【SOMPO美術館】
ブルターニュの光と風
画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉
会期:2023.03.25 (土)- 06.11 (日)
”国立西洋美術館”でも”ブルターニュ展”が開催中~
こちらもねって気になるので、行ってきました
フランス北西部の地、ブルターニュ。豊かな自然と独自の文化を持つことで知られ、この地の歴史や風景、風俗を、ブルターニュに魅了された画家たちが描いた作品です。
ブルターニュに関する作品を多数所蔵するカンペール美術館の作品を中心に、45作家による約70点が並んでいます。
↓ブルターニュの位置
※画像は撮影作品やチラシから。作品内容は公式HPなどを参考にしています。
第1章
ブルターニュの風景-豊饒な海と大地
《ベル=イル沿岸の暴風雨》1851年 カンペール美術館
テオドール・ギュダン
⇧ブルターニュ半島沿岸に浮かぶ島ベル=イル(「美しい島」の意)の周囲を囲む岩場に、波が打ちつけ飛沫をあげている画。青白く広がる雲間から差すオレンジ色の光が印象的です。
この暴風雨の情景には、荒々しい自然に対する人間の畏怖の念が映し出されている作品。
《さらば!》1892年 カンペール美術館
アルフレッド・ギユ
⇧嵐に遭遇した一艘の漁船に乗った父子の別れの場面。転覆した船体にしがみつき、激しい波と格闘しながら海の犠牲になった我が子を抱きかかえる父親が、その額に最後の口づけをしている。
1892年のサロンで国家買上げになるなど、高い評価を得たギュの代表作なのだそうです。義弟のデイロールとともに、コンカルノーで中心的存在だった画家。
この作品見たとき、最初、男女かと思った私
《鯖漁》1881年 カンペール美術館
デオフィル・デイロール
⇧波に揺られる漁船の上で、漁師たちが一心に鯖を捕る場面。日没前の太陽が放つオレンジ色の光も
”アルフレッド・ギユ”の義弟。コンカルノーに滞在し活動拠点とした。カンペール美術館やホテル内部の壁画制作も手がけている。
《コンカルノー鰯加工場で働く娘たち》1896年頃 カンペール美術館
アルフレッド・ギユ
⇧工場で働く娘たちの帰り道、気を引こうと鰯でいっぱいの籠を差し出した二人の若い船乗りとの出会いの一場面。笑顔の娘たちが楽しそうです
《さらば!》を描いた画家のブルターニュの港町の日常風景です。
《コンカルノーのブルターニュの引馬》1883年 カンペール美術館
エミール・ヴェルニエ
⇧暗雲が垂れ込めるなか、一人の男が海藻を積んだ荷車を馬に引かせている。リトグラフによる模写を通じてギュスターヴ・クールベのレアリスムを学んだ画家らしいです。
《サン=タンヌの荒地》1878年頃 カンペール美術館
カミーユ・ベルニエ
⇧自然を描くことに関心があった画家の絵は、樫の木陰で休息する馬や、日向で横たわる羊飼いの存在は控えめ。
《狩猟の帰途、またはブルターニュの密猟者》1861年頃 カンペール美術館
エヴァリスト=ヴィタル・リュミネ
⇧草むらの隙間から向こうの様子を伺う男と、その足元で身を低くする男。二人の密猟者がその帰り道、密漁監視人の眼を逃れようと息を潜めている様は、緊迫した空気が伝わる。
《ブルターニュ女性の肖像》1896年 カンペール美術館
ポール=モーリス・デュトワ
⇧肖像画で高い評価を得た画家。
《ブルターニュの室内風景》1870年 カンペール美術館
ジャン=マリー=ヴィラール
