それでも僕は生きて行く…。43 | それでも僕は生きて行く…。

それでも僕は生きて行く…。

ブログの説明を入力します。最愛の一人娘に突如 襲いかかってきた急性骨髄性白血病… それに立ち向かう家族の話。

寝たり起きたりを繰返しながら…

僕と裕子は朝を迎えた。



ソファーにすわって振り返り窓の外の

景色を眺めていた


1月の晴れ渡った空の向こうに

いつもと変わらない筑波山が見える…



すぐ下を見下ろせばすでに国道は渋滞が

始まりだしていて…



港からは漁に出る船、操業を終えて戻っ

てくる船…



東の空からは日の出からしばらく経った

太陽がある程度の高さまで昇って来てい

る…



いつもの風景…



すべてが美優が生きていた時と何も変わ

らない…



美優も…  裕子も…  僕も…



好きだったいつもの風景…



好きだったのに…  



とくに美優は時間が許せば…



いつまでも窓の外の風景を眺めていた



それなのに…



ひとつも僕達の事なんか気にする素振り

を見せずに窓の外の風景は時間の流れに

簡単に乗って…



美優と裕子と僕を

置き去りしようとにする…




僕が…

勝手に思ってしまう

事だけど… …




美優の葬儀が終わり…

一夜明けたとたんに…




“もういいだろ…

こっちもヒマじゃないんだ…!”




と世間から言われてる気がして…



筑波山にも…  国道の渋滞にも…

港の船にも…  昇るお日様にも…




おい!!  そんな軽いものじゃねえぞ!!



と思っていた…



認める事のできない1つの終りを

突き付けなれてる気持ちになる…





裕子が…



裕子
「 パパ… コーヒー飲む…? 」




「 あ…  うん…  」



場所をソファーからダイニングテーブル

に移して…




裕子
「  ねぇ… 外見て何考えてたの…? 」





「 うん…  やっぱり…幸せなんだなぁ…

て…思ってたよ… 」




僕は裕子の疲れ切っている顔を見て

とっさに思ってない事を言ってみた…



裕子は一瞬… 間を開けて…




裕子
「  今…?  今… そう思えるの…? 」




「  あぁ…  今だよ… 」



裕子
「 …   …   …   」




「 …   …    なんだよ…  裕子は そう…

思えないのか…?  」




裕子
「  だって…   逆に…  何で そう思える

の…   パパは…?  」





「  何でかなぁ…  何でかは解らない

けど…   やっぱ…  裕子と美優が居て

くれてるからかなぁ…  」




裕子はにっこり笑って…




裕子
「 そうなんだぁ… ありがとう♪ 」




つられて僕もにっこり笑えた…






裕子の…


疲れ切っている表情が…


僕に今はそう思う事が難しい嘘を


言わせてくれた…



きっと僕の心を見透かす事のできる


裕子は僕の嘘に乗っかってくれて…


なお…


笑顔で答えてくれた…



優しい奴だ…



つられて出た僕の笑顔は


裕子の優しさを感じてだった…






笑顔…



美優が倒れる以前から


僕は男女共に


いい顔で笑える人に魅力を感じる


事が多かった…




たとえば…


仕事中 …  

工期が迫た現場で冬の悪天候に

も拘わらず中止にできない状況で工事を

進めなければならない時…


会社の仲間はカッパを着込んで現場に

飛び出す…!


僕も一緒になり重機に飛び乗り仲間に加

わる…


重機の上から指示を飛ばし部隊を

動かす!



動かすが …   …



カッパを着てるといっても…

冬の冷たい雨は…  ほぼ苦行…

水を含んだ土は普段の何倍も扱いづらく

なり…

全体的にいつもの何十倍と手間と辛さが

のし掛かってくる…



僕の心は

元請け会社にはもう充分…

誠意は見せた    これ以上は…  

金がかかっても明日からあっちの部隊も

こっちに投入すれば何とか工期は守れる

のではないか…



そう決断して仕事じまいを伝えようとし

た時…




服部が笑顔で…


「 浩輔さ~ん!  もう一本 入れちゃいま

しょ~!   掘削進めて下さ~い!  」





「  ハット…  いや… そろそろ… もう…」



服部
「 大丈夫ですよ~!  これくらいの雨…

なぁ! やれるよな! 」



と隣の部下に笑顔で同意を強制…(笑)



