​■ 静かなる戦場 ​

 中学受験。それは、まだ純粋な我が子が、人生で初めて「己の限界」と対峙する残酷で、そして高潔な戦いでした。

 リビングの時計が深夜を回る音だけが響いて、山積みの問題集と格闘する息子の後ろ姿。親の私にできることは、ただ祈るように夜食を運び、震える心を押し殺して「大丈夫」と微笑むことだけでした。 

​■ 出口のない暗闇 ​

 模試の結果に一喜一憂し、偏差値という無機質な数字に親子で振り回される日々。正直に言えば、何度も心が折れかけました。 

「もういい、やめてしまえ」と喉元まで出かかった言葉を飲み込み、それでもペンを握り直す息子の横顔に、私は親としての覚悟を教えられました。

 まさに「泥を啜ってでも、この一問をもぎ取る」という、鬼気迫る執念。その熱量に、私の方が圧倒される毎日でした。 ​

■ 理性を突き抜けた 

​ そして待ちに待った合格発表。家族一同がひとつの部屋に集結し、今までにないほどの思い緊張感が部屋に立ち込めます。

一呼吸おいて、ボタンをクリックすると…… 

「合格おめでとうございます」

 画面に「合格」の二文字が躍った瞬間、それまで積み上げてきた不安、焦り、寝不足、全ての感情が怒涛のように押し寄せました。

 ​「キターーーーッ!!!」

 ​理屈じゃありません。語彙力なんてどこかへ吹き飛びました。

 息子と抱き合い、ただ咆哮し、涙で視界が歪む。これまでの数年間、家族全員で、一歩一歩、死に者ぐるいで登り詰めてきた険しい山の頂。そこから見えた景色は、言葉では表しがたいほど、狂おしいほどに眩いものでした。

 ​■ 最後に ​

 中学受験は、頭でっかちなただのテストではありません。親子の絆を極限まで研ぎ澄ます一種の「儀式」なのです。

 親の分析や塾のデータなどは関係なく、結局は「絶対にここへ行くんだ!」という、理屈を超えた子供の爆発的なエネルギーが実を結ぶのです。

 どうか、お子様に潜んでいる「野生の力」を信じてあげてください。その先に、魂が震える最高の瞬間が待っているはずです。