ジャック、そのありふれた名前の由来 | 「コジブロ」コナミ小島プロダクション公式ウェブログPowered by Ameba

ジャック、そのありふれた名前の由来

世の中はハロウィンの準備で賑やかですね。

至る所でオレンジ色の装飾が目立ちます。



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ところでハロウィンで飾るかぼちゃの事を、「ジャック・オー・ランタン(Jack-o'-lantern)」と呼ぶ事をご存知でしょうか。

ここでいう「ジャック」とは固有の名前と云うよりは、ごくありふれた「男性の名前」を指します。

特定の誰かというよりは、誰でもありえる、一般的に代表される名前という意味です。



「ジャック」はポピュラーな名前というだけではなく、名前が特定できない際、「誰でもあり、誰でもない」、そういう時に用いられる、男性の代名詞としても使われます。

「マトリックス」で登場した「エージェント・スミス」みたいなものです。



「ハイジャック」という単語の「ジャック」も語源は同じだと云われています。

19世紀のロンドン市民を恐怖に陥れた「ジャック・ザ・リッパー」や、先日紹介したF・ポール・ウィルソン博士の小説「始末屋ジャック」で使われる名前も同じ意図だと思います。



そして「ジャック」も「ジョン」も不特定人物を表すという意味では同じ使われ方をします。

米国で身元のわからない遺体を「ジョン・ドゥ」と呼ぶのもそうです。



MGSの場合、ほとんどのキャラクターがコードネームか、ニックネームで呼ばれます。

本名(氏名)で登場するキャラクターはごく少数です。

MGSは、名前を持たない、名前を発せない、過去も未来も捨てざるを得ない宿命を背負ったキャラクター達の物語です。



MGSでの「ジャック」も「ジョン」も「名無しの権兵衛」として登場します。

ネイキッド・スネークの本名は「ジャック(ザ・ボスにはそう呼ばれる)」であり、「ジョン(オセロットにはそう名乗っている)」です。

また雷電の本名も「ジャック」です。



いずれも本名かどうかが問題なのではなく、彼らには過去や自分を語る権利を与えられていないということです。

MGS1でサイボーグ忍者がスネークに放った「名前などない!」というセリフの真意はそこにあります。

MGS2の最後でスネークが雷電に云った「名前など、自分で決めればいい」という言葉もそれを支持したものです。




彼らは目立たないように、ごくありふれた名前を仮に与えられています。

自分を、自分のIDを語る資格を奪われているのです。



そんな彼らが、ボス戦の最中にお互いの名前(仮)を誰何しながら、殺し合う様といったら、作者でさえもやりきれなくなります。



ハロウィンのかぼちゃを見る度に、そんな事を思い出します。



MGS世界での名も無き英雄達は皆、「名無しの権兵衛」である「ジャック」なのです。