初めて聞く麻里ちゃんの話に、夢中になって耳を傾けていた。
あの日、麻里ちゃんが防波堤で泣いていた理由をようやく理解することが出来た。
麻里ちゃんはエレナさんを思って泣いていたんだね。
「…陽菜と出会った。」
そう言い放つ麻里ちゃんの顔からは、確かな決意が感じられた。
「陽菜を初めて見たとき、思わず声を失った。似ていたんだ、すごく。神様が最後にエレナに会わせてくれたんだと、そう思った。」
麻里ちゃんはどこか懐かしそうに話す。
だけどきっとそれは、あの日の陽菜ではなく、エレナさんを想っているのだろうと思った。
「高校生の時みたいに、防波堤に座って、たわいもない話をずっとして、何も考えずに笑い合って、そんな時間が楽しくて仕方なかった。あの頃に戻った気がして…我を忘れた。」
そして麻里ちゃんの顔からは笑みが無くなった。
一転して真剣な顔つきに変わる麻里ちゃんに陽菜も身構えた。
「あのキスは…」
麻里ちゃんが観念したように一言を発した。
「間違いだった。」
頭では分かっていたつもりだった。
あの時、麻里ちゃんがキスしてくれた後、涙を流す姿を見てなんとなく感じていた。
ああ、これはきっと、陽菜の為に流している涙じゃないんだなって。
分かってたよ。
分かってたけど、でも陽菜は幸せだった。
麻里ちゃんと一緒に過ごしたあの時間が、とても幸せだったんだ。
「陽菜…」
気が付いたら泣いていた。
何も言葉が出てこなかった。
「…ざけんな…」
少しの沈黙のあとそれまで黙って聞いていた優子が、俯きながら小さく言った。
「…陽菜が…陽菜が今まで…どんな気持ちで…どんな思いであんたのこと待ってたか…それを間違いだった…?エレナに似てた…?…ふざけんじゃねーよ!!陽菜が!陽菜がどれだけあんたのこと想ってたか…どれだけ多くのものを失ってきたか…ふざけんな…ふざけんなよ!!」
泣きながら叫ぶ優子は、そしてまた麻里ちゃんに掴みかかる。
「やめて!」
陽菜は優子を制していた。
「やめて…」
泣きながら陽菜は俯くことしか出来なかった。
何を言ったらいいのか、何を言うべきなのか分からなかった。
「陽菜。本当にごめん。謝っても謝り切れないけれど…陽菜を傷付けてしまって、本当にごめん。」
陽菜は何も言わなかった。
その姿を見て、麻里ちゃんは肩をすぼめて小さくなり、ひとり部屋を出て行った。
保健室には陽菜と優子の2人だけになった。
「陽菜…平気?」
優子がベッドに近付いて来て、私は顔を上げた。
私も泣いていたけれど、優子も同じように泣いていて、なんだか2人とも小学生のようだった。
うん、と小さく頷くと、優子は私の涙を指で拭ってくれた。
優子の顔を真っ直ぐ見つめる。
「陽菜…」
優子は陽菜の手をしっかりと握った。
「好きだよ、陽菜。私は陽菜のことが好き。」
優子の手に力が入る。
「私は陽菜と一緒にいたい。陽菜のそばにずっといたい。私が陽菜を幸せにしたい。陽菜は?陽菜の気持ちは?」
「陽菜は…」
陽菜の気持ち…。
本当の気持ち…。
「…ごめん。」
陽菜は保健室を後にした。
「陽菜。本当にごめん。謝っても謝り切れないけれど…陽菜を傷付けてしまって、本当にごめん。」
陽菜は何も言わなかった。
その姿を見て、麻里ちゃんは肩をすぼめて小さくなり、ひとり部屋を出て行った。
保健室には陽菜と優子の2人だけになった。
「陽菜…平気?」
優子がベッドに近付いて来て、私は顔を上げた。
私も泣いていたけれど、優子も同じように泣いていて、なんだか2人とも小学生のようだった。
うん、と小さく頷くと、優子は私の涙を指で拭ってくれた。
優子の顔を真っ直ぐ見つめる。
「陽菜…」
優子は陽菜の手をしっかりと握った。
「好きだよ、陽菜。私は陽菜のことが好き。」
優子の手に力が入る。
「私は陽菜と一緒にいたい。陽菜のそばにずっといたい。私が陽菜を幸せにしたい。陽菜は?陽菜の気持ちは?」
「陽菜は…」
陽菜の気持ち…。
本当の気持ち…。
「…ごめん。」
陽菜は保健室を後にした。