「はぁ~」

見事に流されてしまった。

一度きりだと決めていたのに、このままだと間違いなく二度目がやってくる。

しかも夏休み中、ギイの誕生日に。

「僕の馬鹿、間抜け」

自分で自分を罵ってみたところで後悔は消えはしない、言った言葉は取り消せない。

「どうしよう」

どうもこうも、腹を括ってしまうしか道はないのに僕はどうにかならないのかと思案する。

「はぁ~~」

無理だ、どうにもならない。

せめて誰にも見られないようにしなければ。

そうなるとなると街中は避けるべきだろうから例えばうちの別荘で会うとか?

いや、あそこに日帰りと言うのはかなり厳しいから泊まりで行かないといけなくなるし、誕生日を丸一日一緒に過ごすなら日程は二泊三日にならざるを得ない。

二泊三日、丸二日二人きり。

好きな人の誕生日を二人きりで祝うなんて、かなり恋人同士らしい。

頬が緩みかけて僕は慌てて口元に手を当てる。

自室に一人なんだからこんな顔、誰も見ていないのに。

「やばいよなぁ」

どんどんと引き返せなくなっている気がする。

休みを除けばあと半年程しか一緒にはいられないのに、その時にはこの関係も終わるのに。

散々その気にさせて・・・僕は卑怯だ。

その時が来ればギイを傷付けてしまうのに、それを分かってはいてもあの優しい手や眼差しそれにキスを手放せないでいる。

「はぁ~~~~」

溜め息は吐く度に重さを増して心の中に積もっていくばかりで苦しくなる。

「これっきり」

三度目は無い。

例えどんなに望まれても僕が内心でどれほど欲してしまっても、本当にこれ以上は駄目だ。