【松濤美術館】
「杉本博司 本歌取り 東下り」
会期:2023年9月16日(土)ー11月12日(日)

 

 

行ってきました走る人

 

展覧会のタイトル ”本歌取り 東下り" とは??

 

本歌取りとは、和歌の作成技法のひとつで、有名な古歌(本歌)の一部を意識的に自作に取り入れ、その上に新たな時代精神やオリジナリティを加え歌を作る手法のこと。

 

杉本博司(1948~)は、この和歌の伝統技法「本歌取り」を日本文化の本質的営みと捉え自身の作品制作に援用し、2022年 姫路市立美術館で、このコンセプトのもと「本歌取り」展を開催しました。

西国の姫路で始まった杉本の本歌取り展は、今回、東国である東京の地で新たな展開を迎えることから、「本歌取り 東下り」と題されました。

 

※画像は撮影OK作品から。作品内容は公式HPなどを参考にしています。

 

この展覧会を象徴する作品から下差し

 

⇩杉本博司 《富士山図屏風》2023年

ピグメント・プリント 作家蔵

↑東国への旅中に、旅人が目にする雄大な富士山を描いた葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》を本歌とした新作。北斎の赤富士が描かれたと推測され、山梨県三ツ峠山からの富士山の姿をとらえている。

本展、初公開!

一部🔍

 

他にも大作が複数あり、迫力に圧倒されます気づき

 

 

杉本博司《フォトジェニック・ドローイング015:タルボット家の住み込み家庭教師、アメリナ・ ペティ女史と考えられる人物 1840-41年頃》

2008年 調色銀塩写真 ベルナール・ビュフェ美術館蔵

↑杉本は、タルボットの初期写真のネガから、ポジ(陽画)を制作する。タルボットのネガを「本歌取り」したポジには、約180年前にタルボットが写し取った世界が、反転した状態で表されている。

現実世界の一瞬を切り取る写真を、杉本は「写真は現実の本歌取りである」と考えた。・・・ナルホド🤔

 

 

⇩全場面一挙公開!

これまで公開される機会が少なかった《法師物語絵巻》。8mを超える全場面公開。

杉本は、この「死に薬」を狂言演目「附子(ぶす)」の本歌と捉え、狂言に置き換えた公演も行った。

 

⇩《法師物語絵巻》(部分)

15世紀 紙本着色 小田原文化財団蔵

↑第五場面 馬の落し物:和尚に「落ちているものを拾うな、ただ踏みつけろ」と言われた小法師は、落馬した和尚を踏みつける爆  笑

 

↑第七場面 死に薬:和尚の香の粉(麦こがしのことか)を小法師は欲しがったが、「死に薬だ」と説明される。和尚の鉢を割った小法師は「その償いに例の死に薬をたくさん食べてみたが死ねない」と泣く爆  笑

 

和尚と小法師を主人公に、和尚をからかう笑い話が描かれていました。

 

 

⇩杉本博司《Brush Impression 0905「月」》

《Brush Impression 0906「水」》

2023 銀塩写真 作家蔵

 

⇩杉本博司《Brush Impression 0625「火」》

《Brush Impression 0740「狂」》

2023 銀塩写真 作家蔵

↑書における臨書を基に、写真暗室内で印画紙の上に現像液又は定着液に浸した筆で書いた《Brush Impression》シリーズ。

文字の起源とは何なのか、そして文字によって生み出される言葉の意味とは・・・杉本はこの大いなる問いに向き合い続けている。。

 

 

⇩杉本博司 《カリフォルニア・コンドル》

1994年 ピグメント・プリント 作家蔵

↑中国宋時代の画家である牧谿(もっけい)の水墨画技法を本歌取りとした作品で、杉本の代表作である「ジオラマ」シリーズの1点。

サンフランシスコの自然史博物館、カリフォルニア科学アカデミーににあったもので、書割の前に据えたコンドルの剥製を撮影したもの。

 

 

⇩白井晟一《瀉嘆》昭和時代(20世紀後半)

紙本墨書 杉本博司蔵

↑ここ”渋谷区立松濤美術館”は、建築家の白井晟一(1905-1983)によって設計された建築。晩年、白井は書家として活動し、この《瀉嘆》(しゃたん)はその書のひとつ。杉本博司所有の作品。

 

 

⇩杉本博司《相模湾、江之浦》2021年1月1日

ピグメント・プリント 作家蔵

↑杉本の代表的作品の一つ「海景」シリーズ。

このシリーズは、古代の人間も見ていたであろう「海」を現代に生きる我々も見ることができるのか、という杉本の問いを契機として1980年から制作が始められた。

 

「海景」シリーズは、国内外の様々な海と、空との境界をなす水平線によって画面が上下に二分され、いずれも、静謐さを感じさせる広大な海と空が写し出されている。

 

杉本にとって縁の深い、相模湾の江之浦の海を、元旦に写した作品。初出品!

普段は船舶が行きかう同地の海が、1月1日だけは穏やかな原始の姿を見せることに気が付き、この作品を撮影したと杉本は語っている。

 

⇩杉本博司《時間の矢》1987年

(火焔宝珠形舎利容器残欠:鎌倉時代[13−14世紀] 海景:1980年)

ミクストメディア 小田原文化財団蔵

↑この《時間の矢》は鎌倉時代の舎利容器(釈迦の遺骨を入れる容器)に海景を組み合わせた作品。この作品で、杉本は初めて古美術と自身の作品を合体させた。

鎌倉時代の時代精神を、現代に生きる杉本が自身の内側に取り込み、新たに生み出した、まさに杉本による「本歌取り」を象徴する作品のひとつ。

 

 

⇩杉本博司《宙景 001》と ギベオン隕石

ピグメント・プリント 作家蔵

↑ソニー、東京大学、JAXAが協働し共同開発した人工衛星「EYE」で撮影された地球。古代から人間が暮らし続けてきた地球の姿をとらえている。

 

 

スター”杉本博司”といえば ”江之浦測候所”のことしか知らなかった私あせる

人類の過去と未来、古典と現代など、こんな壮大なスケールの世界観で、写真、書、工芸、建築、芸能と、多岐にわたる方だったとは、、、汗うさぎ
”杉本博司”の世界を少しだけ知ることができました。行ってよかったです。

そして、”江之浦測候所”に行ってみたくなりました音譜音譜

 

 

 

開催中~11/12(日)まで。

(2023/10 撮影)