【サントリー美術館】
「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」
会期:2023年4月22日(土)ー6月25日(日)

 

行ってきました走る人

 

サントリー美術館コレクションの多くを占める”ガラス工芸”。今回は「吹きガラス」に焦点を当てた展覧会です。

 

🎈”吹きガラス”は、

ドロドロに熔けた熱いガラスに息を吹き込み、風船のように膨らませて器を作る技法。直接手で触れることなく、ガラスの温度や状態を見定めながら手早く形を作っていきます。

 

◆◇古代ローマ時代から日本のガラスの未来まで◇◆

※画像は撮影OK作品やチラシから。

 

第Ⅰ章:自然な曲線美―古代ローマの吹きガラス

 

吹きガラスは紀元前1世紀中頃、ローマ帝国下の東地中海沿岸域に始まると考えられている。

 

下矢印左:把手付水注 シリア 2~3世紀 サントリー美術館

中央:長頸瓶 東地中海沿岸域1~5世紀 サントリー美術館

右:水注 シリア 1~5世紀 サントリー美術館

↑本体ガラスに、別のガラス種を貼り付けて引っ張って注ぎ口にしたり、紐や糸のように巻き付けた装飾がみられる。

 

下矢印左:四連瓶 シリア 4~5世紀
岡山市立オリエント美術館

中央:吊手付二連瓶 東地中海沿岸域 4~5世紀
遠山記念館

右:三連瓶 東地中海沿岸域 2~3世紀
岡山市立オリエント美術館

「三連瓶」は1つの球体に見えるが、3つの空間に分かれている瓶で、3本の吹き竿にそれぞれガラス種をつけて、丸い型の中で同時に膨らませたと思われるもの。世界でも3点しかない珍しい形だそうです。
「二連瓶」や「四連瓶」と呼ばれる作品も含め、独特な形態の作品群です。
 
 
第Ⅱ章:ホットワークの魔法―ヨーロッパの吹きガラス
 
熔解炉で熔かした熱いガラスを成形・加工することをホットワークという。その表現は15~17世紀頃のイタリア、ヴェネチアにおいてひとつの頂点に達する。その中で、透明のガラスが開発され、16世紀に発展したレース・ガラスも、ホットワークを極めたヴェネチア職人の技です。
 
下矢印船形水差 イタリア 16~17世紀 サントリー美術館
 
↑今回の目玉!10年ぶりの展示だそうです。
10以上のパーツを組み合わせて出来上がっている作品。
 

そのパーツ一つ一つを作った後、接着剤でくっつけたわけではなく、まだガラスが熱い状態で様々な形で器を支えながら職人たちが息を合わせて手で触ることなく組み立てたといわれている作品。

 
下矢印レース・ガラス脚付鉢 イタリア 16~17世紀
サントリー美術館
↑格子状の文様をもつレース・ガラスは、右回転・左回転の器を2つ重ねて作られている。それにもかかわらず、非常に薄い作品。
 
※画像なし。

〇「レース・ガラス大皿」イタリア 17世紀

箱根ガラスの森美術館
直径58cm、整った透明のガラスに鮮やかな模様は美しくキラキラしばらく眺めました気づき
 
この章では、ヴェネチアの技を独自の表現に昇華した現代ガラス作家4名の作品も紹介されています下差し
 
下矢印gaze藍/netz藍 有永浩太 日本 2022年 作家蔵
 
下矢印ファイバーレースヴェロネーゼ 白龍
伊藤周作 日本 2022年
 
下矢印水月 ヴェネチアの夜 加倉井秀昭
日本 2022年 作家蔵
 
下矢印Goblet(mezza stampatura)シリーズ
関野亮 日本 2022年 作家蔵
 
 
第Ⅲ章:制約がもたらす情趣―東アジアの吹きガラス
 
12~19世紀までの東アジアで作られた吹きガラスを、日本に伝わる作品を通して紹介されています。
 
下矢印左:紫色ちろり 桑名市博物館[田中一郎氏寄贈]
日本 18~19世紀
中央:藍色ちろり サントリー美術館
日本 18世紀
右:ちろり 東京都江戸東京博物館
日本 19世紀
(正面から)↓
↑(中央)サントリー美術館の代表する江戸時代の吹きガラスの名品「藍色ちろり」の把手の特徴が同じである3点を初めて並べて公開!
 
