貧乏人のチキンラン
近所のパン屋さんは閉店一時間前から半額セールを実施する。
昼間は、お金を持ってそうな主婦や、学生さんなど客層がいいのだけど
半額セールの直前から、あまり裕福ではない方が多くを占めるようになる。
スーツのリーマンや、仕事帰りのサラリーマンや、、、、
さて、その半額セールが始まる直前の時間帯、
まずはじめに
『半額セールが始まってからレジに並ぶのだけど
自分が食べたいパンはちゃんと個数分確保したい』
という庶民の我侭が店内を闊歩します。
みんな血走った目で、お目当てのパンを自分のトレーに入れます。
僕のフェイバリットは、フルーツの入ったサンドイッチです。
そして、その次に
『自分の食べたいパンを確保した後に、
セールが始まるまで、なんとか間を持たせなければならない』
という気まずい雰囲気に包まれます。
本当は買うつもりなんてないのに、
ほかのパンを手にとって見てみるふりをしてみたり、
パンを載せたトレーを手に持ってるのに
携帯メールが届いたふりをしてみたり、、、、
貧乏人たちの涙ぐましい努力です。
そういうなか、庶民の苦労をしらぬブルジョワ階級の人たちは
あと少しでセールなのに、
そのままレジに並んで定価でパンを買っていきます。
ああ、じっと手を見る。。。。
そうやっていつものようにパン屋に行って
半額セールになる時間を待ってたら思わぬ出来事が
「あなた邪魔ですから早くレジに行ってください」
そういう視線を、よく見る顔の同じ貧乏人階級の人から向けられたのです。
「いえいえ、私はもう少し考えてます。あなたこそどうですか?」
と私もテレパシーで返します。
んーー、気まずい。
「普段500円分のパンを買ってるから
今レジに並ぶと1000円かあ、ありえないなぁ」
しかし「たまにはそれも一興」という気もします。
もしかすると、僕のレジの順番の時までに
半額セールが始まっているかもしれません。
思い切ってレジに並んでみました。
あくまで私の心の中の妄想ですが
「あいつ、半額セール直前になにとち狂ってるんだ?」
と、同じ貧乏人階級の人達が、レジ待ちしてる僕を見てる気がします。
前の前の人の清算が終わる。
前の人の会計が終わる。
前の人のトレーは食されるパンも高級でした。
そして、次は僕の番。
店員のお姉さんは、サンドイッチを定価で入力する。
「あぁっ!」
定価がその金額だということは知っていたが
その金額で買うのははじめてである。
ちょっときつい。
と、そのとき、お姉さんは壁時計に目をやる。
そして次の一言。
「あっ、半額引きにしておきますね」
勝った!!チキンランに勝った。
半額引きの価格で最初にレジを済ませた客となる。
貧乏人の中で、一番初めに僕が店を出る。
でも、もうこれはしたくないなぁ。