田舎を象徴する言葉の一つが「しがらみ」です。「しがらみ」とはなんだろう。「しがらみ」を漢字で書けば「柵」。

つまりそれは、垣根とかフェンスのような仕切りであり、一定の空間を囲んだ壁のようなものが「しがらみ」の物理的イメージだと思います。その空間に住む者には、関係絶ち難く引きずって、自分の内面に働く心理作用があります。これが「しがらみ」なのだろうと思います。

農村集落などは、まさに、しがらみ社会です。それは閉鎖的で相互監視的な前時代的空間です。目立った個人行動が許されない集団、旧態依然の因習や掟に縛られ、自己目的化した社会です。

 

だいたい否定的イメージで語られるしがらみ社会ですが、良い面だってあります。その窮屈なしきたりに適合して暮らせば、たぶん居心地はわるくないと思います。たとえば昔ながらの農村集落には、平等とか、落ちこぼれを作らない、全体が身内のような雰囲気があるし、相互監視ではありますが、相互扶助だとも言えます。

 

かつて、そうした集落では、昨今問題となっている介護とか子育てに関する悩みを、あまり聞かなかったように感じます。集落全体で助け合っていたのかもしれません。でも最近では聞くようになりました。しがらみ社会の長所が退化したすれば残念なことです。 (30.3.17)