昨日も宮城県で震度5の地震があった。

東日本大震災から10年。

あのときのことを思い出した方も多かったのではないか。

熊本も大地震から5年たつが、まだときおり地鳴りを伴う地震がくる。

大地の奥底のことはわからない。

地球の殻の上べを這い回る僕らは、生き延びる方策を状況に合わせて採っていくしかない。

 

さて、2018年10月19日の福島の夜の最後の話を書くよ。

午後10時ころ。

会津郷土料理「楽」では、あえて満腹にならないようにした。

福島といえば魚介ダシ醤油味のラーメンだ。

喜多方までは行けなかったので、このあたりで食べられないかと。

 

 

ぶらぶら歩いて駅方面に戻るが、何かしらの嗅覚を元に横道に入り込むのは持って生まれた性(さが)。

スナックの行灯がちらほらする中央通り。

 

いい感じのラーメン屋さんがあった。

東京の居酒屋のようなコの字カウンター。

調理場は奥にあるようで見えないが、ごま塩頭のおじさんが一人で切り回しているようだった。

 

 

入ろうかと逡巡していたら「うちにも寄ってねー、そこだから」とおばちゃんから声かけられた。

「そのビルの2階のスナックだから、絶対きてよね」

福島のおばちゃんは強引である。

 

それはそれとして、まずはラーメンだ。

中に入ると先客が一人。

壁のお品書きからネギラーメンをオーダー。

 

 

手書きの酒肴のメニューがしぶい。

持ち帰りのチャーシューがある。絶対旨いヤツだ。

残念なことに明日は終日移動。

常温だと持たないと思って諦めた。

 

そこにラーメン到来。

目の前にあったゆで卵の殻をむき、ラーメンに投入。

黄緑に縁取られたネギ、白髪ネギ、黒胡椒、透明感ある褐色のスープ。

そんな水面から見えるシナチクとチャーシュー。

いいビジュアルだ。

 

 

思った通り酔腹にやさしいスープ。

多加水系でもっちり感ある太めのちゅるちゅる麺。

チャーシューはやたらと主張しないがスープに馴染み麺と食べると豚肉のニュアンスを伝えてくる。

驚いたのはシナチク。

これはうまい。

手作りだろうか。

しっかりとした太さ、味付け。

やはり旨いなあ、福島。

 

そうして次に向かったのは、

丸信ラーメンのトイ面の建物の2階にある「スナック香り」。

 

入って行ったら、期待はしてなかった客がやってきた!という感じでおばちゃんがやたら歓待してくれた。

ほかに客が全くいなかったこともあったろう。

千円札が並んでやってきた!という感じだったかも。

 

お名前はカオリさんなんですか?

そうたずねると「いやー、わたし韓国人だから違うんですよー」

すこしイントネーションが違うと思ったら、そして押しがやたら強いなと思ったら、そういうことだったですか。

 

 

韓国の話などをしながら更けていく福島の夜。

地震の後の復興需要はすでに一段落。

この街の夜の経済も厳しかろう。

でもこのおばちゃんは持ち前の押し出しでバンバン行きそうな気がする。

目の前で飲んでいる僕はその元気を分けてもらっている。

 

いいなあ、福島の夜。

ラーメン屋のおじさん、スナックのおばちゃん、コロナ禍は大丈夫だろうか。

今日も書いていて、また行きたくなってきた。

 

 

 

撮影地:福島県福島市置賜町5丁目あたり 「丸信」「スナック香り」

撮影機材:iPhone 7 back camera 3.99mm f/1.8