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「私と悪魔の100の問答」 上遠野浩平 著

出版社:講談社 ISBN:9784062165488

私と悪魔の100の問答 Questions & Answers of Me & Devil i.../上遠野 浩平
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あらすじ:『「いや吾輩は君には全然興味がないけど、世の中の正義にはもっと興味がないから」どん底だった私に、あいつはそう言った。親の事業が失敗して、マスコミに叩かれ、世界のすべてが敵にまわったときに。助けてもらう代わりに、私はそいつと契約することになった。それは100の質問に答えろっていう意味の分からないもので―。追い詰められた少女と、尻尾の掴めない男が出逢うときに生まれる、奇妙で不思議な対話の先に待つものは……?』


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上遠野浩平さんによる講談社書き下ろし100冊という企画で出版されたもの。2010年頃の作品。書き下ろしである為、シリーズものではありません。あくまで「シリーズ物」ではね。つまり、ご多分にもれずご安心ください「クロスオーバー」は「あり」ます。だって開いて最初に出てくる人の名前は「霧間誠一」ですもん。もう、隠す気なしですよ、この潔さがいい!書き下ろし100冊だろうが、講談社だろうが関係ない!さすかど(流石上遠野さん)。


そして、面喰うのは目次です。全部でプロローグとエピローグを含めると8章構成。First Session~Sixth Sessionまでで「100」の問答がドバーーーっと羅列されています。

「Q01 青空と聞いて連想することは」とか「Q39 素直さは美徳か悪徳か」「Q54 国家とはなにか」「Q78 他人の期待に応える必要はあるか」「Q87 人形はなぜ怖いのか」などなど、普段はなんとなしに思っているあれこれがずらっと書いてある。


では、本編でそれが一個一個質問されて解答していくのかというとそうではなく、あくまでも「悪魔」こと「ハズレ君」と主人公「私」こと葛葉紅葉(くずはもみじ、通称くずっち)ちゃんのやり取りの中でそれとなく話題に上がって「こういうことじゃないの?」「本当に?本当にそうなの?じゃあ…」という事で質問自体が独立ではなく、関連してこれはどうなの、あれはどうなの?というシームレスな感じになっていて、まさに日ごろある我々のたわいもない会話の中で生まれる疑問とそれにたいする明確なんだか明確でないんだかよく分からない事を応えて、またハズレ君がそれ茶化してってな具合で問答が繰り広げられていきます。


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上遠野節全開の会話劇は、ファンとしてはとても面白いですが、この企画が好きではじめて上遠野浩平の本を手に取った人はどういう印象を持つんだろう。気にはなりますよね、こちらとしては。

ファン目線では「う~ん、この上遠野節良いわぁ。」って感じで超ワクワクしながら読んでいたんですけどね。


特に単行本は装丁が好きかな。ノベルス版も悪くはないけど、単行本の不気味な雰囲気が良い。今や西尾維新の「物語シリーズ」のEDには欠かせないウエダハジメさんがイラストを描いているんですが、良い味出している。特にハズレ君に関しては「悪魔っぽい」雰囲気が醸し出されていて良いっすよね。


にしてもウエダハジメさんはフリクリで知り、その後上遠野さんの作品(戦車嫁が先なんだけど)でもイラスト描いていること知って、そしたら物語シリーズでドーンっとなって。うーん、印象としては「物語」シリーズの方が絶対印象あるよな。


上遠野さんは本当に色々なイラストレーターの方がイラストを書いてくださっているので表紙とか見るたびにワクワクしますわな。


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ハズレ君ことシャーマン・シンプルハートは上遠野世界では有名な「某組織」(統和なんちゃら)の一員で組織を出し抜きたかったと言う節が見受けられ、結果紅葉ちゃんはそれにいいように振り回された感じが否めない。事件の中心にいたとしては取り調べに「舞阪」を名乗る謎の男も出てくるし。


いやぁ、出てくるとは思わなかった…。「ff」氏。しっかり仕事してんだね。シリーズだと真面目に仕事している印象ないからさ。意外と真面目に仕事取り組んでて泣きそうになったよ。(どういう扱いなんだ!)


今後他の物語に関わってくるとしたら「久嵐舞惟(くらん まい)」ちゃんかな。この子も後の「戦車のような彼女たち」で再登場果たしたりしているし。彼女も「統和なんちゃら」に属しているんだけどね。(今回はあくまで講談社の本だからね!)


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とにかく、ハズレ君と紅葉ちゃんの会話が小気味良かった。シリーズに大きな影響を与えるわけではないけれども、どう世界軸で「死神」や「炎の魔女」が関わらない物語だけど彼らがいない所でも大なり小なり事件は起きているっていうのが分かっただけでも上々。


紅葉ちゃんもまた何処かのシリーズでしれっと出てきたりするんだろうか。基本的に上遠野作品は出たキャラはとりあえず全員覚えといて損はないからなぁ…。


炎の魔女の物語がね、前回の感想見ても分かるようにごたごたしているので、ちょっとした息抜きの作品にはなったかなぁ。




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次回は、

講談社タイガより

『君と時計と嘘の塔 第一幕』

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