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「語源で楽しむ英単語 その意外な関係を探る」

遠藤幸子 著 出版社:NHK出版
ISBN:9784140882153 値段:700円(税別)



語源で楽しむ英単語―その意外な関係を探る (生活人新書)/日本放送出版協会
¥735
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あらすじ:「今や世界語になっている英語。その長い歴史の中、数奇な運命をたどって生き残ってきた英単語は数多くある。このような語は、実は同じ起源を持ちながら、今では似ても似つかない姿かたちに分かれてしまったものが多い。本書では、「手」「輝く」「上に」などの根源的な意味から生まれた英単語を紹介し、その驚きの結びつきと背景を俯瞰する。」


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たまには新書で読みやすいものをと思って手に取りました。普段、何気なく目にしている英単語の数々。意味不明なアルファベットがずらずら並んだだけでこんな発音に何でなるんだよ~と英語嫌いな人ならば思ってしまうし、勿論好きな人でも「な~んでこんな形になってしまったの?」と思う人も多いはず。この本はその起源(ルーツ)からスタートし、英語の成り立ちをきちんと歴史から簡単にではありますが説明しているのは丁寧だと感じました。「印欧祖語」なんていう単語は普通ならば目にしないものですが、この「印欧祖語」から英語の歴史は始まったと言っても過言ではないのです。


また英語における歴史上の転換期としては「ケルト人からブリテン島を奪った」ですとか「ヴァイキング」の存在であるとか「Norman Conquest」というモノがあります。これもこの本にて簡潔に述べられているので確認して見ると良いでしょう。


簡単に触れると、まずは「ケルト」。U2とかエンヤなど音楽方面でその名前を聞く事が多いと思いますが、「英国」内には彼らの言語が今でも残っているというのも興味深いですね。今では少数民族の「ケルト人」がブリテン島の主であったという証明になります。そして「London」、「Dover」、「Thames」(ロンドン、ドーヴァー、テムズ)という地名に彼らの言語の名残なのだそうです。


「ヴァイキング」と聞くと、海賊というイメージがありますがおおよそそれであっているとも言えるし、ちょっと違うとも言えます。ただ、彼らが侵攻してきた事により、彼らの言葉が英語に流入してきたのです。


さらにさらに、「Norman Conquest」。「ノルマン人の侵略」とでも言えば良いのか、彼らはフランス系なのですが、この侵略により、一時期英語が表舞台から姿を消してしまうという事件に発展します。


今や世界公用語とまで言われている「英語」。それが一時期全く使われなくなってしまうまでになったなんて誰が想像できるでしょうか。そこからまた紆余曲折があり英語復権への道が生まれていくわけです。


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とまぁ、英語の歴史だけでも相当のロマンを感じてしまう私ですけれども、このほかにも英語と近しい言語は何かなども描かれていたかな。まぁ、ブリテン島に移り住んだ人種がどこからやってきたかを考えると、英語の親戚関係の構図は面白いと思いますね。


さてさて、本について触れていきましょうか。この本はとにかく「語源」を中心にまとめています。なので聞いた事がないという単語はほとんど出てきません。中学生レベルの単語が分かればあっさり読める。いや、むしろ英語への興味が増してくるんじゃないかなと思うんですね。個人的に興味がわいたのが「言語の簡略化」という考えです。「言語を簡略」にする理由って何だと思います?これはきっとどこの国も万国共通なんだと思いました。その理由は…


「煩わしい」から。


「えー、それって言葉の乱れじゃん!」と思うかもしれませんが、「言語は生き物」って言葉もあるじゃないですか。そう、言語っていうのは生きているんです。だって人間が使っているんですから。人間が変われば、人間の社会が変われば、言語もまた柔軟にその時代、社会、人間に合わせていくのではないでしょうか。「言葉の乱れ」というのは同時に「言葉の簡略化」とも取れなくもないのではないでしょうか。


例えば、five。そう、数字の「5」を意味する単語ですがこれは元は「fimf」という発音だったのだそう。「ファイブ」ではなく「フィン(ム)フ」というのでしょうか。しかし、「mf」の部分。

これを発音しようとすると、いったん閉じた唇をあけて、そこへ前歯を押し当ててというような動作をしなければならなかったわけです。これがもう「煩わしい~~~~!!!」ということだそうで、「m」を発音しなくなり、綴りからもmが消えたわけです。んでそのかわりに「ve」を入れたのでしょうかね。


そして、この揺らぎはwomanにもあり、実はこの元は「wife+man」=「wifmann」だったそうです。つまり「妻+人」=「妻人」=「女性」と言えば良いのか。ところが見てください、またしてもm、fが連続してます。そこで今度は「f」をとっぱらって、「m」だけを発音させたみたいなんですね、どうも。もともと「wife+man」だったわけですから、「m」を取ると「man」の単語意味合いが消えてしまうから「f」を取っ払ったんでしょうね。


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とまぁ、英語っていうのは意外ときちんとした枠組があるように見えるのですが、日本語同様にその土地や、時代、社会、人によって流動的に変わっていく言語であったと言えるわけです。英語や日本語に関わらず言語自体が流動的で自由なのだというのが分かっていただけたのではないかなと思います。


ここにあげたのはほんの一例ですし、全然語源についてなんて語りませんでしたが、できれば新書ですから手に取って頂いて、実際読んでもらえればなと思いました。簡単に読めるのが新書の良い所ですし。


それでは、今回はここまで。