例えば、とある設定で、感情が昂ぶり、声を張り上げて涙を流す演技は、それ程難しいものではない
 
寧ろ反対に抑えた芝居で、尚且つ、強く訴え掛ける演技の方が技術を要する
 
泣いたり怒ったりといったシーンというものは、ある意味目立つので惹きつけられ易いが、何気ないシーンで、視聴者なり観衆なりの目を惹かせるというのは、難易度が高い
 
予め断っておくけど、何かの作品について、述べている訳ではない
 
そして、僕が正にこれなのよね
 
こういった場面、シチュエーションならば、こういった芝居をする、みたいな
 
勿論、それが監督の求めているものであるのならば、それで良い
 
でも自分の場合は、想像力の柔軟性が欠如しているので、どうしても凝り固まった思考から脱却出来ない時が少なからずある
 
実は今から数年前、やはりとある場所で、とある先輩の役者の方から、僕の芝居を見てこう言われた
 
先輩 「おう、木村、ちょっとこっち来い!」
 
先輩 「お前さ、肩の位置って何処にあると思う?」
 
木村 「ここです」と、自分の両肩に触れる
 
先輩 「だよな。じゃあさ、その肩がこの位置にあったらどうする?」と、膝の辺りを指差す
 
木村 「う~ん・・・」
 
先輩 「分かんないか?芝居もさ、それと同じなんだよ。後は、自分で考えろ」
 
先輩 「芝居ってのはさ、幹はちゃんとしてなきゃ駄目なんだよ。ただ枝の部分はさ、自由なんだよ。だってよ、幹はどっしりしてるけど、枝はあっちこっちに伸びてんだろ」
 
その時は意味が理解出来なかったものの、その後、少しだけ分かる様になった
 
この体験は非常に貴重で、自分の中のトリガーが外れた瞬間でもあり、その後もずっと生かされている
 
何故、突然?
 
いや、急に思い出して
 
この話に、特に意味は無いのだけど