日本で吹きガラスが本格的に作られるようになったのは江戸時代から。”ちろり”はお酒を入れる器のこと。この色と曲線の美しいこと飛び出すハート
 
日本の吹きガラスの製法が、西洋と異なっていたため独特の発展をしたといわれています。その違いは、完成した器を徐々に常温までゆっくり冷ましていく徐冷という工程。
 
ヨーロッパには、大きな溶解炉がある傍には、しっかり温度管理ができる徐冷用の炉があった。一方、江戸時代の日本では、残っている絵図の資料からは、ただ置いて冷ましている。
 
ガラスの表面側と内側の冷めていく温度のスピードが違うと、割れの原因になる中、とても薄い胴体にいくつものパーツが付けられているにもかかわらず、割れることなく、形を保っている所は驚くべき凄いところなのだと。

 

 

第Ⅳ章:今に連なる手仕事―近代日本の吹きガラス

 

明治になると、日本にも西洋式の制作技術が導入される。その技術導入に大きな役割を果たしたのが官営の『品川硝子』。昭和時代初期にかけて作られた氷コップ(かき氷入れ)の装飾は、色も形もバリエーション豊かになり、日本の吹きガラスは最盛期を迎える。
 
氷コップは量産された商品ではあるけれど、ひとつひとつ手仕事で作られ、同じデザインや技法で作られていても形や文様が少しずつ異なり、個性的です。
左:籠目文赤縁碗形氷コップ 日本 20世紀 個人蔵
右:赤乳白花縁ラッパ形氷コップ日本 20世紀 個人蔵
左:吹雪文碗形氷コップ 日本 20世紀 個人蔵
右:白に緑被せ白千筋文赤縁脚付鉢
日本 19~20世紀 個人蔵
 
かわいらしい器たち。これにアイスや氷入れて食べたいね照れ

 

 

第Ⅴ章:広がる可能性―現代アートとしての吹きガラス

 

20世紀以降は、器などの実用品生産だけでなく、「吹いて膨らませる」吹きガラスの基本を活かした新しい造形表現への挑戦がみられます。

「これ吹きガラス?」と思う作品です。

 

下矢印しろの くろの かたち 2022 小林千紗
日本 2022年 作家蔵

 

↑無色透明のガラスに黒のペイントを施している。熱いうちにビューンっと引っ張っているのでしょうか。

これガラス?とまじまじと見てしまいました目

ガラスの可能性は無限キラキラ印象的だった作品ですハート

 

下矢印

左:Amorphous 21-1 横山翔平 日本 2021年 作家蔵

右:Amorphous 22-5 横山翔平 日本 2022年 作家蔵

 

下矢印Vestige 藤掛幸智 日本 2023年 作家蔵

 

下矢印Transition '22-11 竹岡健輔 日本 2022年 作家蔵

 

吹きガラスの表現や装飾は多種多様で、ガラス素材の魅力とこれからの可能性をスター感じます。

 

”作り手の<技>”を理解するには、マニアックな技法解説すぎて笑ううさぎ、私には難しいものでしたが、躍動感あふれるもの、柔らかさを感じるもの、繊細で美しいものキラキラガラスは面白い!こと知りました。

 

あと数日、6/25(日)まで。

 

オーナメント入口の1階エレベーター前。撮影OK!

 

※この展覧会にあわせて実施した、サントリー美術館所蔵《藍色ちろり》の技法研究の映像。展示室でも映像が流れていましたが、約45分、さすがに長い、、、お家でどうぞ↓

サントリー美術館「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」

東京藝術大学チーム《藍色ちろり》の技に迫る 43分14秒

 

(2023/5 撮影)