宝塚歌劇団の発表について

昨年の9月に劇団員の方が自殺した件で、阪急阪神ホールディングスと遺族側の合意が成ったようです。

 

宝塚歌劇のホームページに「宝塚歌劇団宙組劇団員の逝去に関するご遺族との合意書締結のご報告並びに再発防止に向けた取組について」というニュースがアップされました。

 

今日は四柱推命というテーマから多少ずれますが、宝塚歌劇団の問題について少し考察したいと思います。

 

 

時代遅れの長時間労働などや、経営陣の怠慢を謝罪する文章を開示されています。

労災認定基準では、鬱病などの精神疾患の発症直前一ヶ月におおむね160時間以上、または、直前3週間におおむね120時間以上の時間外労働が認められれば、その事実だけで労災認定されます。

休み無しとしても一日5時間以上の残業なので相当です。

普通に考えて、長時間拘束され残業させられると、それだけで精神状態に問題がおこるのだと思います。

私もかつては、毎日終電に駆け込むような勤務をしたことがあり、その時に精神のバランスを崩しました。心ではなにも感じていないのに、なぜか涙がどっと流れたりして我ながら驚きました。会社に紹介してもらった神経科の先生に脳が異常に緊張しているといわれ、会社を辞めてゆっくりしたら治るよといってもらい、速攻で退社しました。もう30年以上も前の話です。当時は、そんな会社がごろごろありました。

 

宝塚歌劇団は、いまでは完全にアウトな時代遅れの教育や労働環境が伝統の名のもとに受け継がれてきている組織なのだと思います。

 

 

わたしは宝塚歌劇が好きで時々観劇もするライトファンです。

宝塚スカイステージという有料放送も受信していたこともあります。

そこで語られる生徒さんたちのお話をきくと、「消灯されて真っ暗ななか練習しました」とか普通におっしゃるわけですよ。

「先生」と呼ばれる演出家から滅茶苦茶しごかれた話とか。

30年くらい前の企業や、スポ根ドラマを見るような感じです。

でもそういった話を嬉々としてお話されるのですね。

皆さん、もう、それこそ、「宝塚に人生懸けてます!」といったような方々なのです。

娘役さんたちは、劇団から支給されない鬘やアクセサリーなどご自分で用意されます。徹夜でアクセサリーをつくられた話など何度も聞きました。

人から強制されるのではなく、ご自分で拘りをもってされている感じでした。

 

たとえ長時間労働であっても、自らすすんでするのと、強制されるのでは大きく異なります。

宝塚の生徒さんは自らすすんで、人生懸けてされていらっしゃる方がとても多い印象です。そして、それ故あのような素晴らしい舞台が出来ている・・・

しかし、トップスターや主要な娘役さんと一般の生徒さん達では立場が違います。

下級生の生徒さんたちは、滅私奉公みたいに、そこまでのめり込めないと思います。

 

上級生の方々は、下級生の人たちの立場を考えながら指導する必要があったのでしょう。でも、彼女らは音楽学校時代から上級生は絶対と教えられてきたのです。

そういう教育をしてきた音楽学校や、劇団の体制に問題があったことはあきらかでしょう。

 

それに、これまでは、仕事の場では厳しい指導をしても、飲み会や組旅行などで、余興にこうじる時は、無礼講で、そのようなことを通して信頼関係や人間関係を構築できていたのが、コロナ下でそういうことができなくなったこともこのような悲しい事件が起こった背景にはあると思います。

 

 

今回パワハラをしたとされる上級生も、加害者であると同時に被害者でもあります。宝塚はとても特殊な世界で、外部から「スカウト」のような形で入団することはできません。

2年間宝塚音楽学校で学んだ人たちがそのまま入団されます。

そして、その音楽学校の時代から徹底的に上級生至上主義をたたき込まれるのです。なので、劇団員は、全員がパワハラの被害者であると同時に加害者でもあります。

 

それ故に、一部の上級生の方々がスケープゴートにされて、退団させられるのだけはあってはならないことだと思っていました。

 

