いやー面白かったです。
山村美紗さんの小説はこれまで
一冊も読んだことはないけど、
彼女の類まれなキャラクターが
描かれている本作は、人間ドラマとして
とても興味深い。
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一日百枚近い原稿を書き続け、年間12冊という
ハイペースで新刊を出し、そのほとんどが売れる
ミステリーの女王は、賞を取っていないことの
コンプレックスもあり、自信と不安に揺れ続ける
繊細な女性だった。
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隣同士に住んでいた、作家、西村京太郎氏との
パートナーシップ、その邸宅の前のマンションに
住んでいた夫との実生活。
作家として生きるためには、ふたりの男の存在が
どうしても必要だった。
彼女の死後、西村氏は美紗との恋愛を小説にし、
夫は妻の肖像画を描き続ける。
理解の範疇を超えたその関係性に、著者は狂気の
愛を感じ、山村美紗を書きたいと思う。
そして、いくつもの顔を持つ彼女のエピソードを
描いていく。
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新聞に文芸誌の広告が載ると、定規で測り
自分より大きく掲載された作家がいると
出版社に電話をかけ、そのたびに編集者たちが
銀座千疋屋のメロンや胡蝶蘭を手に京都の家に
謝罪に来た。
その一方で高価なプレゼントを親しい編集者には
欠かさない。
傲慢さと心遣いが共存している。
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喘息で苦しんだ少女時代に「いつ死ぬかわからない。
だったら好きに生きよう」と決め、作家になることを
志しミステリーの女王と呼ばれるようになる。
売れに売れても満足できない。
直木賞が死ぬほど欲しかった。
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仕事がなくなるのが怖いので、小説の依頼を断れない。
体調が悪化しても書き続け、帝国ホテルのスィート
ルームで執筆中に倒れ亡くなる。
新聞は「戦死」と報じた。
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残した遺産、6億7千万。
22年の作家生活で売り上げた本は三千万部を超え、
百本以上がドラマ化された。
けれど今、山村美紗の作品は本屋にない。
著者は言う。
「この本を手にとってくださった方が、京都に生きた
ミステリーの女王が書き続けた本にふれてくださると、
ありがたい」
山村美紗への愛があふれた本作は、
作家という業を抱えた人間の
切なさ、哀しさ、はかなさを深くえぐる。
ぜひ読んで欲しい一冊です。
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