第1回  京福電鉄北野線 【帷子ノ辻~北野白梅町】 | 極私的 関西ローカル電車の小さな旅

極私的 関西ローカル電車の小さな旅

某電力会社の社内誌に連載中の「極私的 関西ローカル電車の小さな旅」のブログ版。
月1連載ですが、本編以外のネタもたまに書こうと思います。


この連載が決まった時、目的を持たない旅をしようと考えた。


行き当たりばったりの取材をすること。ルールはそれだけである。



極私的 関西ローカル電車の小さな旅-鉄道


第一回の旅の起点は帷子ノ辻。


帷子は「かたびら」と読み、布製の単の着物のことを意味するらしい。


そんな豆知識はともかく、僕は京福電車に乗り込んだ。


一両編成のワンマンカーは古めかしい体躯を


コトンコトンと揺らしながら、ゆっくりと進む。


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-乗客


老夫婦、中年のおじさん、いかにも観光客な3人組、下校途中の女子高生など、


平日の昼間らしく乗客はバラエティに富んでいる。



まず、御室仁和寺駅で降りてみる。


駅からほんの100メートルも歩いたら、


世界遺産「仁和寺」がでんと鎮座していた。


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-仁和寺


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-紅葉


人影はまばらで、時節柄紅葉が眩しい。


遠足の小学生一塊がお弁当に舌鼓をうっている。


悠々と佇む五重塔を異国の旅行者たちが「ほほう」といった感じで見上げていた。



極私的 関西ローカル電車の小さな旅-五十塔


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-おふだ


目的別に選べる一願300円の護摩木が、なんだかコンビニエンスな感じで笑える。


不景気の折なので、迷わず事業発展を選んだ。



仁和寺を後にして、隣りの妙心寺駅まで歩くことにする。


さすがローカル電車だけに、駅間はかなり短い。


線路が一条通と交差する妙心寺駅周辺は、あまり特徴のない住宅街。


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-カフェ


妙心寺までの道中、「わんだあ」という可愛いらしいCAFEが。


店前の自転車もそうだが、モノにこだわる店主の顔が浮かぶ。


トボトボと歩いていくと、モモ肉100g弐百七拾円などと書かれた値札がぶら下がる、


骨董品のような鶏肉屋を発見。


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-鳥屋


入店すると、髪の毛をオレンジ色に染めた


切符の良さそうなお婆ちゃんがちょこんと座っていた。


「ウチはな、丹波の鶏しか出しませんねん。


 これ食べたら、スーパーのなんか食べられしませんわ」


と豪快に笑うお婆ちゃん。


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-おばあ


聞くと、創業数十年。太秦撮影所が近いので、


銀幕の大スターや歌舞伎役者が昔からの常連だそう。


「店の前に軍艦横付けにしてな、買いに来はるねん」


誇らしげにそう語るお婆ちゃんに「軍艦って?」と尋ねると、


「アメリカの車のことや」とまたもや豪快に笑うのだった。



妙心寺から再び京福電車に乗り込む。


流れる風景は、住宅街から少しだけ京都らしい「街」の風情に変わっていく。


終点、北野紅梅町駅で降りる。


北野天満宮の玄関口だが、


寺社仏閣ばかりを巡っても面白くないので、駅周辺をぶらぶら。


いかにも女の子が喜びそうな、和モダンな豆腐店を発見。


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-十富


豆腐ではなく、十富。近くにはこの店がプロデュースしているTOFU-CAFEも。


デートには最適だろうが、一人なので素通りする。



東西に伸びる商店街をゆらゆらと歩く。


この商店街には妖怪のキャラがあちこちに登場する。


よくある町おこし、商店街おこし、みたいなもんだろうが、


そういうのは安易な感じがしてあまり好きではない。


(僕の勘違いなら、申し訳ないが・・・)


だから写真も撮っていない。


商店街の方々もいろいろご苦労はあるだろうが、


ただの通りすがりの旅人から言わせてもらえれば、


やはり「素の町」が見たい。



妖怪キャラはともかく、面白そうな店もチラホラあった、


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-猿基地


「そうだ 猿基地 行こう」


なんとも気になる居酒屋 猿基地。


日本人は所詮、イエローモンキー。


古い木造の京町家があるので覗いてみると、タマヒメ酢の醸造所だった。


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-たまひめ酢


僕がこれまで生きてきて、ミツカン以外の酢を買ったのは


此処の「玉姫酢」がはじめてである。


数年前、その綺麗なボトルを見て衝動買いしたのだが、


まさかこんなところで再会するなんて。


こんな偶然があるから行き当たりばったりの旅は面白い。



帰りに京都らしいラーメンが食べたくなったので、大徹という店に飛び込む。


極私的 関西ローカル電車の小さな旅-大徹ラーメン


支那竹をアテに瓶ビールをチビチビ。


ラーメンは鶏ガラスープに豚の背脂、濃厚醤油味。


麺もチャーシューも言うことなし。


ぶらり旅の〆は、やっぱり地元のラーメンに限るのだ。





                                (12.3 京都にて)