【埼玉県立近代美術館】
戸谷成雄 彫刻
会期:2023年2月25日(土)~5月14日(日)

 

会期終了したのですが、印象に残っているので投稿します。

終了間近に行くと、すでに終わった展覧会の投稿に、、、。

写真を主に。。

※画像は撮影OK作品やチラシから。作品内容は公式HPなどを参考にしています。

 

やしの木戸谷成雄さんは、、

日本を代表する彫刻家で、1947年 長野県上水内郡小川村生まれ。愛知県立芸術大学大学で彫刻を専攻。

 

彫刻というジャンルが批判や解体にさらされていく当時の美術潮流のなかで、戸谷は彫刻の起源や古今東西の彫刻表現を探究、「彫刻とは何か」を問い続ける。

 

1980年代中頃から木材の表面をチェーンソーで彫り込む「森」シリーズを発表し、国内外で高い評価を受ける。

 

 

下矢印下の2点は、ベトナム反戦運動や大学闘争などが活発化した当時の日本社会のなかで、戸谷が無力感を抱えながら表現を模索する過程で生まれた作品。卒業制作の人体彫刻ですびっくり

 

⇩《男Ⅰ斜面の男》1973年 個人蔵

↑内部が空洞化し「鎧化」した肉体が斜面から滑り落ちるような感覚をもとに制作。

 

⇩《器Ⅲ》1973年 愛知県立芸術大学

↑ベトナム戦争の悲惨な情報が飛び交う状況下で、何もすることができない自分自身-「見ざる、聞かざる、言わざる」的態度を内省した自刻像。

 

 

下矢印ときわ画廊で開催された初個展「POMPEII‥79」の出品作品。

 

⇩《POMPEII‥79 Part1》1974/1987年

 

↑西暦79年にナポリ近郊の古代都市・ポンペイにあるべスビオ山で噴火が起きた際に市民の死体が火山灰のなかで気化し、十数世紀後の調査で、その空洞に注ぎ込まれた石膏によって人型が再び出現したエピソードに着想を得て制作された作品。

 

 

⇩《レリーフ》1982年

↑30歳半ばに彫刻そのものを捉え直そうとした意欲作だそう。鉄、石膏、角材を組み合わせて作品が出来上がる過程を造形化したもの。

 

その後、戸谷は行き詰まりを感じて、そういった作品の一部を燃やしたそう~。その時の様子の映像が、途中、流れていました↓

 

⇩映像《閑さや岩にしみ入蝉の声》1983年

↑燃えさかる炎が大地にしみこんでいく様子に、松尾芭蕉の句を重ねる。

 

作品を燃やしたパフォーマンスから派生した彫刻作品”地下の部屋”は、約40年ぶりの公開だそうです。

 

右上:《地下へⅡ》1984年

左上:《地下の部屋》1984年

右下:《床から》1979/1987年、その他

 

 

下矢印~チェーンソーで掘り刻む「森」シリーズ

 

⇩《森Ⅸ》2008年 ベルナール・ビュフェ美術館

 

↑森シリーズの作品の高さ220cmは、腕を上げた戸谷自身の背丈だそう。

彫り込まれた溝は人の視線。シリーズを重ねるごとに複雑化する森。

 

長野の山奥で育った自身が、

「遠くから山を見ると、山の輪郭があってフォルムがあるけれど、その中に入って、枯れ草の上にひっくり返って昼寝をしていると、輪郭の内部に自分がいることになるが、認識の輪郭と山の実体としての輪郭はずれていることになると・・・」

「森の形状とかではなく、表面にかかわる問題、自分の作品の表面を形づくるものとして、森の姿は近い感じがしたと・・・」と語っています。

 

彫刻の可能性を探し続ける戸谷の姿が重ねられている!?という作品。代表作。

 

⇩《森の象の窯の死》1989年 東京都現代美術館

 

 

下矢印~1990年代半ばから後半にかけて集中的に制作された境界》シリーズ

 

⇩《境界》からⅢ 1995-1996年

↑阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件などが起こり日本社会が大きな変動を迎えた時代に、戸谷は社会と人間の双方向的な関係の「境界」に「彫刻」が存在するのではないかと考える。山津波に襲われた日本家屋のイメージで制作された作品。

 

⇩《地震 Ⅲ-a》1991年

 

 

下矢印戸谷成雄は2000年頃に「ミニマルバロック」という造語を生み出す。

造形的な要素を極限まで還元する「ミニマリズム」と、複雑で躍動感のある造形を特徴とする「バロック」という一見すると相反する概念を同居させた様式で、自己と他者、内部と外部、日本と西欧など異なる概念を捉えた作品表現になる。

 

2000年頃にかけて「ミニマルバロック」「洞穴体」シリーズを制作する。

 

⇩《双影体Ⅱ》2001年 愛知県美術館

↑中央を起点に鏡像的に造形が構築されている。

 

下矢印2階から見下ろした地下1階 センター・ホールに、”洞穴体Ⅴ”。

 

 

⇩《洞穴体Ⅴ》2011年

↑「洞穴体」シリーズは、表と裏、内側と外側は絶えず入れ替わるといる概念。

 

 

私自身、”戸谷成雄”氏を存じ上げなくて、先日”東京都現代美術館”に行った時、図録を見つけ、これ実際見てみたい!と思って見に行った展覧会。

想像していた以上に壮大で、圧倒される存在感のある作品でした。

 

これからもどこかで”戸谷成雄”氏の作品があればぜひ見たい恋の矢と思いますニコニコ

 

この展覧会は、作家の出身地である長野県と制作拠点の埼玉県での、県立美術館による共同開催(すでに会期終了しています)。

 

 

合格「埼玉県立近代美術館」で常設されている彫刻です。

《洞穴体Ⅴ》の周りには↓

右上:《マグダラのマリア》1973-76 ヴェナンツォ・クロチェッティ

左下:《枢機卿》1979 ジャコモ・マンズー

右下:《ダミアン神父像》1975 船越保武

 

 

ぐるっとパスのみで入館。

こちらの埼玉県立近代美術館には、たまにしか行きませんが、今度行った時は、美術館の建物や屋外作品もゆっくり見てみたいと思います。

 

(2023/5 撮影)