6月15日生まれ ニコラ・プッサン

この世とあの世の境目を生きる人

 

みなさんは、『アルカディアの牧人』という絵画をご存じでしょうか?

ルーヴル美術館に所蔵されている、17世紀に生きたフランス人画家、ニコラ・プッサンが描いた絵です。

「アルカディア」はギリシャのペロポネソス半島にある場所で、当時「地上の楽園」とみなされていました。絵は、牧歌的な風景の中で、人々が石碑の碑文を指さしている絵です。

その碑文にはラテン語で「Et in Arcadia ego(我、アルカディアにもあり)」と書かれています。この碑文の文字から、この絵は「我アルカディアにもあり(アルカディアの牧人)」と呼ばれるようになりました。

「我」は何を指すのか諸説あるところですが、「死」を表しているという説が有力です。

当時「メメント・モリ(死を想え)」と「死」をテーマに扱った作品が大流行していたからです。

1347年にヨーロッパを襲ったペストは、大規模なパンデミックとなり、ヨーロッパの人口の三分の一の人々の命を奪いました。そしてその流行は何度も繰り返されました。

当時の人々は今の我々よりも「死」を日常に感じていたでしょう。

この世の楽園と「死」という対照的なものを対比させ、

この世の楽園とされるアルカディアにも「死」はあると、「死」というものの圧倒的な存在感を古典的な上品なタッチで描いています。

わたしの大好きな絵の一つです。

 

この絵の作者ニコラ・プッサンは、17世紀に生きたフランスの画家でした。30歳を目前にローマで暮らすようになります。彼の画家としての名声が広まると、ルイ13世によってフランスに呼び戻されますが、2年の滞在の後またローマへ帰っていきました。生涯の後半の大半をローマでルネサンス芸術に囲まれて生きた彼は、当時流行したバロック的な絵ではなく、古典的で端正な絵を描きました。

 

ニコラ・プッサンの命式をみてみましょう。

 

ニコラ・プッサン 1594年6月15日生まれ

 

  干支 蔵干  通変星 12運

年 甲午 丙 劫財 傷官 長生

月 庚午 丙 正官 傷官 長生

日 乙亥 甲    劫財 

 

乙亥」生まれの方です。

真冬の寒さに耐えて咲く可憐で健気な草花。

「乙」の人は、人にあわせる柔軟さと自分を貫く頑固さの矛盾する二つの性格をもつ人です。

可憐に路傍に咲く花のように、人を和ませる癒やし系の魅力をもち、周りの人々と協調してやっていこうとします。

しかし、内面には譲れない強い意志をもっていて、

蔓草のように頑固にしぶとく我慢強く耐える面があります。

」は冬のはじまりの季節。「」は草花。

冬の逆境を強く生きる人、それが「乙亥」さんです。

また、「亥=水」は「乙=木」を生じることから、「乙」の中でも自分を曲げない強さをもっています。

ニコラ・プッサンの場合、蔵干に中気「甲」がでます。

「乙」にとって「甲」は「劫財」にあたり、人当たりはいいけど非常に強い自我をもつ人です。

 

また、12運は「」になります。

12運は人の一生のサイクルを表しており、「死」は人がこの世と、あの世の境目に立つ時を表します。

「死」の瞬間、人はこの世とあの世の両方を体感するといわれ、「死」をもつ人もとてもスピリチュアルな、精神世界を生きる人です。

「死」のエネルギー値は「2」です。エネルギー値が低い人は、現世で社会にうって出て、立身出世に邁進、自分を押し出すというよりも、自分の内の精神世界に引きこもり、自分の世界を充実させようとする人です。

彼の作品が哲学的なのはそういう彼の志向によるものかもしれません。

境目に生きる精神、「死」をもつ人は、「区切り」や「境目」を見極めたいという強い気持ちをもつ人で、突き詰めてものを考えるストイックさが特徴です。

ストイックさにおいては12運一と言われます。

「死」をもつ人の成功の秘訣は決してあきらめないストイックさと言えるでしょう。

 

12運から見ると内向き人間なのですが、彼は、日柱の蔵干が「劫財」ですし、命式の年柱にも「劫財」があります。

「劫財」は自我の星なので、たおやかに見えて、しっかりしたバックボーンをもち、自分を貫く面があったでしょう。

なので国王に呼び戻されても、ローマに帰り(彼にとってはローマこそが「我が家」だったのでは)、晩年をローマで過ごし、ローマで死去しています。

 

彼の命式の特徴は、「傷官」が命式に二つもあるところです。

傷官」は優れた芸術的センスをもち、頭脳明晰で、

手先が器用なところが特徴です。精緻で端正で古典的な彼の絵の技術は2つの「傷官」の働きによるものかもしれません。

 

 

「メメント・モリ」という概念は、「死」があるからこそ「今」を大切に生きよという意味で使われることが多いです。

同様の意味をもつ言葉に「seise the day」という言葉があります。

紀元前1世紀の古代ローマの詩人ホラティウスの詩に登場する「Carpe diem カルペ・ディエム」という言葉がもとに成っています。「Carpe」は「(花などを)摘む」で「diem」は「一日」直接の意味は「一日の花を摘め」「一日を摘め」という意味です。つまり「今を生きよ」という意味。

 

大正時代の流行歌にも「命短し恋せよ乙女」というのがありますが、人生の黄昏時に立つ今、私自身、そのことを強く想います。

 

人が生きる時は、限られています。

そんな短い人生を、「人が自分をどう思うか」に煩わされて生きるのは愚かなことです。

無責任なまわりの言葉や、バッシングに耳をかさず、自分が信じる道を生きればそれでいいのです。