【埼玉県立近代美術館】
「イン・ビトウィーン」

In Between
2023年10月14日(土)ー2024年1月28日(日)

 

行ってきました。久しぶりの”埼玉県立近代美術館”でした走る人

 

現在開催中の「イン・ビトウィーン」展。

”イン・ビトウィーン”って??

☞日本語で「(ふたつのものの)間に、中間に」という意味。

 

この展覧会は、自分と他の人との違い、自分がいる場所とは違う場所のことなどをテーマに、自分について考え続けた作家の作品が紹介されています。

 

近年この美術館の収蔵作家となった早瀬龍江ジョナス・メカス林芳史に、ゲスト・アーティストとして潘逸舟を加えた4名の作家にスポットを当てています。

 

4名の作品を少しずつ~むらさき音符

※画像は撮影OK作品やチラシから。作品内容は公式HPなどを参考にしています。

 

クローバー林 芳史(はやし・よしふみ/1943-2001)

 

在日韓国人二世として大阪府に生まれ、のちに日本国籍を取得。美術評論家として、李禹煥や関根伸夫など同時代の作家たちの作品の評論に携わりながら、制作活動も行いました。

 

~1970年代中頃、鉛筆やコンテの描線を版画に重ねた作品や、表現が凸凹した物の上に紙を置き、その上を鉛筆や色鉛筆でこすると、凸凹の模様が写し取られるフロッタージュなどドローイングや版画を中心に制作しました。

 

⇩林芳史《Concerning Identity and Difference》

1975年 コンテ、埼玉県立近代美術館

 

⇩林芳史《習作》

1975年頃 フロッタージュ、埼玉県立近代美術館

 

☝☟スケッチブックやハサミのフロッタージュ作品

 

⇩林芳史《習作》

1975年頃 フロッタージュ、埼玉県立近代美術館

 

☝☟

「画家の初期のドローイングや版画には、しばしば、画面を大きく分断するように「X」が描かれている。その真意は明らかではないが、見る者がイメージに没入することを遮断し、イメージを相対比するような効果を生んでいる」とキャプションにはありました。。

 

⇩林芳史《X》

1976年 リトグラフ、埼玉県立近代美術館

 

~次第に東洋思想に傾倒し、1980年代以降は、墨と和紙を用いて、筆触や墨の滲みによって引き出される繊細で豊かなニュアンスを持った抽象画を手がけていきました。

 

⇩林芳史《Work》

1980年頃 墨、埼玉県立近代美術館

 

⇩林芳史《Work》

1980年頃 墨、箔、埼玉県立近代美術館

 

 

クローバー潘 逸舟(はん・いしゅ/1987年生まれ)

 

中国、上海生まれ。幼少期に上海から青森に移住。現在は、東京を拠点に活動する作家。自身の経験をベースに、社会と個の関係の中で生じる疑問や戸惑いを、自らの身体を用いたパフォーマンス、映像、インスタレーションによって表現しました。

 

※動画の撮影NGだったため、チラシ画像から。

(潘逸舟「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」展示風景(東京都現代美術館、2021)

 

展覧会場では、

〇潘逸舟《波を掃除する人》2019年 など、

新作の映像がいくつか流れています~🎥

 

作家の近年の展覧会には、

・「海、リビングルーム、頭蓋骨」

(2021年、東京都現代美術館)

・「国際芸術祭あいち 2022」

(2022年、愛知県美術館)

・「ホーム・スイート・ホーム」

(2023年、国立国際美術館)

などがあるそうです。

 

・昨年、

東京都現代美術館のMOTコレクション展で、

〇潘逸舟《戻る場所》2011年

の映像をみたのが記憶に新しいです。

 

クローバージョナス・メカス(1922-2019)

リトアニア、セメニシュケイ生まれ。第二次世界大戦下、ナチスの強制労働収容所に収容されるが脱走叫び  。。弟と転々。。。1949年アメリカに亡命。

 