服部
「  お~い!  お前ら 足元悪いから滑るの

気を付けろよ~!」



と笑顔で周りに気を引き締めさせる




服部の吐く息は寒さで白く…


冬の雨は依然 勢いを緩めない


そんな中…


自身の苦しさは気にも留めず

いろんな意味での会社の利益を優先して

笑顔で社長の僕に指示を出す…




ここまで頑張ったんだ…

今 終わりにしても誰も文句は

言わないのに…



と僕は思ったが服部の指示に

ありがたく乗っかって次のスパンの掘削

に取り掛かって行った…




ハットが笑顔で言ってくれたからだ…


笑顔で言ってくれた事に感謝をしながら

笑顔の持つパワーと優しさの偉大さを

感じていた…


もし…

暗闇のドン底に転がり落ちてしまうとき

無理矢理にでも笑顔をつくって笑おう…

きっと脱出のきっかけになる

転がり落ちるのを踏ん張れるきっかけ  

に…



服部が見せてくれた笑顔…



美優が闘病中に見せてくれた笑顔…



そして僕が…


この悲しみとの闘いの中で裕子に見せて

行きたいと思う笑顔…


今まで僕が見てきて感じる笑顔の力…


すべてはこの闘いの為にあったんだと


心得て…








裕子との会話は自然と昨日と一昨日を

振り返った内容に…



裕子
「 それにしても… 沢山来てくれたね…」




「 そうだね… 本当に嬉しかったな…」




僕は…  あっ!と思い…




自分のスマホに手を伸ばした



いつも電話を気にしながら日常を過ごし

ていたが…



ここ数日はほぼ放置状態だった…


自分からの発信は当然使っていたが


受ける連絡はほとんどスルーで


メッセージにしては目を通さずにいた…


僕や裕子を心配してくれるメッセージ


もきっと多数 届いているだろう…


お礼を伝えなければならない事もあるは

ずと思い…


メッセージをチェックしてみたら…




親しい仲間からLINEが2件…





「 あれ…?  2件…  あぁ…  …  」




裕子
「  パパ…   どうしたの…?  」





「 メッセージがさぁ… たまってるかな…

と思ってたら…  2件…   だった… (笑)  」




裕子
「 優しいメッセージがいっぱい来てる

と思ってたんでしょ~(笑)  

パパ…! 欲張り過ぎ…(笑)     もう充分…

私達は優しくしてもらってるでしょ…♪

しかもちょっとショックがってるし…♪

美優~♪  パパ…  ウケるね…(笑) 」




疲労が色濃く残る…


おせいじにも健康そうとは言えない


顔色で裕子は遺影の美優に…


笑いながら話かける



話かける…  その先にいるのは…


美優のお骨と遺影の中で笑う美優…


僕も一緒に笑いながら

二人を見てるけど…




美優がいない現実が … …



実感として僕の体中に突き刺さる



僕の視界の中で…


疲れきった表情のクセに不釣り合いに

笑う裕子の笑顔も


僕と同じ事を感じたのか…


僕を笑う勢いのまま




泣き顔に変わっていった…




裕子は…  

まるで子供のように声を出して

泣いた…




裕子
「 美優~!  美優~!  ママ… やっぱり…

寂しいよ…!    帰って来てよ~!

美優ちゃん…  お願い…  …  …  …  …   」



裕子は今になって…  やっと…  やっと…


泣けるんだ…



泣かしてあげたい気持ちとは反面に…


僕は戸惑いながら…  迷っていた…



美優の闘病から旅立ち…  


葬儀を終え…


やっとマンションに帰って来れて


僕らだけの空間の中…



ある意味…  

本当の意味で現実と向き合わなければな

らなくなった今…




美優を亡くした

悲しみはデカ過ぎる…

暗闇は深すぎる事に…
 
気付いてしまった





昨日までの現実味のない日々のうちに

僕はできるだけ作ろうとしていた…

バカでっかい!  

コイツから裕子を守る術を…



意気込みだけは…  


覚悟だけは持った


つもりでいたが…    



この世に美優のいない実感が僕の体を

突き刺した時…



この悲しみの

手に負えない程の大きさ…

この悲しみの 暗闇の深さを垣間見た…






勝てない…






僕は本能的にそう感じて怯んだ…






裕子が泣きじゃくる姿を見て…


迷い… 戸惑っていたのは…




悲しみと真っ向からやり合ったら…

倒されてしまうのではないか…?


倒されたら二度と立ち上がれない

のではないか…?




暗闇に落とされたら…

這い上がってこれないのではないか…?

這い上がる事など不可能な深さなのでは

ないか…?