今回宝塚歌劇団は、管理側に全面的に責任があることを認められました。

そして、「皆様へのお願い」という項で

 

「本件は、劇団の組織運営の怠慢等がもたらしたものであり、その責任を負うべきは劇団であります ので、本件に関する劇団へのご意見・ご批判に対しては、重く受け止めて改革に努めてまいる所存 です。本件に関し、ご遺族に対するSNS等での誹謗中傷や、劇団員個人に対するSNS等での誹 謗中傷が確認されておりますところ、このような誹謗中傷は差し控えていただきますよう、切にお願 い申し上げます。」

 

と述べられています。

 

わたしは、

企業として、また未成年の娘さんたちを預かって育てる組織として、誹謗中傷にさらされている生徒さん達を守ろうとされている態度は、ほんとうに立派な態度だと思いました。

 

ただもっとはやく劇団の体制に問題があることを認めて謝罪すべきだったとは思いますが。

そうしていれば、いじめをしたとされる上級生が、ここまでバッシングされることもなかったかと。

 

劇団には、構造上パワハラやいじめが起きやすい環境があるように思います。まず、芸能の世界すべてに言えることですが、不公平さがあります。皆トップスターになりたいでしょうけど、トップになれるのは一握りの生徒です。そうなるとなれなかった人には、嫉妬や不満が生まれるでしょう。実力主義であればまだ納得もいくでしょうが、そうでない要素、自分ではどうにもできない容姿や、実家の財力、コネなどがものをいう世界です。

宝塚ではありませんが、某芸能グループなどでは「選挙」などという人気投票を行って、競争をあおるようなこともしています。

立場によって待遇や給与も変わってくるとなれば、争いが起こってこないと思うほうが不自然です。

 

また、宝塚では、男役が燕尾を着用して、26段ある大階段でダンスを披露します。一糸乱れぬダンスの美しさはその魅力のひとつですが、一糸乱れぬ集団行動をするには、規律がどうしても必要になってきます。個人個人が自由に思い思いに動いたらきれいではありませんし、事故につながる危険性もあります。

1組80人前後の大所帯をまとめて行くにも、規律はどうしても必要になってくるでしょう。

 

宙組は他の組と比べて自由な組といわれていまして、今回も上級生による叱責のほか、下級生からの突き上げもあって、被災者の方は苦しんだといいます。

 

虐めやパワハラが醸成されやすい環境を管理するのは大変なことだと思います。これまでは、上からの強い圧力でコントロールしていたのでしょうけれど、時代に即したやり方でコントロールする方法を管理者が構築する必要がありそうです。

 

今回の劇団の発表は、時代に即した環境をつくり、演技者や演出家のメンタルヘルスを守れる組織にしていくという決意表明をされたと思います。

 

その中で、全面的に、劇団の組織運営の怠慢が今回の事件の原因と位置づけ、組織として劇団員を守る決意を表明されたことに敬意をもちました。

 

私たち宝塚歌劇のファンは、宝塚歌劇から何よりも感動と元気をもらっています。生観劇の一番の魅力は、演技者の生徒さんお一人お一人が、末端の方に到るまで、満面の笑顔で迎えてくださるところです。

すべての劇団員の方が、内も外も心からの笑顔でパフォーマンスできる日が来ることを願っています。

 

そして、宙組公演、長年二番手として誰よりも努力を重ねてこられた芹香斗亜さんの、本当のお披露目公演をこの目で見て、応援したいと思います。

 

映像を通して拝見したのですが、

「辛い時には、つらいときも、この劇場に来て皆様の拍手、この温かい空間につつまれると、もうちょっと頑張ってみよう、まだできることはある、そう思って進み続けることができました」と涙ぐまれていらっしゃったお姿が忘れられません。

8年の長きにわたってトップを支えてこられた芹香斗亜さんには、ぜひ宝塚歌劇団を代表する素晴らしい宙組トップスターとしてご活躍いただきたいです。

人は、逆境を耐え抜いたその先に、大きな成長があり、人の痛みがわかる人となれると思います。

今回のことを「芸のこやし」として、これまで以上に輝く彼女の姿を応援したいと思います。