“MCT”というプログラムが当院精神科デイケアでは行なわれており、
現在第3クールが実施中です。
MCTは日本語名を“メタ認知トレーニング”といいます。
自分が考えていること(認知)を、
一歩引いた視点から客観的(メタ)にとらえる視点を
強化していくトレーニングです。
例えば、
誰かが笑った(出来事)→「俺のことを笑っている」(認知)
のようになり、それ以外の認知が検討されないと、
時にそれをもとに行動
(「俺のこと笑ってるんだろ!」と言ってしまうなど)
をすることにより、
社会的に上手く生活していくことにおいての支障となります。
そこにおいては、
「俺のことを笑っている」
と考えているという自分の認知について、
「自分は今こう考えている」
と自分自身で客観的な視点からとらえることから始まり、
「何か面白いTVの話でもしてるのかな」
「さっきまで面白いプログラムやってたから、その流れで盛り上がってるのかな」
などのように、認知の幅を持てるようになることが、
社会的に上手く生活していくことには役立ちます。
そのような“メタ”な視点の“認知”を鍛えるための
“トレーニング”を行なうのが、
“メタ認知トレーニング”=“MCT”の内容です。
MCTでは、例題や写真などを題材として、
楽しくグループの場で考えられる、
ということが利点とされています。
ただ一方で、千葉県のメタ認知トレーニングの勉強会“ちばMネット”でも
毎回のように議題として挙がっており、
当院MCT担当スタッフの間でもたびたび挙がるのが、
“MCTで学んだことを、メンバーが実生活に活かせるところまで至ってもらうのが難しい”
ということです。
それに関連することで、先日、参加メンバーのうちのひとりとスタッフとの間で、
こんなやり取りがありました。
<MCTでやってることって、実生活に役立ってます?>
「役立ってますよ」
社交辞令の可能性もあるので、その発言だけではスタッフはまだ信じていません。
<へ~!役立ってると感じるんですね>
「はい。幅広い見方をするってことについては、実生活にも役立ってるように思います」
“幅広い見方”というキーワードが出てきたので、スタッフは(おっ!)と思います。
<どんな感じで役立ってますかね?>
「何かあったとしても、「~だ」のようにひとつの考えだけに縛られないで、こういう考え方もあるかな、こういう考え方もあるかな、って考えることに役立ってる感じはありますね」
そのメンバーは更に、もう少し具体的なエピソードも話してくれました。
このような感想はなかなか聞く機会がないので、
MCTを実施しているスタッフにとっては、
今後の実施の支えの1つとなるような感想でした。
そして、このメンバーだけでなくどのメンバーにも、
精神科デイケアで行なわれているプログラムはどのプログラムも、
ただ単に楽しむだけでなく、
どこかリハビリとして役立ってくれていればいいな、
という思いを新たにしました。
ただしそのメンバーは最後に、
「でもMCTに出ると疲れますね。頭使うから」
ともおっしゃっていました。
疲れる、というのは、ちゃんとリハビリとして機能している証拠です。
大小なりとも、負荷がかかってこそ、リハビリは効果が生まれます。
身体的なリハビリと一緒です。
MCT参加メンバーのみなさんには、
精神的な調子を崩さない程度に今後も疲れていただきますので、
よろしくお願いします。
精神科デイケア“アミーゴ”MCT担当スタッフ