【SOMPO美術館】
北欧の神秘
―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画―
会期:2024年3月23日(土)ー6月9日(日)
行ってきました。
「北欧~」と付くだけで、行きたくなる単純な私です。。
この展覧会は、北欧の絵画にフォーカスした展覧会。
北欧のうち”ノルウェー、スウェーデン、フィンランド”の3か国。
ノルウェー国立美術館、スウェーデン国立美術館、フィンランド国立アテネウム美術館という3つの国立美術館の貴重なコレクションから選び抜かれた約70点の作品が展示されています。
故郷に特有の主題を求めた画家たちは、北欧神話や民話に注目し、北欧の自然や、地理や気象に注目し、雄大な山岳や森、夏季の白夜、太陽が昇らない冬の極夜、そしてオーロラが多くの題材になりました。
撮影だった最初のエリア~
北方の風土や気候からでしょうか。独特な空気感と神秘を感じます。
※画像は撮影OK作品やチラシから。
作品内容は公式HPやキャプションなどを参考にしています。
⇩《踊る妖精たち》1866年
スウェーデン国立美術館
アウグスト・マルムストゥルム
↑アウグスト・マルムストゥルム(1829-1901)は、ヨーロッパ諸国でナショナリズムが高まった19世紀に活躍したスウェーデンの画家。
月明かりの下、霧に煙る湖の上で妖精たちが手を取り合って踊り、その姿が湖面に映る幻想的な光景です。
一見ヴェールのように霧がかかっているだけに見えますが、妖精が連なっています。
画像では伝わりづらいですが、繊細さはやっぱり実物で!
⇩《イルマタル》1860年
フィンランド国立アテネウム美術館
ロベルト・ヴィルヘルム・エークマン
↑当時のスウェーデン領(現在はフィンランド)に生まれたロベルト・エークマン(1808-1873)は、ロマン主義を代表する国民的画家としてフィンランドの民族叙事詩『カレワラ』を主題とする作品を多く残しました。
イルマタルは、『カレワラ』に登場する純潔の精霊、大気の女神であり、大地と空、太陽、星を創造。物語の中心的な人物、老賢者ヴァイナモイネンの母。
鑑賞ガイドより
フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』の物語は天地創造から始まる。
大気の女神イルマタルは上空から海へと降りると、その膝に金目の鴨が巣を作り、卵を産み落とす。
その卵から大地、空、太陽、月、星が誕生したのである。
また、イルマタルは海上で波風と交わり、『カレワラ』の中心人物のひとり、吟遊詩人であり老賢者のヴァイナモイネンをもうけた。
⇩《春の夜》1896年
ニルス・クレーゲル スウェーデン国立美術館
↑スウェーデンの画家ニルス・クレーゲル(1858-1930)は、風景画や田舎の情景で知られる。パリで学び帰国後、スウェーデンの力強く幻想的な風景を描きました。
不思議~な情景です
⇩《ユルステルの春の夜》1926年
ニコライ・アストルプ ノルウェー国立美術館
↑ニコライ・アストルプ(1880-1928)はノルウェーのモダニズム絵画を代表する画家。
この描かれているユルステルは、アストルプが生涯の大半を過ごした所で、山々や湖、フィヨルドといった豊かな自然に囲まれ、民間に伝わる工芸や音楽などの文化的伝統を色濃く残していた場所。
アストルプは、同じノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクに感化され、独特の鮮やかな色彩を用いて、ユルステルの自然や日常生活を描きました。
女性の服装も花柄かなあ。なかでも色鮮やかな作品でした
このエリア、とてもテンション上がります
北欧の芸術家たちは、母国の文化的伝統に強い関心を抱き、土地に伝わる民話や民間伝承から着想を得ました。
北欧の民話やおとぎ話は、北欧神話、およびフィンランドの民族叙事詩『カレワラ』として知られる一連の物語から大きな影響を受けています。これらの物語の多くが舞台とするのは深い森であり、そこは魔法や呪いが効力をもち、人や動物ではない存在が住まう場所
⇩《河岸》1897年
ペッカ・ハロネン フィンランド国立アテネウム美術館
↑ペッカ・ハロネン(1865-1933)は、1891年パリへ渡りアカデミー・ジュリアンで学びます。初期の作品は自然主義を取り入れた写実的な画風でしたが、帰国後はガッレン=カッレラらと知り合い、後に再訪したパリでゴーギャンにも学びます。
1896年にはフィレンツェを訪れ、初期ルネサンス美術にも触れました。
⇩《冬の日》1896年
ヴァイノ・ブロムステット
フィンランド国立アテネウム美術館
↑ヴァイノ・ブロムステット(1871-1947)はフィンランドの画家。挿絵やテキスタイルのデザインなども手がけます。ペッカ・ハロネンとともにパリに渡り、アカデミー・ジュリアンで学び、後にゴーギャンに師事。象徴主義や日本美術の影響を受けます。フィンランド帰国後は、フィンランドを特徴づける冬の自然風景を描きました。
他の作品に比べて小さめだったのですが一目ぼれ。カモメが飛んでいるこの作品はとても好きでした
⇩《フィヨルドの冬》1915年
エドヴァルド・ムンク ノルウェー国立美術館
↑エドヴァルド・ムンク(1863-1944)は、ローテンの医師の息子に生まれ、画家を志し、1880年にクリスティアニアの王位美術デザイン学校に入学。
1889年にパリへ赴き、印象派やゴッホ、ロートレックの作品にも触れ、1892年からのベルリンでの滞在時に、内面世界を追求する象徴主義へと向かいました。愛、不安、生と死といった根源的なテーマを軸に表現主義の牽引者となります。
生涯を通じて版画制作にも力を注ぎました。
「叫び」(1893年作) で知られるムンク!
