「編集長、次号はけいおんを特集しましょうよ。」

 「何だ、遠山、急に。けいおんは期待度低いって昨日まで、お前が言ってたんだろう。」

 遠山は編集長の前の席に腰を降ろし、

 「確かに、昨日までは宣材も少ないし、情報もない、振り替え番組でやる気ないのかなって思ってましたよ。でも昨日、ラジオの取材で、絵里子さんに紹介されて、けいおんの主役の一人、日笠さんと食事したんですよ。」

 「日笠?」

 「秋山澪役の日笠陽子さん。彼女凄くいい子、一押しです。」

 「それだけの理由で、特集か?」

 「違いますよ、いくつか理由があるんですけど聞いてくれますか。」

 「ああ。」

 「まず、あの中村絵里子が、日笠さんの教育係りで、彼女自身が『けいおん』は化けるって言い切ってるんですよ。その上、『けいおん』は日笠の出世作で代表作になるとまで言い切って、今のうちにつばつけておいたほうがいいって紹介してくれたんですよ。」

 「まあ、中村さんなら『けいおん』の詳細知っててもおかしくないけどな。『けいおん』って学園ものだよな?」

 「確かに、女子高生の部活ものですけど、音楽が絡んで、京アニが絵を作って、捨てキャラがいなくて、中の人が主題歌歌って、バンドもやるみたいなんですよ、実際、昨日の日笠さんもベース背負ってましたから。」

 「飾りじゃないのか。」

 「私もそう思ってましたよ、昨日までは。でも、食事してる時、彼女の指をみたらマメが出来ているんですよ、あれは本気の特訓をしている指です。彼女、ざっくばらんな性格で結構話してくれるんですけど、主題歌のことや、バンドのことになると、話濁すし、TBSから聞いてくださいって感じで、情報管理がしっかりされてるんですよ。

 それに、彼女が他のキャストやスタッフ、監督の話をするとき、もう目がキラキラと輝いて、『けいおん』の仕事が楽しいことがビンビン伝わって来るんです、スタッフ一丸の作品ほど強いものはないんですよね、間違いないですよ。」

 「監督は山田とか言ったな。」

 「『けいおん』の監督は京アニの新人監督山田尚子、キャストと年齢違わないそうです。キャストは、主人公のドジ娘の平沢唯役が豊崎愛生、美人の秋山澪役が日笠陽子、ボーイッシュな部長の田井中律役が佐藤聡美、お嬢さんの寿吹紬役が寿美菜子、後半に出てくるツインテールの中野梓役は未公開、でも間違いなくもう動いています、日笠さんが、キャスト5人って言い間違えて訂正してましたから。」

 「音楽は誰が担当する?」

 「音楽の製作はポニーキャニオンなんですが、まったく情報が漏れてこないんですよ、オープニングとエンディングは桜高けいおん部、キャストが歌うことは間違いないんですが・・・」

 「豊崎は結構歌ってるよな。」

 「キャラ声での歌には定評がありますね。でも、日笠さんも結構歌いけるみたいです。」

 「ツインボーカルか?」

 「一様、主人公役の豊崎がオープニング、日笠がエンディングって線はないですか。」

 「寿もスフィアの一員で、歌はOKだな・・。新人ばかりのラインナップだけど、こう考えると、予想外に隠されてることが多いし、化ける要素は確かに多いかもしれんな。」

 「それに日笠の人柄っていうんでしょうか、まじ惚れますよ、たった1回会って、この子いいなんてまず思わないでしょ、でも日笠には惚れました、あの子もっと仕事して、いろんな人と出合ったら、日笠好きがすごい増えますよ。」

 「豊崎は音響監督殺しで、他の声優からはいい評判はきかないけど、どうなんなんだ。」

 「豊崎さんてそんなに話題作に出てる分けじゃないけど、編集長も評したように、イメージ結構確立してるんですね。そこもちょっと興味あるところなんですよね、実は彼女との話で、すごく印象的だったのが、『けいおん』の主役は4人って何度も言うし、その4人との関係も、愛称で呼ぶほど凄くいいのも分かったんですけど、特にその中で、豊崎については、日笠は何度も何度も「あっきょ」って呼んで、信頼って言うっでしょうか、彼氏のことを話しているような感じを受けたんですけど。」

 「お前の見た目では、『けいおん』のツートップは盤石、日笠は赤丸。確かに『けいおん』のビジュアルもよく見ると欠点は見当たらない、放送前に動くのも悪くないかもな。取材の窓口は?」

 「アニメ作品についてはTBS、音楽とキャストについてはポニーキャニオンが窓口です。」