頭でそんな事を考えながら…



美優のいない現実が僕の心を襲ってくる



さっき僕の体中を突き刺した

美優がいない実感…


今度は僕の中から

美優がいない実感が


にじみ出て来て漏れ始めた…



泣く裕子に悲しみから守る言葉など

ひとつも言えずに…



僕も落ちて行く…



体中に突き刺さるものと…

体中から漏れ出るものをどうする事も

出来ずに…


あまりにも簡単に…

あまりにも無力に…


悲しみの暗闇に無抵抗で落ちて行くのが

わかった…


泣く裕子を見て…

落ちてはいけない暗闇だと感じた

次の瞬間に…


僕も引きづり込まれてしまった…






このあと僕と裕子は美優を想って

泣き崩れた…


見苦しく…  無様に…  


裕子を守る!

なんてカッコつけた想いなど一瞬で

棚の上に挙げるしかなかった…


そんな自分を情けなく思う気持ちすら

持てないままで…


いつまでも…  いつまでも…


どんだけ泣いても


暗闇の底に足がつかない…


どこまでも深く自分が沈んで行くのが

わかる…



僕達しかいない空間で

誰にも何にも気を使う事など

ないこの状況…



落ちて行くのを止めるのも…


這い上がるのも…


悲しみを打ち砕いて優しさに

変えるのも…


他の誰でもなく

自分なんだということは

分かっているのに…



そうだ…

自分次第…!  



僕がいつも奮い立つ言葉…


自分次第!が頭をよぎった…


…   …    …

…   …    …


早く来い!    早く湧いて来い!


と願ってみても…


悲しみに立ち向かえる程の闘争心が

沸き上がって来てくれない…



僕と裕子は…


そのまま


永遠と泣き続けた…









泣き続けたまま…


いつの間にか日は沈み1日が

終わっていた…







あくる日も

無意味に感じる時間は流れ

すでに夕刻…



何かを変えたいと思い裕子と外に出掛け

る事にした…



あまり長い時間はキツいと思い…

手頃な用事を見つけようとして思いを巡

らしてみた…




「 裕子…   ちょっと外に出ないか…

少し外の空気に触れようか…  なっ…。」



裕子
「 うん…  でも…  大丈夫かな…? 」




「 ダメなら…すぐ戻ろう…  ダメなら

すぐに言えよ…    なっ…。  行こう… 」



裕子
「  うん…  」



裕子は軽く頷きコートを羽織る…



僕達は車に乗り込み部屋を出た



僕の中で昨日は感じる事のなかった



言い知れぬ不安…


得体の知らない不安…



が強くなり流れを変えるつもりで外に

出た…




裕子
「 どこに行くの…? 」




「  ディーラーに行って車のオイル交換

しよ…  」



裕子
「  オイル交換なの…?  」




「  うん…  大事に乗る事にした…♪

美優… この車好きだったし…  」



裕子
「  うん♪  」



若干…

裕子の顔に笑顔が戻って来そうな気配…



ほどなくしてディーラーに着き…


僕達はコーヒーを飲みながら車の出来上

がりを待っていたら


フイに僕の電話が鳴った…



画面に目を向けると



あの人からの着信だった



鬼ヶ島の大川原さん…




「 裕子…  ほら…!  」


と言って画面を裕子に見せた…



裕子
「  あぁ~!  嬉しいぃ~!  」



と言って久々の笑顔を見せる





「 はい。 高橋です…  」



大川原さん
「 あぁ  お疲れ様です… 大川原です… 」


昨日…

大川原さんとは少しLINEでメッセージを

交わした…


その内容は 今までの数々の優しさに対し


ての僕からの感謝の気持ちとお礼の言葉


を伝えた内容で…




それに対して大川原さんも

美優に出逢えた事への喜びと感謝…


心のこもった葬儀に参加できた事…


父親と母親が子を愛する愛情の深さを知

れた事…


お礼を言うのは僕らの方です…!


と言ってくれていた


メッセージの結びは…


そんな二人に愛された美優ちゃんは

本当に幸せだったんでしょうね… と…





僕は大川原さんに…



また会いたい…



と…   心底思った  


裕子も


大川原さんの優しさに涙していた…




大川原さん
「  浩輔さん…  今  大丈夫ですか…? 」




「  はい…   問題ないです…  

でも…  どうしたんですか?  

ちょっとビックリしました…(笑)   」




大川原さん
「  えっ?  なんで…ビックリするんです

かぁ~?    また連絡します!って言っと

いたじゃないですかぁ…! (笑)   」




「   あっ!   すいません…(笑)

そうですよね… でも大川原さん芸能人だ

しまた連絡くれるなんて社交辞令も入っ

てると思うじゃないですかぁ…(笑)  」




僕は大川原さんが連絡をくれたことが

凄く嬉しいかった…


そのせいか ついつい本音が口から出て

しまった…(笑)




大川原さん
「  浩輔さん…  今日 仕事で千葉に居るん

です…  前に美優ちゃんが僕らに会いに来

てくれたパチンコ屋にイベントで来てる

んですよ~♪ この後って何してます…?

