まだ12月15日ですが、昨日で仕事納めとなりました。そして2025年の日本で書く最後のブログです。まずは本年も大変お世話になりました。今年を振り返ってみると……本当に2つの写真集のことしかやっていませんでした。
まずは右にある『HEROES』。こちらは2002年に自分で初めて海外に行き撮り始めた写真の中から子どもを主役にした写真を集めた、ぼくの子ども写真の歴史やクロニクルを意識しながら総まとめとして作ることができました。しかもキヤノンのエターナルコレクションという、まさに写真品質そのもので作れたので、印刷の妥協も一切ありません。エターナルコレクションで扱っている作家の方々を見るとレジェンドばかりなので、その中の一員として写真集が出せたこともとてもありがたかったです。
エターナルコレクションの印刷は、キヤノンのドリームラボ5000というすごい印刷機を使っているんですが、はじめてその機械を使って作って写真集を作りませんか?……とキヤノンのコッシーからお声がけいただいたのが振り返ってみると2015年のことです。そこでできあがったのが、あのピンクの大きな『レソト日和』。限定販売をして、とてもたくさんのみなさんにご購入していただいたことを思い出します。あれからもう10年なんですね。その後、ドリームラボ(通称ドリラボ)を使って、いくつもの写真集を作ってきました。わりとドリラボを使いまくっている作家といってもいいのかもしれません。そんな中で、このエターナルコレクションをぜひ……と話をいただいたときには、正直『いつかはやりたいと思っているけれど、やれるとしてもだいぶ先のことなんだろうなぁ……』と思っていたので信じられなかった、というのが第一印象です。
制作過程においては過去の膨大なHDDを見返したり、またいつもとは違うフィルムやネガの確認、そしてスキャニングや複写など、いろいろな不慣れな作業も入ってきたりと、とても大変な作業の連続。しかも短い時間の中でやらないといけなかったので、ほぼほぼ記憶がないのですが……それだけ濃密な時間だったはずです。
Nine Galleryでの展示には多くの人に来ていただき、それはとてもうれしかったですし、購入いただいたみなさんにはさらに感謝の気持ちでいっぱいです。キヤノンのエターナルチームのムコちゃんや、ドリラボ印刷の星野さんという、裏方を支えるメンバーともギャラリートークができ、またいつもの三村さんともトークをいくつかやりました。そのひとつがこちらのリンクです。
https://www.youtube.com/watch?v=PioZXs2gZBk
ぼくの子ども写真はあれで終わり……ではないと思うので、これからもどう変化していくのか、もしくはそのままなのか、自分自身でもよくわかりませんが、間違いなくぼくが写真家として歩き始めたばかりの頃の原点、そしてそこからの歴史がつまっているのがこの『HEROES』写真集なので、ぜひ多くの人に興味を持ってもらえますとうれしいです。この機会にぜひ買ってみようかな、と思われた方は以下のリンクからよろしくお願いいたします。
https://personal.canon.jp/product/photo-collection/photographers-e-collection/16-heroes
そして左の『回』のプロジェクトですね。これは本当に自分としても記録に残しておきたいことばかりだったので、日々のブログやSNSでもたくさんのことを書いてきました。多くの人に携わっていただき、とても充実した日々を過ごせました。
まずは『回』写真展をキヤノンギャラリーSという超絶素晴らしい空間で開催できたことは、これは2025年だけにとどまらず、ぼくの写真家人生にとってもとても大きなことだったと思います。個人の写真家が、あれだけ大きな空間で展示を作れることはほとんどありません。東京の……つまり日本と言い換えてもいいと思いますが……ギャラリーの中でもあれだけの環境、空間を持っているところは美術館レベルを除くとほぼ無いのではないでしょうか。写真家だったらいつかはやってみたい、目標のすべきギャラリーだとぼくも昔から思っていたし、多くの写真仲間との会話の中でも、ギャラリーSはそういう扱いなのを強く感じます。ご存知のようにあのギャラリーは公募でもなく、お金で借りられるわけでもなく、キヤノンからのお声がけで開催できるようになります。ぼくにも『いつ、どうやってやれることになったんですか?』と聞かれることも多かったですから。
