よろよろよろけながら、やっとの思いで救急車にたどり着いた。



次男は頭を車体の後ろに向けて寝かせられた。



私と長男は後部座席に座るように指示された。



救急車に乗るのは生まれて初めてだった。



次男の顔はすぐ側に見えた。



私は長男に持たせた、借りた携帯と衣類を受け取り



すぐに次男の上半身に衣類を掛けた。



隊員の1人が次男に意識確認を始めた。



『名前言える?』



隊員が呼び掛けた!



次男はわずかに口を開くと自分の名前3文字を



ひと文字ずつ、ゆっくりとかすかに応えた。



  『○ ○ ○』



目は閉じている。


顔は真っ白だ!



隊員は、血圧も脈も体温も測らない。



季節は冬だ!



毛布も掛けてくれない。



運転席では、受け入れ先の病院病院に連絡を入れ始めた。



ここから車で5分程で大きな総合病院がある。



一番目。
そこに着信してすぐ決まったようだ。



なんだかテレビで見るのと全く違う![しょぼん]



何をしているのか3人共
の~んびりしている。



タバコでも吹かし始めそうな車内の雰囲気だ!



長男は無言できちんと座ったままだ。



この子はいつでも
まったくパーがかからない。


隊員は各々何をしているのか解らない?



私は、運転席の左側の上にかかっている
丸い時計を何度か確認していた。



もう20分近く経過した…。

私は苛立っていた!
(何で早く運ばないのビックリマーク)


ようやく発車した。


発車するとすぐ着いた。



なんだか、あまりの緊張感がない救急車で呆れた…



テレビドラマと違うダウン



病院病院の緊急搬送口に着くと

ようやく
ストレッチャーで運ばれた。



隊員は1人だけ押して中に入った。



緊急搬送口から数メートルの場所に処置室があった。


すぐ前に長椅子が並んでいたので長男を処置室の真ん前に座らせると



私は処置室の中に入った。


さっきの救急隊員の



『おじさん』はすぐ帰らず私の横に立っていた。



白衣の20代か30代前半の若く細い医師と


緑色の半袖の熟年の医師がいた。



次男はストレッチャーから処置ベッドに移されていた。



熟年医師が丸椅子に座ったとたんに、ぶっ太い注射器で



次男の頭から血を取りながら



『どっから落ちたの!?
コンクリート!!』



『いえ、公園の滑り台ですから土です!』



注射器にはどす黒い血がみるみる次男の頭から吸出されて


すぐに半分位に達し始めている。



『落ちた時の状況を教えてください?』


今度は若い医師に聞かれた!!



見ていないから戸惑った!


『あの、その・・・・』


そして、熟年の医師が


『何時間遊んでたの?
こんなに冷たくなって!!!』


返す言葉が見つからない[ガーン]



レントゲンに行くようだ!


一旦廊下に出てみると



開けっぱなしの処置の真ん前に座っていた



長男をみると、声を出さずに大粒の涙を流して泣いていた。


鼻水でぐしょぐしょになっていた。



私はまた
処置室に入ってティッシュをもらい


長男に鼻をかむようにそっと渡した。



『おじさん』は、棒のようにその場所に突っ立っていた。




つづくダウン




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