「ことわざ」とは
先人の経験から生まれた知恵を言葉にしたものです。
より多くの人々の活きる糧になることを願って・・・
だから、迷信ではなく真実なのです。
イタリアにも「ことわざ」があります
その「ことわざ」を分かりやすく伝えるために描いたもの
それが
これは
ジュゼッペ・マリア・ミテッリ(1634~1718年)
イタリア人、画家、版画家
が、1678年に
フランチェスコ・マリア・デ・メディチ(1660~1711年)
に贈った版画集です。
その14番目
上には「ことわざ」が記され、
下には、その「ことわざ」の説明が書かれています。
そして、それらが描かれています。
上の「ことわざ」は
「力(権力)は正義に影響する。」
下の説明には
「粗野を強硬する道を切り開くことを喜びとする所、
暴君のような力(権力)、
アストレア(正義の女神)の天秤は剣に屈服する。」
左の天秤と剣を持った女性は正義の女神を表します。
右の武装した人は、力(権力)を表します。
ヴェネツィア、ドゥカーレ宮殿の外にある、「正義の女神」
ここでは、正義は暴力に負ける
と言うことではありません。
オヴィディウス(B.C.43~A.D.18)の「変身物語」
この中の「四つの時代」という話を表しています。
要約すると(岩波文庫、中村善弥訳)
・黄金の時代
法律、刑罰、兵士や武器などがなくても、人々は自らの真実と正義を守り、平穏無事に暮らしていた。
気候も常に暮らしやすく、自ら大地を耕さずとも、そこから実りを頂くことができた。
・銀の時代
黄金の時代よりは劣っていたが、四つの季節ができ、人々は農業を始める。
・銅の時代
気質が荒々しく、武器を手にする種族が登場する。しかし、「罪深い」というほどではなかった。
・鉄の時代
あらゆる悪行が押し寄せ、忌まわしい所有欲がやってくる。
大地から食料を求めるだけでなく、地中から富(鉄や金)を掘り返す。
その富から戦争が起こり、略奪が生活の手段となる。
兄弟や夫婦、家族の中でも死を画策するようになる。
最後に残った正義の女神アストレイアは殺戮の地に濡れたこの地を去ってしまう。
これは
悪行が横行(権力が暴走)すると、人々が「何が正しい事なのか分からなくなってしまう」
=正義の女神アストレイアがいなくなってしまう。
ということを伝えています。
これはシエナの市庁舎内に描かれた1300年代のフレスコ画です。
私が現地で撮影しました。
「専制政治(悪い政治)」を描いています。
下のほうにいる正義の女神は縛られ、身動きが取れなくなっています。
権力を握りすぎると暴走し、正義が働けなくなります。
これはヴィスコンティ家のタロットの「正義」のカード
正義を表す女性の上には、武装した男性がいます。
イタリア、ベルガモ、カッラーラ美術館所蔵
1400年代に制作された本物のヴィスコンティ家のタロットです。
私が現地で撮影しました。
この男性には、目が黒く塗られ、描かれていません
よって
=目が見えない
=正義の女性を見ることができない
ことを表しています。
この男性は武装しているので、戦う力(ちから)や戦争を表しています。
戦う力(ちから)や戦争は正義が見えなくなってしまう。
事を描いています。
権力を握っている方々、正義が見えなくならないように気を付けましょう
この版画集は、
的確な人生の法則を処方してくれます。
参考訳
「Proverbi Figuratiことわざ図絵」
而立書房