ぼくもお声がけいただいたときのことはしっかり覚えているし、とてもうれしかったです。写真家としても一世一代の勝負どころ……と思って、『どんな展示でもお好きなものを!』との問いに『じつは今、北海道を撮ってまして……』と即答で、この当時は名前がなかった『回』の話をしたことを覚えています。そこからはほぼ作品作りの中心を北海道に見据えて臨んできました。一世一代だからこそ1ヶ月半の展示期間中、毎日在廊する、ということもできたわけです。おかげでとても多くの皆さんともお話しできたり、学ばせていただきました。ご来場いただいたみなさんには大変感謝の気持ちでいっぱいです。
余談ですが、あるキヤノン関係者の人からいただいた言葉に『小澤さんにはSは<アガリ>のギャラリーだと思わず、<踏み台>のギャラリーとして思ってもらえたら……と思っていたので。だから今回の「回」はとてもよかったんじゃないですかね!』というのがありました。ぼくとしてははじめての日本を扱った写真展、しかも写真展会場やギャラリートークでもとてもたくさん言われた、『多くの人が撮っている北海道』に行って何をコザワはやっているのか?……についてのぼくからの答えがあの展示としてまとめることができました。チャレンジした部分も多くあり、そこのひとつひとつを書いていたらとても文字数と時間が足りないのですが、あの展示については本当に学べる機会が多く、あの展示の前と後とで、意識の中のなにかが変わったと言ってもいいのかもしれません。間違いなく、今までよりも『もう恥ずかしい写真展はできないなぁ……』と強く思っているし、だからと言って『無難にまとめた写真展もできないなぁ』とも思っていたりもするから、さて、次はどうしたらいいのかと思案中です。そうそう、ギャラリートークで野町さんからいただいた『試行錯誤の一里塚』のお言葉とはまさに、今のぼくだと言えるのではないでしょうか。そんなギャラリーの展示のアーカイブがいつのまにやらキヤノンサイトの中にできていたので、よろしかったらこちらもご覧ください。
https://personal.canon.jp/showroom/gallery/s-memories/2025/exhibition176
この写真展にあわせて、写真集『回』もできました。よく言われるように、写真展は終わってしまったら何も残らないけれど、写真集はあとに残せるから……というのを、今、身をもって痛感しています。この写真集にも、デザイナーとして三村漢さん、編集として高橋佐智子さん、印刷にかかわるプリンティングディレクターとして鈴木利之さん、さらにキャプションや編集周りの監修として北海道の鈴木貴也さん、西尾朋高さんにも協力いただきました。もうこの5年近くのすべてのことが、この1冊にまとまっていると言えます。ご興味を持ってもらえたら以下のサイトよりお買い求めいただけますとうれしいです。
https://ulus-publishing.stores.jp/items/68dbbb32b859d320f4b6d7f5
この写真集についてもたくさん言いたいことばかりだし、間違いなくぼくの写真家人生にとってのマイルストーンだと思っていますが、やはり書き始めたらキリがないので、こちらはあっさりと。それでも最新作でもあり、代表作でもあり……。それが回でしょう。展示するまでどうなるかわからなかったけれども、展示が終わってもぼくの北海道二拠点生活はもうしばらく続くことは決まりました。どのような未来が待っているかはわかりませんが、4年半の区切りの写真集としては、とてもいい形にまとまったと思います。ぼくとお会いする機会がある人、もしくはFBなどで繋がっている人は、直接ご連絡いただけましたら作家から丁重にお送りさせていただきますので、そちらもぜひよろしくお願いいたします。今でもポツポツとメッセンジャーなどで、『回、まだある?』と連絡いただけることはとても嬉しく思っていますし、作者としてはこんなにうれしいことはありませんから。在庫がまだたくさんありますので、どうぞよろしくお願いいたします。
という、まさに2冊にかかわる仕事で今年は終わったわけですが、今日から旅に出ます。
ひさしぶりのサハラ。ラクダにすべての荷物を乗せて、目的地もなく毎日ただただ歩いてきます。午後になって疲れたら、好きなところにテントを張り、夕ご飯を食べ、1日の半分の夜の闇を楽しんできます。
電波もほとんどないし、電気もないし、何が起こっても不思議では無い環境。かなり長い間、音信不通になるかもしれませんが、元気でいたらまた会いましょう。
写真家として、より一段成長してきます!!
あらためて言いますが、今年も1年大変お世話になりました。そして2026年……もしも無事に戻ってこれましたら、新しいコザワを引き続き……いやこれまで以上に、どうぞよろしくお願いいたします。



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