ちょっと意外な作風でした。
・・・というより、他の作品をほとんど知らなかったです
この作品は、屋外で主題を前にして制作することが多かったムンクの代表的な作例ともいえるもので、自然がもつ特異な性質を巧みにとらえた絵画であると。
1910年以降、郊外の田舎町で広大な庭のある自宅で暮らし、それまでとは異なる風景や労働者を描いていきました。
今回の見どころ
北欧の物語には、トロルという怪物がよく登場します。この展覧会ではトロルを退治する物語を描いた連作が2つ出品されています。
「鑑賞ガイド」が配布されていましたので、内容を抜粋しました。
●●トロルをめぐる物語 Ⅰ●●
鑑賞ガイドより
名誉を得し者オースムン
アイルランドの王の命により、トロルの巣に囚われた姫を助け出すため、オースムンは兄弟二人とともに船で向かう。ひとりで山の城へ乗り込み、トロルを倒して姫を救出したオースムンでしたが、船に残った兄弟の姿はすでにありませんでした。取り残されたオースムンは、城内で馬を見つけると、城内の財宝を手にして、姫と共に馬に乗って、海を越え帰還しました。
主人公オースムンがトロルを倒し、姫を救出するという↑この物語を、2年をかけて10点の絵画にまとめています。10点すべてをつなげるとフリーズ(帯状の壁画)のようになりますが、依頼主はノルウェー国立美術館にいずれ作品を寄贈するつもりであったため、美術館に展示できるサイズで仕上げたということです。
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上段:左《山の門の前に立つオースムン》、右《一の間》
下段:左《五の間》、右《帰還するオースムンと姫》
1902-1904年 ガーラル・ムンテ
ノルウェー国立美術館
↑ノルウェーの画家ガーラル・ムンテ(1849-1929)の作。もとは風景画家でしたが、装飾芸術に才能を発揮。北欧神話を題材としたテキスタイル作品が高く評価され、ヨーロッパ全土に広まったアーツ・アンド・クラフツ運動にも携わっていきました。
ストーリーを辿りながら見たこの作品、面白くて何度も眺めました
10点全部みてみたいものです
~他にも作品が、
⇩《素晴らしい花》制作年不詳
フーゴ・シンベリ スウェーデン国立美術館
↑ガッレン=カッレラから絵を学んだフーゴ・シンべリ(1873-1917)は、象徴主義と独自のユーモアや遊びを兼ね備えた作風で知られている画家。中でも中世の細密画と15世紀のルネサンス美術に魅了されていきました。
空高く咲いた白い花が印象的な作品。
なんだか鳥に見えて、可愛いと思ったら、
ちょっと意味合い違ったようです。。。
貧しさと豊かさの対比が描かれ、粗末な服を身にまとった男は花をありのままに楽しみたいと願いますが、一方で彼が悲しげに見つめるのは、高貴な身なりの男がこの花を独り占めするため、今まさに茎を切ろうとしている様子が描かれています。
いわれるとそう見えますね
⇩《山の中の神隠し》1928年
ガーラル・ムンテ ノルウェー国立美術館
↑『リティ・シャシュティ(少女シャシュティ)』は中世から伝わるノルウェーのバラッド*。*バラッドとは音楽にのせて歌い継がれた物語詩。
シャシュティは山に住む妖怪の王に誘拐され、彼との間に子どもを授かります。王は人里離れた山で暮らそうと、この子を連れていってしまいます。シャシュティもさらい、人間界での生活を忘れさせるため、彼女に魔法の飲み物を与えます。その場面が描かれています。
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今回、注目の”テオドール・キッテルセン”。
初めて知った画家さんでした
●●トロルをめぐる物語 Ⅱ●●
鑑賞ガイドより
ソリア・モリア城
黄金に輝くソリア・モリア城を探す旅に出たアスケラッドは、野山を越え、森に深く分け入り、オオカミなどの動物たちに次々と出会う。門番のドラゴンを警戒し、黄金の鳥に目を奪われながらも、ついに城へたどり着く。城内でトロルを倒し、姫を救出したアスケラッドは、国の領土の半分と、ソリア・モリア城の宝を全て与えられ、姫との盛大な婚礼をとりおこなった。
⇩《アスケラッドとオオカミ》1900年
テオドール・キッテルセン ノルウェー国立美術館
鑑賞ガイドより
