【パナソニック汐留美術館】
開館20周年記念展「中川 衛」

美しき金工とデザイン
会期:2023年7月15日(土)ー9月18日(月・祝)

 

 

 

行ってきました。

パナソニック汐留美術館の開館20周年を記念する展覧会です。

 

※画像は撮影OK作品やチラシから。作品内容は公式HPなどを参考にしています。

 

”中川衛”さんは、

 

・1947(昭和22)年、石川県金沢市に生まれ。

・金沢美術工芸大学産業美術学科で工業デザインを専攻。

・卒業後、1971年に大阪の松下電工(現パナソニック)に入社し、美容家電製品などのデザインに携わる。

・27歳で帰郷。地元の伝統工芸である加賀象嵌に魅了され、そして彫金家の高橋介州(1905〜2004)に入門し、石川県工業試験場に勤務しながら修業する。

 

日本伝統工芸展等で入選・受賞を重ねる。

・2004年、57歳の時、金工の技術継承に尽力した功績により重要無形文化財「彫金」保持者(人間国宝)に認定される。

 

・また今日まで、後進の育成に尽力し、海外でも積極的に研修をするなど、国際的な活動を展開している作家さんです。

 

 

展覧会では、3つの章に分かれていました。

 

第1章 工業デザインの精神

 

工業デザインを学んだ金沢美術工芸大学での課題制作の資料や、パナソニックでの会社員時代の仕事の資料が中心となっており、携わった美容家電製品などのデザイン画が並んでいます。

 

⇩中川 衛《電気シェーバー デザイン画》1970年代 個人蔵

 

会社員時代の仕事の資料の他、奥様とは社内結婚だったことやハート今の住居は、すべてパナソニック製品だとか。。ニコニコ

 

 

第2章 象嵌のわざと美

 

松下電工を退社後、金沢市に帰郷した中川衛は、石川県工業試験場に勤務。

その頃に石川県立美術館で江戸時代の鐙の展覧会を観て、そのデザインのモダンさに魅了され、そこから伝統的な加賀象嵌に関心を持ち、加賀象嵌の第一人者であった彫金家の高橋介州(1905-2004)に入門し、象嵌技法の修業をしたそうです。

 

 

ここでは、中川氏が影響を受けた作品が並んでいました。

 

⇩《「の」の字文象嵌鐙じもんぞうがんあぶみ》17世紀(江戸時代)

銘 金澤住善左衛門永國作 加賀本多博物館蔵

⇧高橋介州《加賀象嵌かがぞうがん 埴輪馬置物はにわうまおきもの》20世紀(昭和時代) 公益財団法人宗桂会蔵

 

この2つの作品との出会いが大きかったといいます。

おびただしい”の”の字に、大胆な江戸時代のデザインに衝撃を受け、師匠となる”高橋介州”の加賀象嵌に関心を持ったそうです。

 

 

後に、中川氏が制作した

〇中川 衛《象嵌朧銀盛器「あいう…」》1999年 個人蔵

→”あああああ・・・・”の文字と、上から斜め読みすると”はな、かすみ、そら、とり、ひかり・・・・”と、自然界の中にあるものの名前のひらがな文字を文様にした、食べ物を盛る器にした作品がありました。

画像がないのが残念ですが、おもしろい!!デザインの作品です。

 

ここからは、特に好き飛び出すハート飛び出すハートと思った作品。

 

こちらも画像なしです。

〇中川 衛《象嵌花器「東雲」》2010年 個人蔵

〇中川 衛《象嵌朧銀花器「夕映え」》2011年 金沢市立安江金箔工芸館 蔵

→建物の窓に映る早朝の表情をモチーフとする幾何学模様のデザインの「東雲」と、夜明けや夕暮れの場面が展開されている「夕映え」は、無機質なビルや建物にも表情が現れていて素敵なものに見えました。

 

たぶん、一番好きだった恋の矢恋の矢作品がこちら

〇中川 衛《象嵌朧銀花器「夕映のイスタンブール」》2011年

(公財)ポーラ伝統文化振興財団 蔵

→金工技術の調査のために訪れた、トルコ・イスタンブールの風景。
家々が並んでいて、家の壁には金や銀、屋根は銅を用いて制作。
こうした絵画的な表現は、加賀象嵌に新しい風を吹き込みました。
 

この作品の元になったスケッチも並べられています。

 

 

⇩中川 衛《象嵌朧銀花器「チェックと市松」》2017年

金沢市立安江金箔工芸館 ※ポストカード

↑こちらはメインビジュアルの作品。中川衛の代表的な作品のひとつ。
制作のきっかけは、大英博物館の学芸員からタータンチェックの作品を勧められたことからだそうです。

スコットランドの伝統的なタータンチェックと、日本の市松模様を組み合わせようと試行錯誤を重ね、縦線と横線とが重なる部分に違う金属を使い、着物の織りのような模様にして出来上がった作品。


こういった金工の作品は、きれいな文様にするために仕上げに”おろし大根”で洗ったり、作品表面の余分な油を落とすために”梅干し”を使ったりすることを、とあるTV番組で知りましたおーっ!

これで、文様の色が綺麗になるそうですびっくり

 

 

第3章 国境と世代とジャンルを超えて

 

この章では、後進の育成や、海外でも積極的に研修をするなど、国際的な活動を展開している作家である中川に学んだ金工作家の作品や、中川と異分野のアーティストのコラボレーション、海外での仕事について紹介されています。

 

一部、撮影可能なエリアがありましたスター

 

⇩中川 衛《象嵌朧銀花器「NY.7:00  o'clock」》2022年 個人蔵

 

⇩上田 稔《黒味銅銀接合せ象嵌花器「水簾」》2018年 個人蔵

 

⇩笠松加葉《朧銀象嵌花器「森羅万象」》2023年 個人蔵

 

⇩久米圭子《vein》2023年 個人蔵

 

⇩水代達史《Camouflage ―彩―》2019年 個人蔵

 

 

その他、若いアーティストとコラボした作品もあります。

最後のエリアで撮影OKの2作品です。

 

⇩中川 衛《象嵌朧銀孔雀伏香炉》2017年 個人蔵



↑伏香炉は焚いたお香にかぶせて使う器で、背中の穴から香りが出て匂いが広がっていく。
 

文様を彫って叩きこむ象嵌技術を、またさらに別の金属をはめ込んでいく”重ね象嵌”を極めていき、人間国宝に・・・。
この作品には、銀、金、銅などたくさんの種類の金属が使われていて、1年かかった作品だそうです。

 

 

⇩中川 衛、舘鼻 則孝《Heel-less Shoes "波と遊ぶ"》2023年 個人蔵

 

↑レディー・ガガの靴で知られるコンテンポラリーアーティスト、舘鼻則孝さんとの共作。

《Heel-less Shoes》は花魁の高下駄とヨーロッパの高靴を融合させた舘鼻則孝さんの代表的シリーズ。

その作品に、金工の波模様が合体しています。

 

これから、広い範囲で金工の象嵌技術が使われるようにしたいとの思いからのコラボですニコニコ

 

 

この展覧会で、初めて金工の”象嵌”という技術を知りました。

 

中川衛氏の、色々な風景から着想を得た金工の作品の数々は、美しくてかっこよくキラキラおしゃれでした!!

そして、人間国宝の技術は凄いです!!!!!

 

まだまだアイデアが浮かんでいるそう。

これからの新たな活動が、とても楽しみです。

みてよかったです。

~9/18(月・祝)まで


(2023/9 撮影)