今を去ること25年前。

僕は東京から熊本・九州にUターン就職した。

 

東京にいた時は1時間半かけて通勤していた。

往復3時間。

駅まで歩き、私鉄に乗り、ターミナル駅で乗り換えて地下鉄、さらに地下鉄を乗り換えて会社近くの駅に着く。そこから歩く。

帰りは逆だ。

 

なんと面倒くさいことをしていたのか。

熊本にUターンした後の通勤は、バス停まで歩き、バスに乗って会社近くのバス停へ、そして会社まで歩く。

 

シンプルである。

 

このシンプルさが嬉しかった。

 

そしていま。

リモートワークが常となり、必要なときだけ会社に出て行く。

 

そのリモートワークが始まった時に、唖然とした。

この熊本でさえ通退勤が大変な負担だったのだ。

バスに乗るだけというシンプルな通勤なのだが片道40分かかる。

前は35分で着いたが運転手不足などで減便となり、高齢者乗降客の増大があり、運行状況不確定要素が増えて往復約1時間半。

リモートワーク導入によりこの時間が僕の生活時間として取り戻されたのである。

生まれて気づく子の有り難さ、ではなく時間の有り難さである。

 

リモートワークが始まったのは3月だった。

筍が食べたくなった。

でも水煮の筍って水っぽくて味が薄いんだよね。

 

幸い家にずっといるので鍋を火にかけておける。

八百屋さんへ行って大きな朝採れ筍買ってきた。

冷蔵庫の中に糠と唐辛子があった。

 

 

買ってきた筍が大きすぎてウチの寸胴鍋に入りきれなかった。

仕方ない。最も大きい鍋は土鍋だった。

 

 

炊き上がり、皮を剥いだら中からタイの仏塔が出てきた。

あまりにも神々しいので庭をバックに記念写真を撮って拝んだ。

 

 

まず食べたかったのは山椒の葉っぱを散らした「ひこずり」だ。

熊本の春の味覚、甘味噌和えである。

使う味噌は麦味噌でないといけない。

 

 

竹皮の根元の柔らかいところはお味噌汁にした。

 

 

タイカレーのグリーンカレーにもたっぷり入れた。

 

 

さらにイエローカレーも作った。

 

 

お吸い物はさっぱりしていて美味しかった。

山椒の葉に加えて球磨川河口で採れる線海苔も散らした。

 

 

最初はリモートワークというよりはシェルタリングだった。

自宅で情報収集に努めるが、似たり寄ったりのものしかない。

目の前にあった仕事は中止になった。

あるはずの仕事は延期になった。

 

まあ、だからこんな作れたんだよなあ。

 

いまかい?

めっちゃ忙しい。

筍炊くどころじゃない。

まあ、筍のシーズンは終わったしね。

 

リモートワークになって、まず男一人で筍を炊くという初体験ができた。

おかげで地球上から知らないことが一つ減ったよ。

知らないことが減るというのは気分がいいね。

 

 

撮影場所:熊本ベース

撮影機材:iPhone7

     OLYMPUS OM-D E-M5mark2

     +Olympus M.Zuiko Digital ED

      12-50mm F3.5-6.3 EZ