ゴラァッ!
「料理にゴキブリが入っていた。びっくりして背広に飲み物をこぼした」そうである。このようなセリフがとりあえず通ってしまうのだから、飲食店のほとんどが「こきたない」部分を隠しきれないのか。思い起してみれば外食での出来事について、頬笑ましいものが数え切れないほど或る。金束子の切れ端をうどんやカツ丼に混ぜてもらったり、野菜をくるんでいた新聞紙やサランラップを一緒に絡めた野菜炒めにしてくれたり、色んな物を喰わされた。いずれも店側に文句をいって勘定をチャラにしてもらったが、「お客さん、変な因縁つけるなよ」という展開には一度もなったことはない。皿うどんにへばりつく金束子の切れ端を見せつけられて、因縁つけたと言われたらたまったもんじゃないけれど。
こんなものまで混ぜてくれるのだから、ゴキブリなんぞは当たり前に入っていてもおかしくはない。丼やお皿に入っていないだけで、電子ジャーやお櫃などには出たり入ったりしているのだろう。
高校生の時に飲食店でバイトしていたとき、ラーメンの出前を届けた際に岡持のふたを開けたら、麺の上にいたゴキブリと目が合ってしまった。ついでに注文主とも目が合い散々叱られて追い返されたことがあった。大いに反省し、出前する際には次のことを実践した。
玄関を開ける前には必ず岡持内のチャックをしてゴキブリの存在を確かめ、もしラーメンの汁でおぼれているようであれば、速やかに救助、遺棄してから、呼び鈴を押す。これならお互いに嫌な思いをすることなく、円満に商談が成立してくれる。三年間バイトをしたのだが、この方法で乗り切ったのは、一度や二度ではないと記憶する。
そこのお店はスープの寸胴が棚の下にあり、ゴキブリにとって格好のダイビングポイントになっていた。店主はスープを注ぐ時にゴキブリを始末していたつもりのようだが、ダイバーの処理までは手が回らなかったのだろう。残念なことである。もちろん厨房内での彼らは、縦横無尽というか東奔西走というのか、とても忙しそうに走り回っていた。
話を戻せば、「びっくりして背広に飲み物をこぼした」これが気に入らない。飲食店でゴキブリにびっくりしないでいただきたい。加えて、幼児じゃあるまいし飲み物をこぼさないでいただきたい。飲食店に対しこれしきのことで驚くというのは、狭小であり無礼な振る舞いであると断じたい。