アーティストデモ誕生秘話(前編) | 「コジブロ」コナミ小島プロダクション公式ウェブログPowered by Ameba

アーティストデモ誕生秘話(前編)

こんばんは、玉利です。

発売から3週間が経ち、ゲーム部分のやり込みに挑戦されている方も多いと思いますが、“アーティストデモ”はいかがでしたでしょうか?

『メタルギア ソリッド バンドデシネ』に端を発し、小島プロダクションならではの映像表現として確立された“アーティストデモ”は、単なるアニメーションとは異なる新たな表現として、今も多くのフォロワーを生んでいます。

今日はその“アーティストデモ”誕生秘話に迫りたいと思います。

というか、アーティストデモ作成の中心人物であるSpooky graphic代表、ハヤシヒロミさんに電撃インタビューしてきましたよ!

今回は前編として、アーティストデモという表現の元になった『メタルギア ソリッド バンドデシネ』の話を中心にお届けします。

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――今回、アーティストデモという呼び方をしていますが、基本的な手法は『メタルギア ソリッド バンドデシネ』から引き継いでいますよね。

ハヤシ「ええ。あのときは元々、アシュレイ・ウッド氏による紙媒体の、バンドデシネがあって、それを映像化したいというお話でした。僕はもともとエンキ・ビラルとかバンドデシネが好きで、アシュレイ氏の絵も好きだったので、話を聞いてこれはぜひやらせてほしいと」

――当時、こういった表現というのはほとんど例がなかったと思うのですが、抵抗はありませんでしたか?

ハヤシ「普通のアニメーションというのは線も塗りももっとくっきりしてるんですよ。それに対してバンドデシネというのは、ペンや筆のタッチを活かした、アーティストの個性が出ている絵です。それを動かそうという発想は普通じゃないですよね(笑)。驚きましたけど、やってみたいと思いました」

――確かに、ああいった絵を動かすというのはあまり前例がないですよね。

ハヤシ「最初は別の方がサンプルを作っていたそうなのですが、うまく進んでいなかったようで、小島監督が『これは違う』という判断をされたそうです。それで、『GuitarFreaks』の映像などを作っていた僕のところに、巡り巡って話が来たんですよ。チャレンジではありましたが、自分ならできるという確信がありました」

――それはなぜでしょうか?

ハヤシ「僕はもともと3Dデザイナーだったんですが、VJ用の映像などを作るのに、After Effects(ムービーデータに様々な特殊効果を加え編集するソフト)をよく使っていたんです。それで、どうやったら動かせるのか方法論が見えたのかもしれません。あとはやはりこの絵が動いているのを見たい、という気持ちもありました」

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――当時はどんな方法を?

ハヤシ「『バンドデシネ』の時は、自分の中で映像的にやりたいことが三つあったんです。デジタルならではのトランジション(ワイプ効果)とカメラマップ、Quick&Slowな動きを活かしたアクションです」

――カメラマップとはどのようなものでしょうか?

ハヤシ「プロジェクションマップとも言うんですが、元々、アニメの世界でスタジオ4℃さんが得意としていた表現方法で、3Dのオブジェクトに2Dの背景画像をカメラ方向からマッピングして、ある程度はカメラを動かして立体的に見せることができる、という考え方です。やっぱり絵が3Dになるというのが面白くて、ぜひやってみたいと思ってたんですよ」

――やってみていかがでしたか?

ハヤシ「評判も良かったですし、小島監督にも気に入って頂けて、どんどん使ってくれと。それで方向性が固まりましたね」

――逆に苦労した点などはありましたか?

ハヤシ「縦長の紙に描かれたものをどう横長のゲーム画面に落とし込むか、という部分ですね。当時は動かすといってもアニメーションではなく、モーショングラフィックという認識だったんです。膨大な人数で分業しているアニメと戦おうとしても、それによって絵のテイストを活かせなくなったら意味がないと思ったんです」

――アニメとは完全に別の表現ですよね。

ハヤシ「ただ動かすのではなくて、アーティストの絵をスタイリッシュに見せる、というのが目的を追求することで、これまでにないオリジナルな表現になったと思います」

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――『ピースウォーカー』でもそのあたりは活かされていると思いますが、一方で動きもものすごく増えています。

ハヤシ「ある程度やると慣れてきますから、『MPO』ぐらいから、ウチ(Spooky graphic)のスタッフの中で、ここも動かしたい、あそこも動かしたいと、どんどん欲求が高まって来たんです。それにどんどん挑戦していったら、最終的にはとんでもないことに…(笑)」

…というわけで、そのあたりのとんでもない裏話は次回に続きます!