⇧農家の内部を描いた風俗画は珍しい。あまり裕福な家庭の雰囲気ではない様子。
キャプション読むまで、少女の後ろの暖炉の前に老婆がいることに気づかなかったです。く、暗い、、
《ブルターニュの婚礼》1863年 カンペール美術館
アドルフ・ルルー
⇧生涯にわたってブルターニュをテーマに制作を続けた画家。市場・結婚式・巷の喧嘩など人々の日常生活の描写を得意とし、この作品は、フランス国家の注文により描かれたもの。藁葺き屋根が連なる農村で、手を取り合い伝統的な踊りを披露する男女や音楽隊、祝いの場の躍動的な雰囲気を感じる作品。
《パンマールの聖母》1896年 カンペール美術館
リュシアン・レヴィ=デュルメール
⇧陶器の絵付けの仕事のかたわら、ラファエル・コランのもとで学んだ画家。パンマールの岬を望むサン=ゲノレの浜を背景に、ビグダン地方の伝統衣装に身を包んだ聖母子が描かれている。伝統的な聖母子像にブルターニュの敬虔深さが重ね合わされた印象深い作品。
木製の額縁に施された彫りは、ブルターニュ地方の家具にみられる伝統的モティーフに通じるものだそうです。
このエリアは、はじめましての作家さんばかりでした。
海を臨む岬の絶景、岩に打ち付ける荒々しい波の光景や、厳しい自然と共に生き、逞しく生きる人たちの姿は、とても印象に残りました
第2章
ブルターニュに集う画家たち-印象派からナビ派へ
《ノルマンディーの⾵景》1854-57年 丸沼芸術の森(埼⽟県⽴近代美術館に寄託)
ウジェーヌ・ブーダン
⇧ブーダンは早くから戸外での制作に取り組んでおり、1858年にモネと出会い戸外での制作に誘っている。その後の印象風の画家たちに影響を与え、”空の描写”が特徴的な画家。
《ルエルの眺め》1858年 丸沼芸術の森(埼⽟県⽴近代美術館に寄託)
クロード・モネ
⇧ブーダンから戸外制作の重要性を教わったクロード・モネが画業の最初期に描いた油彩画。
空間や水面の描きは、後のモネの画風の予感!?中央には人物も。。
この2点、とても似ています!
《教会前のブルターニュ⼥性》19世紀 カンペール美術館
ウジェーヌ・ブーダン
⇧こちらもブーダンの作品。生涯に何度も訪れたブルターニュで描かれた素描。鉛筆の上に水彩。
《ブルターニュの⼦供》1889年 福島県⽴美術館
ポール・ゴーギャン
⇧右側にブルターニュの伝統衣装を着た二人の子供、左側には靴を履こうとしている人物が描かれている。ゴーギャンは、タヒチへ旅立つ直前の1889年から1890年のあいだにブルターニュの風俗をよく描いている。
国立西洋美術館の『1889年《海辺に立つブルターニュの少女たち》』と同じ頃ですね!
《いちじくと⼥》1894年 カンペール美術館
ポール・ゴーギャン
⇧テーブルの上のいちじくは、ゴーギャンの作品に時々見られる。性的な意味合いを仄めかすものでもあるそう。
《サン=ブリアックの⾵景》1886年 カンペール美術館
エミール・ベルナール
⇧当時18歳のベルナールの鉛筆画。遠方に建物がある田園風景。
《水瓶を持つブルターニュの女性》1886年 カンペール美術館
エミール・ベルナール
⇧平坦で単純な色彩。ブルターニュの女性の日常を捉えた作品。
《⽔瓶を持つブルターニュの若い⼥性》1892年 カンペール美術館
ポール・セリュジエ
⇧人々の素朴な日常生活に関心があったポール・セリュジエ。岩の間に隠れる泉に水を汲みにきた女性が、大きな水瓶を手に、何度も往復する日常。ふとこちらを見た瞬間の絵。女性の前掛けの花柄模様は、日本の浮世絵の影響!?