16ミリフィルムカメラを手に入れ、日常の光景を撮影し始め、雑誌の刊行などを通して、前衛映画作家たちの懸け橋となるべく奔走し、映像作家としての活動の他、リトアニア語の詩人としても活動しました。

 

⇩ジョナス・メカス

《枝と葉の影を映し、雨滴に濡れた壁》

1983年 埼玉県立近代美術館

 

⇩ジョナス・メカス《ウーナ・メカス5才 猫とホリス(母)の前でヴァイオリンの稽古 1979》

1983年 埼玉県立近代美術館蔵

 

⇩ジョナス・メカス

《ひなぎくを持ったケイト・マンハイム 1972》

1983年 埼玉県立近代美術館

 

⇩ジョナス・メカス《ピクニック》

2009年 ときの忘れもの

 

ジョナス・メカスの境遇からは想像できないほど、生物や植物などへ向ける眼差しは、とても優しい温かさを感じます。。

 

 

~個人的に、一番、

印象に残った作家”早瀬龍江”作品。

展示にも、力が入っていたような気がします。

 

クローバー早瀬龍江(はやせ・たつえ/1905-1991)

 

北海道の奥尻島生まれ。

大学在学中に油彩を始め、福沢一郎の絵画研究所に通い、シュルレアリスム絵画と出会います。

 

ヒエロニムス・ボス風の幻想的な作品や、自身の容貌や食物、日用品等をモチーフにした作品を手がけていましたが、次第に日本の美術界と距離をおくようになりました。

1958年には、夫である、白木正一とともに渡米し、1989年までニューヨークに滞在し、絵画や立体作品の制作を続けました。

 

⇩早瀬龍江《營》

1940年 郡山市立美術館

不思議な生き物たちです。。

 

⇩早瀬龍江《限りなき憧憬》

1951年 板橋区立美術館

 

⇩早瀬龍江《非可逆的睡眠》

1953年 板橋区立美術館

 

ガラス瓶は、様々な形態で早瀬の作品には登場します。自身の感情や内面がモチーフに託されているそうです。

瓶に閉じ込められた女性、、、歪んだ瓶、、、。

 

⇩早瀬龍江《願望》

1953年 埼玉県立近代美術館

 

⇩早瀬龍江《妖火》

1954年 埼玉県立近代美術館

 

⇩早瀬龍江《禁断の遊戯》

1956年 飯能市立博物館


⇩早瀬龍江《失題》

1956年 富岡市立美術博物館

 

人物もぐっ~と伸ばされ、段々抽象的になっていきます。

 

⇩早瀬龍江《信仰》

1980年 飯能市立博物館

 

☟そして、これが面白かった指差し

 

⇩早瀬龍江《作品》油彩、蛍光塗料、カンヴァス

1972年 飯能市立博物館

 

ニューヨークにおける早瀬の制作は、1986年に開催された生前唯一の個展「二元絵画が描き出す夢幻の世界」でした。

この”二元絵画”は、蛍光顔料を使用することで、ブラックライトを当てた際に自然光とは異なる絵図が現れる手法が用いられている。

 

↑この作品①は、ブラックライトによって大蛇を持つ人物像が浮かび上がる仕組みになっています(②の絵になります)

 

実際に、展示室では①にブラックライトは当てられていませんが、少ししゃがんで下の方から絵を覗くと、うっすら②のような絵が浮かんで見えましたびっくり

 

オーナメント

この展覧会のタイトル「イン・ビトウィーン」(In Between)は、ジョナス・メカスの同題の映像作品から着想されたそうです。

 

日常と非日常、虚構と現実、過去と現在、国境、ジェンダーなど、世界には目に見える、あるいは目に見えない多くの境界があります。

 

4名の出品作家は、境界に立つ当事者としての自身のアイデンティティに向き合い、制作を続けてきた作家です。

 

思っていた以上に、面白かったです。

~1/28(日)まで。

(2023/12 撮影)