辺りはどんどん暗くなっていく。一対の緑色をした眼が茂みの中からアスケラッドの方を向いて光っている。オオカミだ。「ウーウウウ」と、オオカミはうなった。「何か食べ物はないか! 腹ぺこで、胃が痛くてたまらない!」「そうしたら、私のナップサックに残っているパンのかけらでも何でも分け合おうじゃないか。他にできることが見当たらない」と、アスケラッドは答えた。「ウーウウウ、それなら、私はお前を食べるまい」と、オオカミは言った。
⇩《アスケラッドと黄金の鳥》1900年
テオドール・キッテルセン ノルウェー国立美術館
鑑賞ガイドより
城のそばには、金で覆われた菩提樹が立っていた。その樹には、太陽のように光り輝く黄金の鳥がとまって眠っていた。何十万年もの間、眠り続けている。鳥は、アスケラッドが触れてみたくなるほどに魅力的であった。しかしそのとき、アスケラッドは巨大な醜いドラゴンのことを思い出す。黄金の鳥の鳴き声が、ドラゴンを目覚めさせてしまうかもしれない。アスケラッドは城の門の方へ静かに進んでいった。
⇩《トロルのシラミ取りをする姫》1900年
テオドール・キッテルセン ノルウェー国立美術館
鑑賞ガイドより
門は大きく開け放たれていた。中ではお姫さまが、眠っている巨大なトロルのもとに座って、トロルの体のシラミを取っている。「あらやだ!こんなところにキリスト教徒が来てしまうなんて!」と姫は言った。「そのようだね」とアスケラッドは答えた。お姫さまが言うことには、「トロルが目覚めたら、あなたを生きたまま食べてしまうわ。でも、あそこの瓶の中のものを飲めば、隅っこにある大剣を振るうこともできる。急いで!」
ノルウェーの画家テオドール・キッテルセン(1857-1914)は、風景や物語を主題とし、トロル(北欧の妖精の一種)をよく描きました。
怪物のような妖精のような、不思議な生き物として描かれるトロル!
この作品はトロルと囚われの姫を描いたもので、姫が眠っているトロルの体のシラミを取り、そこへ少年アスケラッドが、姫を救出しにやってくる場面。
アスケラッドは、ノルウェー民話の多くに登場する主人公の呼び名で、困難を乗り越え、ついには姫と結婚します。
他にも、絵画だけでなくタペストリーも。
⇩《スレイプニルにまたがるオーディンのタピスリー》
ガーラル・ムンテ ノルウェー国立美術館
王子様が画家とは、びっくり
⇩《工場、ヴァルデマッシュウッデからサルト シュークヴァーン製粉工場の眺め》制作年不詳
エウシェン王子 スウェーデン国立美術館
↑エウシェン王子(1865-1947)は、1887年から1889年にかけてパリへ留学し、スウェーデンのロマン主義を代表する風景画家となります。
この作品で描かれているのは、1905年に移り住んだ地から、旧都の古い工場を望む光景。
このように人工の光に包まれた夜景は、世紀転換期のスウェーデンで繰り返し描かれたモチーフなのだそうです。
⇩《ベランダにて》1902年
エドヴァルド・ムンク ノルウェー国立美術館
↑こちらもムンクの作品。発表当時には《雨天》というタイトルが付けられていたそうです。
ムンクの作品というと暗いイメージがありましたが、この作品は鮮やかな色彩でした。
2人の女性は何を考えながら佇んでいるのかなあ~と考えながら鑑賞しました🤔
⇩《画家の母》1896年
アクセリ・ガッレン=カッレラ
スウェーデン国立美術館
↑アクセリ・ガッレン=カッレラ(1865-1931)は、フィンランドの民族叙事詩である『カレワラ』を題材にした作品でよく知られています。
神秘主義や神智学に関心を寄せていた画家の母。ガッレン=カッレラが自然主義から象徴主義へと転向したのは、彼女の影響が大きいとされています。
瞑想にふける姿と、その背景にある幻想的な光景が、彼女の思想を視覚的に表現している作品。
国立西洋美術館で初めて知った”アクセリ・ガッレン=カッレラ”。《ケイテレ湖》しか知らなかったので、また違う感じだなあ~と思ってみた作品でした。
”エドヴァルド・ムンク””アクセリ・ガッレン=カッレラ”以外、ほとんど知りませんでした
全部は覚えられないので、”テオドール・キッテルセン”だけでも、覚えておこうと思います
北欧ってインテリアはよく見かけますが、絵画に注目したことはなかったので、すべてが魅力的でした。
神話を題材にした作品はストーリー性があってとても面白かったです。
北欧神話って面白そう~と、、またまた単純な私は思ってしまいました
行ってよかったです。
6/9(日)まで。
巡回展
〇松本市美術館(長野県)
2024年7月13日(土)〜9月23日(月)
〇佐川美術館(滋賀県)
2024年10月5日(土)〜12月8日(日)
〇静岡市美術館(静岡県)
2025年2月1日(土)〜3月26日(水)
(2024/4 撮影)