《さようなら、ゴーギャン》1906年 カンペール美術館
ポール・セリュジエ
⇧師であり友人であったゴーギャンの旅立ちに立ち会う場面。遠くの海を指さしこれからタヒチへ向かうことを告げている。一方、セリュジエは腰を下ろし、ブルターニュに残ることを表している。
《フォルグェットのパルドン祭》1930年 カンペール美術館
モーリス・ドニ
⇧ドニは、セリュジエとの出会いをきっかけにナビ派に参加。熱心なカトリック信者であったドニは、何千人もの巡礼者が訪れるフォルグェットのパルドン祭に関心を持ち、毎年のように通う。ミサの一場面を描いた作品。中央の聖母子像に口づけをする人々。表情がないことが、より一層敬虔な信仰心を感じさせる。
《ポン=タヴァンの風景》1888-89年頃 カンペール美術館
アンリ・モレ
⇧ブルターニュらしい風景家々の屋根がのぞく草地で牛がゆったりと草を食べている牧歌的な光景。
ゴーギャン、ベルナールなどと親交を深める。
第3章
新たな眼差し-多様な表現の探究
《藁ぶき屋根の家のある風景》1921年 カンペール美術館
フェルディナン・ロワイアン・デュ・ピュイゴドー
⇧画家が好んだラ・プリエールやゲランド半島の風景なのか、帆船が浮かぶ眺め。日の出か日没かの明るい光に満ちたこの作品は、とても素敵でした
展覧会の作品が全体的に”暗めな色”が多かった中で、ひときわ目立つ作品でした
《ブルターニュの海》1900年 カンペール美術館
アンリ・ジャン・ギヨーム・マルタン
⇧トゥールーズの生まれ。トゥールーズ市庁舎や大学などの壁画装飾を手掛けたことで知られる画家マルタン。
この正方形の画面を対角線で分割するような構図は面白い。
《ブルターニュの岩⽯海岸》1886年 カンペール美術館
クロード=エミール・シュフネッケル
⇧画家がブルターニュを描いた数少ない作例の一つ。印象派のような、直感的な光の表現と、新印象派の規則的な点描表現との間で揺れ動いた時期に描かれたものだそう。
《⽔の⼊ったグラスとりんごのある静物》1904年頃 カンペール美術館
ウラディスラウ・スレヴィンスキー
⇧ゴーギャンやポン=ダヴァン派の影響を受けているものが多く、この静物画においても、果物や食器、テーブルクロスの輪郭は黒く明瞭な線で強調されている。
《嵐から逃げる漁師たち》1903年頃 カンペール美術館
シャルル・コッテ
⇧怪しい雲行きから嵐の到来を察知した漁師たちが舟を引き上げ帰路につく様子。
ちょ~っと暗い、、かなあ~。でも赤色の帆がアクセントに。
《じゃがいもの収穫》1907年 カンペール美術館
リュシアン・シモン
⇧シャルル・コッテと出会い、画風から影響を受ける。マネや印象派からの影響も。シモンの代表的な傑作のひとつ。
日常的に風雨にさらされ、決して肥えているとはいえない土地で、人々がじゃがいもを堀り、袋に詰め、運搬するという収穫の諸段階が一つの画面に描かれている。後ろの地平線には、白い教会や建物も描かれている。
《ラニュロンの松の⽊》1917年 カンペール美術館
アンドレ・ドーシェ
⇧ドーシェはオデ川流域の景観を好み、河川に生える松の木立や白い岩、遠くに雲を描く。このはっきりした輪郭線で描いたこの作品は、とても好きでした
マックス・ジャコブ
⇧二人の女性は、フエナン村の特徴を示すコワフを頭に頂き、正面で堂々とこちらを見据えている。郷土のアイデンティティーの誇示と。
《コンカルノーの港》1927年 カンペール美術館
ピエール・ド・ブレ
⇧マックス・ジャコブと親交があり、パリを行き来する中で、パブロ・ピカソらが集まったモンマルトルのアトリエ”洗濯船”に通う。
《コンカルノーの港》というタイトル作品が2点ありましたが、港町で働く漁師たちの姿には、粗野で無骨に迫ると同時に、彼らに対する敬意が示されている。
↓の作品も、同じ画家のもの。特定の画派に属さなかったとはいえ、ピカソっぽいと思った作品でした。
《ブルターニュの女性》1940年 カンペール美術館
ピエール・ド・ブレ
⇧ブルターニュの伝統衣装姿で佇む女性と港。はっきりとした輪郭線と規則的な形や色調で描かれ、配色とグラデーションを意識している作品。
国立西洋美術館の”ブルターニュ展”で見た、シモンやコッテなど、同じ画家の作品も見ることができて良かったです。
そして、ブルターニュの海岸線のごつごつした岩場と海は、どの画家も描きたくなるのでしょうか。制作年をみると、同時代、色々な画家が顔を合わせ、同じ景色をみていたのかなぁと想像しました
派手さはないものの、私の好みの作品は、”SOMPO美術館”にたくさんあったかも
ブルターニュの風景や日常を、より感じた作品が多くあった気がします。
こちらの展覧会にも、行ってよかったです。
(2023/4 撮影)
↓国立西洋美術館の”ブルターニュ展”の投稿。ご興味あれば
巡回展
「ブルターニュの光と風」
〇福島県〖福島県立美術館〗
2023年7月1日(土)〜8月27日(日)
〇静岡県〖静岡市美術館〗
2023年9月5日(火)〜10月22日(日)
〇愛知県〖豊橋市美術博物館〗
2024年3月1日(金)〜4月7日(日)