ハロプロなどの楽曲の作詞を手掛ける、作詞家、児玉雨子先生の初小説です。
<あらすじ>
「誰にも奪われたくない」
会社員兼作曲家のレイカと、アイドルの真子の話。
主人公のレイカは、何とも言えない他人への壁を作りながら日々を過ごしている。
その中で、作曲提供をしたアイドルグループの一人、真子と少し仲良くなる。
家にいっておしゃべりをしたり、一緒に通信ゲームをしたり。淡々とつづく日常と、アイドルとの少しの非日常の先に・・・。
「凸撃」
主人公の男配信者は、過去にいじめられた経験を持つ。
そんな中、配信中に粗暴な配信者が「凸」してくる。彼は、学生でまだ若く、いろいろな配信に凸をしては暴言を吐いている。
大人の主人公と、暴言を吐く学生の、突撃生配信を通じた心の交流。
<感想>
私の好きな小説は、読後に前を向けたり、示唆に富んでいるような、ある種の自己啓発小説なのですが、この小説はそのような小説ではありません。
その点で、私にとっては合わなかったです。
しかし、非常にリアルに綴られているので、刺さる人には非常に刺さるかと思いました。
どういう点がリアルかというと、固有名詞がふんだんに使われている点です。
小説って、あえて「携帯電話を操作中に」や「音楽を聴く」「ゲームをする」程度に誰もがわかる言葉に抽象化することがほとんどです。想像がしやすいので。
そんな中、この小説は「スマホ」どころか「iPhoneSE2のセルフィーカメラを手鏡代わりにして」、「あつまれどうぶつの森でベルを集め」など、非常にリアルに記載があります。
まるで、日記を読んでいるかのようなリアルさの記述です。
大きな事件は起こらないし、読んだ後に心が洗われたり泣けたり行動力が伴うような小説ではなく、ひたすら狭い世界のリアルをのぞき見しているかのような描写です。
ある種、アイドルの暴露話のような裏側チックな話なのですが、作者の児玉雨子氏はそういうつもりで書いているわけではない、と述べているので、あくまでもフィクションです。
凸撃と誰にも奪われたくないが、地味に登場人物でつながっているのに気が付いたとき、
人がほかで何やってるかなんて、わからないもんだなぁ。と思いました。