのコツがあるんだと知っている方が、
より豊かに過去の暮らしをイメージできるのではないでしょうか。



◆五十嵐大介 2004・2005 『リトル・フォレスト』1・2 講談社

こちらは漫画です。

上記の考古学うんぬんという話とは全く関係ないのですが、これも読んでいてとても面白い本です。

東北地方のとある農村で暮らす女性が作る、さまざまなスローフードを描いています。
手間ひまかけて料理する事で、こんなにも豊かな食を生むことができるのかと驚かされます。

作者の五十嵐大介さんは、実際に農村生活をしていらっしゃる漫画家さん。
ラフだけど緻密で、いきいきとした表情やみずみずしい野菜を描く見事な筆致に、読んでいてとても幸せな気持ちになります。そして、登場する食べ物が、どれもおいしそう!

この漫画で描かれているような、食べることに多くの時間と手間をかけることは、ちょっと前まで普通の事だったはず。
手間ひまかけて作られたからこそ、食べたあとに自然に出てくる、「ごちそうさま」という感謝の言葉。

日ごろ忘れかけていた、食べ物へ感謝する気持ちを思い出させてくれる作品です。