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「小林賢太郎戯曲集 home FLAT news」

小林賢太郎 著 出版社:幻冬舎

ISBN:9784344409385 値段:495円(税別)

小林賢太郎戯曲集―home FLAT news (幻冬舎文庫)/幻冬舎
¥520
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あらすじ:「朗読の試合がゲームとして成立する世界。自分の本の面白さを競うあまり、嘘の内容を読み始めてしまう(「読書対決」)。医者である父親から透明人間の薬を投与され、少年は実験材料にされていたが……(「透明人間」)。一度観たら必ずハマる、鋭敏な言葉、独特なリズム、予測不能な世界。」


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「ラーメンズ」と聞くと「あ~あの人たちね」となる人がきっと大勢いると思います。僕は数年前に知ってから、というか「TEXT」をTVで見てからハマった人間なのです。多分、その時に久々に「うわぁ~、日本語ってここまで遊びのある言語なんだな~」と感心し、しかもそれが面白いものだから腹を抱えて笑ってしまったのが懐かしいです。それ以来、DVDをレンタルして見ちゃうくらい好きな方々です。そのラーメンズの「コバケン」(僕はコバさん派です…)の愛称で知られている小林賢太郎さんが自分たちのコントを戯曲集という形で発表したのが本作です。現在4冊が刊行済み。「TOWER」は収録されていないので、また新たに公演が増えていけば5冊目も刊行されるのでしょうか。


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初期作品でありながら、完成度は高く、この頃からラーメンズ独特の世界観がみられます。ただ笑わせるのではなく、そこに非日常をぶち込んできたり、日常の「ありそう」な雰囲気を作品に反映させたり、もしくは怖いけれどもちょっとクスっとできる話があったりとまぁ幅が広いですよね。もしくは勢いで持っていく作品もありますし。いろんな引き出しがあるのでこちらも読んでいて飽きないというのが憎いですね。


「笑い」を追求していく。コントを追求していく。この姿勢が本当に素晴らしいと思いますし、小林賢太郎という人物の「言葉」に対する感覚というのはなかなか真似でき名様な気がします。しかし、小林賢太郎だけではこの世界というのは表現できないわけで、相方の片桐仁という人間がいるからこそ成立すると言いますか。片桐仁がいないとこの世界はあり得ないと言いますか。


では、ここからは3つの公演の中でも気になった戯曲をピックアップしようかと。どれも好きでなかなか決められないのですけど…。


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☆「映画好きのふたり」(homeより)

映画好きの二人が繰り広げてしまう「映画好き」ならわかるあるあるネタ。耳かきが欲しいと言っても反応しないコバさんに仁さんがしょうゆ入れを人質ならぬ物質(ものじち)にして耳かきとの交換を要求する寸劇をし始めます。「物質(ものじち)」なんていう発想をが好きですね。しかも寸劇の展開がまぁ良くある王道パターンなのですが、「真似したくなる」シーンだったりするので、「ふむふむ」と共感したり。最後には綺麗なオチが待っていますしね。一見弱いオチに見えますが、「映画好き」な二人だからこそ強烈なオチに映るんです。


☆「百万円」(homeより)

二人の悪人と二人の善人が登場する。彼らの目の前には百万円が。さて、善人は善の行動を、悪人は悪の行動を取ってしまうのか。一見よさそうな行動に見えるけれども、そちらが良くなくて、悪い行動に見えても実はそちらが良い行動だったりする。笑えるけれども同時に考えさせられるネタでした。


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☆「ドーデスという男」(FLATより)

ドーデスしか言わない仁さん…しかし、逆に「ドーデス」と言われると拗ねて「ドーデス」以外の言葉を話し始める。「なんだよ、話せんのかよ!」とか思ってしまいました。しかし「ドーデス?」だけで笑わせる単純な物語かというと、意外にダークな話でこういう毒のある感じの話は大好きです。


☆「プーチンとマーチン」(FLATより)

可愛い人形が奏でる毒舌の応酬。男と女の違いを述べよという問いに「殴っていいのが男、なぶっていいのが女」とシレっと言ってしまう可愛い人形たちのセリフが酷いけど笑えてしまう。途中挟まれるロシアの童謡?のような節の歌がクセになります。


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☆「読書対決news篇」(newsより)

この「読書対決」は「home」にも収録されているのですが、こちらをチョイスしました。あらすじにあるのは「home」版です。自分が選んだ本の内容を語り、勝ったと思われる方がカッコよく本を閉じれるというゲーム。勿論、お互い負けたくはないから段々と嘘が盛り込まれていくわけですが…。news篇は初っ端から嘘の内容が連発。もうどうなるのよ、コレ~と思ったら、これまた綺麗なオチが入って終わります。思わずニヤリとしてしまうオチでしたね。


☆「雪男」(newsより)

newsが結構好きな作品集まっていて結構困ったんですけど、こちらにしました。NOとは言えない人間(コバさん)が「雪男に出会いたい」と思っている人間(仁さん)に雪男と勘違いされてしまい…というストーリー。YESマンも実は辛いんだという哀愁が何とも言えない。

数年後、ようやく「NO」を言えるようになったYESマン。「やったー」と思い叫んだら…。なかなか人間、変われるようで変われないという皮肉が効いていて良かったです。


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活字で読んでも面白い、ラーメンズの世界。是非一度動画でも何でもいいので見てください。


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次回は、百年文庫(013)。

テーマは「響」。

なかなか良い作品が勢ぞろい。

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それでは~。