根拠発掘屋
「霧が晴れた。」
-DEEP JAPANへ⑥/⑥-
18日後。
私は、
DEEP JAPAN ULTRA 100の、
スタートラインに立ちました。
骨折した足は、
まだ完治していません。
それでも、
ここまで来ました。
スタッフの六花さんと、
写真を撮り、
SNSに、
短い言葉を残しました。
「いよいよスタートです。
自分と向き合い、
小ささを思い知る。」
その時は、
大会のコンセプトに合わせて、
何となく書いた言葉でした。
⸻
レースは、
順調に進みました。
100kmを越え、
粟ヶ岳へ向かっていました。
すると、
下山してきたスタッフから、
止められました。
「引き返してください。」
雷雨による、
コース変更でした。
⸻
状況が、
飲み込めませんでした。
無線で確認を取り、
来た道を、
車道まで引き返しました。
そこから、
運営の車に乗り、
約20km先のエイドまで移動。
そこから、
レースを再開しました。
⸻
私は、
納得できませんでした。
まだ、
制限時間は、
34時間以上あります。
雷雨も、
そのうち止むのではないか。
「本当に、
そこまで危険なのか。」
運営の判断に、
疑問を持ちました。
指示には従いました。
でも、
心は、
晴れませんでした。
⸻
CP11を過ぎ、
最後の山、
守門岳へ向かいました。
4回目となる、
標高差1000mを超える登り。
苦しみながら歩いても、
頭の中には、
コース変更のことが、
残っていました。
⸻
山頂を越え、
大岳への縦走路へ入りました。
それまで、
真っ白だった霧が、
少しずつ晴れました。
木々の間から、
魚沼の山々が、
姿を現しました。
私は、
立ち止まりました。
ただ、
見ていました。
あまりにも、
きれいな景色でした。
⸻
その瞬間。
さっきまで、
考えていたことが、
どうでもよくなりました。
私は、
何を求めて、
ここまで来たのでしょう。
順位。
距離。
100マイル。
もちろん、
100マイルを、
完走したくて、
ここまで来ました。
でも、
その時だけは、
目の前の景色を、
見ていました。
初めて見る山々。
そこに、
自分が立っている。
それだけで、
十分でした。
⸻
無事に、
ゴールへ戻りました。
後に出たリザルトでは、
私の距離は、
153km。
正規コースは、
171km。
途中、
運営の車で、
移動した区間もあります。
どのように計算されて、
153kmになったのか。
今も、
分かりません。
100マイルには、
届きませんでした。
達成感より、
無事に戻れた安心感の方が、
大きかったです。
⸻
根拠発掘。
スタート前、
私は、
「自分の小ささを思い知る。」
と書きました。
100マイルという距離の前で、
自分の力の小ささを、
知るのだと思っていました。
でも、
実際は、
少し違いました。
⸻
私は、
自分の力で、
ここまで来たつもりでした。
でも、
出場を認めてくれた人がいた。
治療してくれた人がいた。
山の中で、
支えてくれた人がいた。
そして、
人にはどうにもできない、
自然がありました。
⸻
雷雨で、
コースは変わりました。
私は、
納得できずにいました。
でも、
守門岳で、
霧が晴れました。
その時、
ようやく、
目の前の景色を見ました。
⸻
100マイルには、
届きませんでした。
でも、
一人では、
ここまで来られなかった。
スタート前に書いた、
「自分の小ささ。」
その意味を、
少し違う場所で、
拾ったのかもしれません。
続く。
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