「ペットから家族へ」

現在におけるヒトとペットの関係は家族的関係へと変わってきている。最近では自分のペットに服を着させ、「○○ちゃん服着ようね」「○○ちゃんご飯だよ」とかまさに自分の子のように位置に置いている。名前を呼ばれ、服を着、ご飯を食べるまさに人間的な生活をペットは主人と共に過ごすそんな社会が現在浸透してきている。

私たちは社会におけるペットの位置づけ、現代の家族の在り方について考えなければならない。

近年における日本のペット産業の勢いは年々増加傾向にある。経済産業省の「ペット産業の動向 -コロナ禍でも堅調なペット関連産業-」[1]のデータを見れば2015年から2021年にかけて約400億増加した。この要因の一つとして新型コロナウイルスによる影響が大きく、家にいる時間が長くなり、いわゆる巣ごもり需要による、ペットブームになっている。ではなぜこのような現象が起きているのだろうか。コロナウイルスにより人々の出会い、絆、関係性が希薄になっていた。我々は急速な生活の変化に巻き込まれたのだ。人々の関係性が希薄になり、心身ともに疲労を感じていた。我々に必要なのはぽっかりと空いた孤独を埋めるものだったのである。また、わが国の未婚率は年々上がってきている、また家族がいても「心の拠り所になる」とは限らない。

しかしながら、このような孤独を埋め、心の拠り所を求めてペットを飼う人が増えてきているのである。私の友人に「ペットを飼う目的は何なの。」と聞いたところ、彼女は「そりゃあ、いっしょにいて楽しいし、なんといっても癒されるからだよ。もう結婚なんて考えてないよ。」と答えてくれた。彼女は30代後半であるが、未婚宣言をしているが、実際に彼女のように未婚宣言をする人は男性•女性ともに増えてきている。2020年国勢調査の人口等基本集計の結果では生涯未婚率(50歳時未婚率)は男25.7%、女16.4%という結果になっている。昔からペットを飼うと結婚できないと噂話を聞くが、彼女のようにペットを家族のような位置づけにおく、いわゆるコンパニオンアニマル companion animal(伴侶動物)の考えがある。

コンパニオンアニマルとは1985年頃、欧米を中心に動物愛護に関する考えが広まった頃である。長い間いっしょに暮らしてきた動物を,伴侶や家族,友だちと同じように位置づける意味で,伴侶動物とも訳される。社会環境の変化に伴って,動物が愛玩の対象としてだけでなく,人間と対等な交友関係を結べる存在,人間の精神活動や社会生活に深くかかわる存在としてその意義や価値,役割が見直されてきているのだ。(出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)

 

最近ではペットの火葬・葬儀・霊園などのサービスが提供されており、ヒト、家族の一員としての位置づけに置かれている。さらにはペットと一緒にお墓に入る人もいるのだ。テレビの取材である女性が「いつも忘れていないから。一年間一年間区切りで来ています。毎年家族を供養するのと一緒で命日はちゃんとする。」とコメントをしているように、もうただ単なるペットとしての愛玩動物ではなく「家族」として受け入れられている。我々の埋葬行為は人間だけではなくペットにも適用されることがこのことからわかる。

ペットは家族として認められるのか。「動物の法的地位[2]」を書いた山﨑将文によれば「わが国の刑法では、他人の所有する財物である動物を殺傷した場合、器物損壊 罪(261条)が適用される。しかし、261条は『他人の物を損壊し、又は傷害した者』 と定め、わざわざ『傷害』という文言を入れている。これは動物のためであり、 それで後段部分は『動物傷害罪』と呼ばれることもあり3、動物を単なる『物』と は別扱いしている。また、1999年に大幅に改正された、特別刑法でもある『動物愛護管理法』1条 では、動物を愛護するのは、人間の側の『動物を愛護する気風』の招来や『生命 尊重、友愛及び平和の情操の涵養』のためだとされていたのが、2012年の改正に よって、『人と動物の共生する社会の実現』が最終的な目的であるとされた。『人 間のためだけの法律であった動物愛護法が、2012年の改正によって、人間と動物のための法律になった』4 といえる。 また、1994年のフランス刑法典では、動物に対する虐待が、『人に対する罪』、 『財産に対する罪』、『国家・公安に対する罪』のいずれでもない、『その他の罪』 に入れられ、しかも『ヒト胚の保護に関する罪』等と同じ編に入れられたことか ら、動物が『人』と『財産(物)』とは区別され、『ヒト』に近づいていることが 見て取れる。」と述べている。

彼の言うとりもはやペットはヒトの財産ではなくヒトに近づいているのである。

しかし、ペットがヒトとしての位置につくことはないだろう。ペットが犯罪を起こせばだれの責任になるのだろうか。飼い主の責任として処理されるがこれにおける問いは一人の個人として問題に問われるだろう。ペットは家族として認められるがその位置はわからないという矛盾が発生するのだ。

注釈

1資料:商業動態統計(経済産業省)

2「動物の法的地位―憲法の観点からの考察を含めて―」 九州法学会会報2019 九州法学会 21-24 (単著)

3 井田良・佐藤拓磨『刑法各論〔第3版〕』2017年、9頁。

4 東京弁護士会公害・環境特別委員会編『動物愛護法入門』2016年、11頁。

参考文献

疑似家族化するペット 村田裕之

家族化するペット 山田昌弘

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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典