母という呪縛 娘という牢獄【読書感想】 | 気張りなはれや!!

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すぴりちゅある初心者の日記です
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皆さま、お元気ですか?

 

昨日から今日にかけて、

『母という呪縛、娘と言う牢獄』

という本を読みました。

 

かなり前に、

TOKYO MX『五時に夢中』

で、中瀬ゆかりさんが紹介していた本です。

図書館に予約し、やっと順番が回ってきて、読むことができました。

 

長文になりますが、興味がある方はお付き合いください。

 

齊藤彩著

母という呪縛 娘という牢獄

 
 

 

この本は、2018年に起こった

『滋賀医科大学生母親殺害事件』

を追ったノンフィクションです。

 

娘を医者にするという目的にまい進する母。

娘も幼い頃は、手塚治虫の『ブラックジャック』を読んで、医師になることに憧れていた。

しかし成長するにつれ、自分の成績では医学部医学科入学は無理だと気付き始める。

それでも、諦められない母の願いに寄り添おうと、娘は9年間浪人生活を続ける。

 

父は、仕事を理由に、口うるさい妻から逃げるように別居をしており、頼ることができない。

母と娘の二人きりの家で、地獄の浪人生活が続く。

 

しかしとうとう母から、「看護学科で手を打ってやる」と言う言葉が出た。

「お前は医者になれないクズだから看護師で許してやる」

というもの。

「時間を無駄にした」

「母の貴重な時間を返せ」

等の叱責を受け、娘は看護学科を目指すこととなる。

なぜか、看護学科に進み助産師になることを条件として。

 

医学科を目指して勉強してきた娘は、看護学科には一発で合格する。

もっと早く医者を諦めて看護学科に進路を変えていれば、こんな不幸は起こらなかったのだが、母にしてみると、

「医学科合格は、きちんと努力すればできるはずのこと。母はそうやって人生を切り開いてきた。

だから娘は進路を変えるのではなく、もっと努力するべきなのだ。」

という理屈があったらしい。

 

そんな母娘だったが、看護学科に入学し、助産師選抜に落ちるまでは、仲の良い濃密な時間を過ごした。

娘は自分をサポートしてくれた母を労わるため、様々なところに二人で旅行し、精一杯母に寄り添った。

 

しかし、助産師選抜に落ちた後、だんだんと母の様子が変わっていく。

看護学科の助産師選抜に落ちた後、娘は自らに芽生えた「手術室看護師になりたい」という希望がありながら、母の希望する助産師専門学校への受験に進むことになる。

 

が、助産師学校の模試でD判定を受けてしまう。

ここでも激しい叱責を受ける。

「ただの看護師にしかなれんクズ娘と嬉しがって出歩いていた自分が恥ずかしい」

この母の言葉に、母を想い娘として寄り添ってきた自分は、母にとっては、助産師にならない限りは娘ではないのだと絶望する。

 

20代の頃ならまだ受け流して耐えられた。

でも、もう耐えられそうにない。

娘は母の存在をこの世から消すことを決意する。

 

感想

途中、母の言葉の一つ一つが強すぎて、読むのが辛くなりました。

自分を正当化し、巧みに娘を悪者にする言葉の数々。

時には始末書、反省文を書かせ、土下座をさせる。

娘は母から自立しようと何回か家出するが、そのたびに探偵を使って連れ戻される。

 

普通の娘だったらとっくに耐えられなくなる母娘関係。

しかしこの娘は、あくまでも母の要望を聞き、できるかぎり寄り添おうとする。

ただし、聞いた要望をすべて飲み込むのではなく、母と対話をしようとする印象を感じました。

この娘は優しいのだろうか?

優しいとはちょっと違う気がする。

「母はこういう人間なのだ」

と受け入れて、自分のできる範囲で母を満足させる道を模索していたような気がする。

ただ、それは「優しい」ではないかな。

 

対して母の方は、自分の考えが一番で、正しくて、それ以外は受け入れられない。

読んでいて、この母の人間性をもっと知りたいと思いました。

何かしらの精神疾患があったのでは・・・。

ただ、この母の様子では、自分に問題があることを認めさせることはできない気がしましたが。

う~ん、唯一それができたのが娘だったかもしれないですね。

母を受け入れず、ぶつかり続けたら、その果てに絶縁となったとしても、お互い自分の人生を見つめることができたかも。

とは言え、子供にとって母という存在は大きく、第三者からはそう思えるけど、実際にはなかなかできないことなのだろうと思います。

 

母に何かしらの精神疾患が・・・ということを書きましたが、娘にも違和感を感じました。

殺人が発覚した後の取り調べの過程で、どうも、娘に強い感情が感じられなかった。

恨みつらみ、恐怖、不安・・・そんな感情が出てきそうなのだけど、この本に書かれている内容を読む限り、常に冷静であった気がした。

この、強い感情が出てこない感じが、母の態度を冗長させたのかもしれない・・・そんな風に思いました。

 

最後に父親だが、逮捕されてから現在にいたるまで娘を手厚くサポートし、将来出所したあとも受け入れる意向を示している。

娘は父に

「なんでお父さんはずっと私を支えてくれているの?」

と聞いた。

父は

「家族だから」

と答える。

 

医者になれそうな娘だから支えるという母と、家族だから無条件で支えるという父。

娘は初めて無条件の親の愛情というものを感じたのかもしれないです。

とは言え、第三者から見れば、もっと早く母娘関係に父が介入し支えるという選択ができていたら・・・と思うのですが・・・

 

最後に娘は父に救われ、捜査関係者や裁判官に自分の苦しみを理解されたことで癒され、最初は否認していた母の殺害を認める。

強い感情をが湧きにくいように見える娘は、母と言う存在から切り離され、また母のように明確な意図をもって自分をコントロールしようとする存在と接触しなければ、普通に幸せに暮らしていけるような気がします。

刑を全うし出所したら、自分の道を歩いて欲しいと思います。

 

この本の読み始めから中盤は、母の叱責が私にも向けられているような気がして、読んでいて胸が苦しかった。

しかし読み進めるうちに、将来を考えて自立しようとするなど、娘のバタリティーも見えてきて、どんどん引き込まれていきました。

逮捕された後の娘は、母との関係性を見つめなおすということはしていないと思うのですが、母と言う牢獄から解き放たれ、心も体も自由になったら、母との関係を見つめなおすときが来るかもしれない。

その時彼女はどんなことを想うのか、聞いてみたい気がしました。

 

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