よかったら一緒に御飯を食べません

か…?   20:00位に終わりますので… 」



僕は裕子に一応どうするか?

を聞いてみる…


いい笑顔で頷き…   当然の快諾♪





「 はい♪  喜んで行かして貰います♪

どうすればいいですかね…?」



大川原さん
「  じぁ まだ少し仕事があるので…

20:00頃に また連絡します…!

それと美優ちゃんと会った時にカメラの

シャッターを押してくれた人も一緒に居

るんですけど…  パチンコの仕事はその人

からの仕事なんですね…  

美優ちゃんに会った事もあるんですよ…

ご一緒でも大丈夫ですか…?  」



嬉しかった…  

大川原さんがお通夜の夜

別れ際に…



美優ちゃんの事は忘れませんよ…


浩輔さんと裕子さんに


必ずまた連絡しますから…



と言ってくれた事が現実になっている事

が…


美優がくれた…


人と人の縁が途切れない事が…


葬儀が終わり…


やっぱり僕は


何かが終わってしまったと


感じてしまっていたのだ…


けど…


大川原さんからの飯の誘いの電話…


また新たな方との出逢い…


終わりじゃない…


美優がくれた出逢いの連鎖は


続いて行く…


その事が美優は生きている…


僕と裕子だけじゃない…


大川原さんの中でも


美優は生きているんだと


思わしてくれる…


同時に瞬間的に僕の頭の中で


順天堂病院の先生方や


看護師さんから始まり…


先日の葬儀において


我が娘 美優の為に涙してくれた人…


美優の旅立ちを一緒に


涙を流してくれた人達の中に


美優は生きている…



と思える事が…


僕に悲しみに立ち向かう勇気を


美優への愛情を貫く勇気を


与えてくれる気がした…



美優も…  


闘え!   怯むな!  


パパはそんなものじゃないでしょ!


ママを守って!



と言われてる気にもなる…




まだ闘争心は湧いて来ないが…



さっきまでの苦しさは



今はない…!





僕は心の中で美優に話かける



あはは…


昨日と今日はさすがに


少し心配になったのか…?


いや…やっぱり…お前が


いないのは想像以上に


堪えるよ…


けど…  


いいタイミングでの


フォローだよ!


ありがとうな…(笑)


せっかくの大川原さんからの


お誘いだから美優も遠慮しないで


一緒についておいで…♪


楽しい時間を味わせて貰おう♪


そしたら俺は…


今日よりも明日は強く


なってみせる…


明日よりも明後日は強く


なってみせる…



その次の日には悲しみのヤローを


睨み返すくらいになってやる


美優が呆れながら笑ってる気がした…


「 もう…パパ… 全然歯が立たなかった

クセに大丈夫なの…? 」


て…(笑)


バカにするなよ…!


て心の中で言い返してやった…(笑)





さぁ …  言い合うのはこれくらいで…


ほどほどにして…


大川原さんからの


せっかくのお誘いだよ…!



美優ちゃん♪  飯に行こうぜ♪











美優…


気づいたら季節はすっかり夏だよ~!

そっちの世界は夏とか

季節みたいのはあるの…?


あるなら毎年言ってた事だけど

夏の日射しには気をつけろ!


お前は肌が弱いからな…

いつだかみたいに日焼け止めクリーム

塗らないで遊びに夢中になったら

火傷でまた皮膚科に行くハメになるぞ!


車の窓ガラスに映る自分を見て…


お化けみたいで… 恐いよ~!


て また泣くぞ…(笑)


こっちの世界は…


今年の夏はヤバそうでだよ…!


猛暑になる予感だね…


美優…

俺のことは心配するなよ…


パパは元気でやっているから♪


まぁ 夏バテくらいはするかもな…(笑)


けど…  その程度だよ…


たぶん 人がこの世を


生きるのは…


大変な事が当たり前に


付きまとうんだろうな…


て ことは大変は事は


大変じゃないんだよ…


そう思えば少しは楽だよ…



今 修得中の


般若心経…


もう少し待っていろ…(笑)


そのうち ちゃんと言える


ようになるからな…(笑)



お互い笑顔を忘れずに…



俺は大丈夫だ!


心配するなよ♪