先週仕留めたショアレッドの熟成が完了した。
ので、半身を使って贅沢に鯛めしを作る事にした。

本気の鯛めしです。

鯛めしと言うと普通は釜の蓋をパカッて開けるとド迫力の鯛が丸ごとドーン!と鎮座していらっしゃるものですが、僕の鯛めしは少し違います。

僕の鯛めしは、切り身なんです。


何故か?答えはシンプルで、その方が『おいしいから』。何故おいしいか、それはズバリ、『おいしいご飯の基本』にカギが隠されています。
おいしいご飯を炊く条件…それは加熱中、釜の中で起こる『対流』が大切なんです。

確かに鯛が丸ごと1尾、尾頭付きで入った鯛めしは豪快で、見るからに美味しそうです。鯛からたっぷり旨味がにじみ出て、それをごはんが吸い込んで…
だけど、この鯛が、おいしいご飯の邪魔をするんです。

それは、『対流』。釜の表面を覆うような鯛の魚体が、加熱時に起こる米と熱の対流を妨げるのです。釜の中でしっかり対流が起こらないと、炊きムラが出てしまいます。鯛めしはもちろん鯛も主役ですが、鯛「めし」なんだから、ご飯だって主役です。だから僕は鯛めしを作る時には出来る限りお米の邪魔をしないよう、切り身にして表面積を小さくしてあげます。そして丸ごと鯛を入れないかわりに鯛のアラで出汁を採り、その出汁でごはんを炊いてあげます。こうすると丸ごと鯛を入れた時と同じ、いや、それ以上に鯛の旨味たっぷりの鯛めしに仕上がるんです。


まずは鯛を三枚におろして頭、尾、中骨を取り出します。カマは外して他の料理に使っても、一緒に出汁にしてしまってもOKです。

そしてそのアラに塩を振り、軽く焼きます。打ち塩をして焼くことによって水分と一緒に生臭さが抜け、皮が焼けて香ばしい香りが出汁に加わります。

焼き上がったらネギの頭、表面を濡れ布巾で拭いた板昆布と一緒に鍋に入れ、水を張って火に掛けます。



沸騰する少し手前で昆布を外して、酒を加えてアクを取りながらしばらく煮立てます。これをザル&キッチンペーパーで濾して出汁の完成です。これを薄口醤油、塩、味醂などで味を調えます。お吸い物より少し味が強いかな、ぐらいが鯛めしには丁度良いかと思います。味を調えたら、しっかり冷ましておきます。


次はお米を研いで、よく水を切り、土鍋に入れます。ここに冷ました出汁を加えて米に出汁を含ませます。米三合(約450g)に対して出汁600ccくらいが目安です。

具はシンプルに、鯛の切り身と刻み生姜のみで。生姜は皮を剥いて5mm厚にスライス、これを5mm幅の細切りにして、土鍋に入れておきます。量は好みにもよりますが1片分…約30gもあれば良いかと。
お次は主役の鯛です。


真ん中の血合い骨の両サイドで包丁を渡し、雄節(背側)と雌節(腹側)に切り分け、皮目に包丁を袈裟に入れておきます。これに打ち塩をして30分ほど寝かせます。この打ち塩30分が大事です。余計な水分が塩の浸透圧で抜け、身の旨味が凝縮されます。塩焼きにする時も同じく打ち塩をして少し寝かせておくだけでいつもの塩焼きが1ランクおいしくなります。焼く時には皮に軽く味醂を刷毛で塗ってあげると皮に美しい焼き色が着き、味醂の甘味とコクが加わります。


そしていよいよ炊き上げます。


鍋に焼いた鯛を並べ、蓋をして中火に掛けます。
三合炊きだとだいたい10分ほどで沸騰すると思います。蓋の穴から湯気が立ち、ぐつぐつ音がし始めたら弱火にして約15分加熱します。

15分後、鍋の音に耳を澄ませましょう。
チリ…チリ…と音が聴こえたら、水分がなくなった合図です。もし心配なら一瞬蓋を開けて中を覗いて見ましょう。まだ水っぽかったらもう少し弱火をキープして。
もしOKっぽかったら、10秒だけ中火にして、火を消して10分蒸らします。一瞬中火にするのは蒸らす前に鍋全体を再び暖めることで、蒸らしの効率を良くする為です。

待ち時間を使って、薬味を用意します。

今回用意した薬味は茗荷、白胡麻、刻み柚子、万能ねぎ、そして三つ葉。これは好みにもよりますが、僕は無類の薬味フリークなので、薬味たっぷり入れちゃう派ですwww

蒸らしが終わったら薬味を散らして再び蓋をします。ごはんの余熱で薬味から香りが立ったら完成。感動の瞬間です( *´艸`)



今回は彩りと味のアクセントに、いくらを散らしてみました。いくらのコクがまた名脇役です( ´∀`)

思わずしゃもじを入れるのを躊躇ってしまいますが、勇気を出して混ぜほぐします。
しゃもじで鯛とごはんを切るようにほぐし、鍋肌のおこげもひっくり返してあげます。

そして、いざ実食。


ヒャー、こりゃたまらーん(*゚∀゚)=3
丁寧に丁寧に作った甲斐がありました。もう食べる殺戮兵器ですこれw

言い忘れましたがこの鯛めし、鯛を切り身にしたのはもう一つの理由があるのです。
圧倒的に食べやすい。これにつきます。

丸ごとの鯛を丁寧にほぐして混ぜたはずなのに、骨や残った鱗を気にしながらちまちま食べるより、ガっと混ぜて骨も気にせず一気に掻き込む…これもおいしい鯛めしの条件かなー、と。

あとは出汁を多目に作って、途中まで普通に食べた鯛めしを、残り半分、鯛の出汁茶漬けで…なんてのも最高です( *´艸`)


鯛以外にも同じやり方でカサゴやハタなど色んな魚で試してみて下さい!面倒なら炊飯器に突っ込んでスイッチポンも楽チンですが、たまには土鍋で炊くごはんもまた格別です。

それではまた、ちょいちょい釣魚料理もご紹介していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。


全ての釣魚に敬意と食欲を…!