コミックゼロサム2月号でおがきちかさんの「Landreaall ランドリオール」第164話「空から鈴の音」を読みました。

 

更新が月一回だけに近くなって来ていますが、なんとかランドリの感想だけは書こうと思っています。今読み続けている作品では、一番長く読んでいます。連載期間だけでいえば「OnePiece」や「キングダム」も長大巨編ですが、私が読み始めてからはまだ数年なので、ランドリとの付き合いが一番長いなあと思います。私が読み始めたのは11巻、リドの故郷のウルファネア編のあたりからでした。

 

年末になって忙しいのですが、マンガの感想を書くというのも一つの気分転換になりますし、ランドリは何度か読み解かないと上手くストーリーが呑み込めないところもありますので、謎解き的な楽しみもある、という感じです。

 

今回の扉絵はフィルとティティ。変顔?というほどではないですが、キュートな二人です。(笑)

 

クレッサールでの出来事はそれぞれに色々な影響を与えたわけですが、まずは六甲とイオンの話から。DXとリドの部屋で畳の上で話をしているDXとイオン、リドと五十四さんですが、最近六甲の姿を見ない、という話になります。実はいるのですが、落ち込み状態で「ボンヤリしている」のですね。というのは、イオンがDXとディアとともにクエンティン(とユージェニ)と戦っていたとき、ディアのマインド攻撃でクエンティンが逆襲しようとしたのにイオンが棒でクエンティンを攻撃しようとしたのですが、このままではイオンがクエンティンを殺してしまうと思ったDXが六甲に命じて、短刀(小狐丸?)を投げてイオンの腕に突き刺して止めた、ということがあったわけです。(27巻152話)

 

いかに危急の事態とはいえイオンを傷付けてしまったことを六甲はとても責任を感じていて、ほとんどを姿を消さんばかりになっていたんですね。ここでリドと五十四さんの前で改めてもう傷は残ってないとか言い仕事をしたとか言ってもらって少しましになったようです。

 

「六甲はまた人らしくなりましたね」と五十四さんにいわれた六甲ですが、DXは美人に言い寄られた(灰撒の兄妹の妹、砂の戦士ティレクですね)という話をし、クレッサールはその辺オープンだよな、という話になります。

 

このあたり、六甲はきっと凄く気にしているだろうなと思ってはいたのですがそう言うエピソードがなく、アトルニアの王城に戻って来て、「任務」が一通り終わったと思ってから、そう言う感じになったようです。一つひとつエピソードをきれいに掃除して行く感じですが、ここはある意味今回のサブタイトルにもなっている「鈴の緒を結んでおけ」という言葉の前振りだった、という感じです。

 

バハルたちと別れてクレッサールから帰るとき、DXはバハルにいわれた「鈴の緒を結んでおけ」という言葉の意味を尋ねた。そのことを思い出していると、フィルとティティが登場。また、リドと五十四さんはウルファネアの大使と同行する用事が出来て、その場を退場し、フィルたちと入れ替わることになります。

 

前回163話でDX、イオン、ライナス、ルーディー、フィルは大老とディアに塔に呼ばれ、大老のそばで働くことになったロビンとともに、大老からロビンの両親についての話を聞きました。もとはといえばライナスの作戦でロビンを大老に会わせようとしていたのがベネディクト卿たちによって阻まれ、ライナスとルーディーはクレッサールに飛ばされたものの、フィルの男気と機転でついにロビンを大老に会わせることが出来た、というのが27巻150話から28巻153話にかけて、クレッサール編の展開とともに語られたことでした。そのときの大老はほとんど正常に状況を認識出来ない状態だったのですが、ロビンのことだけはわかり、そのことによってクエンティンの呪いをとくことが出来た。フィルは、その状態のことをDXたちに話しに来たわけです。

 

「クラウスター(ディア)がいないときの大老にあったことあるか?」と問うフィルに、DXはクエンティンとユージェニと一緒にあったことがある、と言います。これは21巻113話のことですね。この時にはよくわかりませんでしたが、今読み返してみると大老はクエンティンが礼を述べたり戴冠式の話をしたりしているのに全く反応していないのですね。これは気がつきませんでした。DXも今それに気がついたようです。ディアが現れてから大老は話し始めた。「クラウスターの天恵ってすごいな。あの大老をまともにしちまうんだから」というフィルに、「そこまでしてでも誰よりも王様にふさわしい人ってことなんだね。本来以上に能力を上げるわけじゃないんだろう?」とティティ。ここで一同がディアと大老との関係についてその重大性を認識した、という感じです。

 

それに対し、「ディアは大老といつも一緒にいるために王妃になるんだね」というイオン。大老・ファラオン卿を国王として必要とする国のため、大老のため、そのために王妃になるディア。その運命を受け入れているディアですが、イオンはそれに割り切れないものを感じているのですね。まあそれはDXがディアのことを好きだと言うことを知っているからなのですが。

ここから大老とディアの関係、そして塔に1人だけ自由に出入り出来るレイ・サークとの関係について、フィルが突っ込み始めます。みんなDXがディアに失恋したということは知ってますから、火矢の塔に出入りしているレイ・サークとディアは「付き合っている」とDX、イオン、フィルは思っている。ティティだけはそんな単純なことだとは思ってないようですが、DXとイオンは基本的に考え方がシンプルだし、フィルは貴族階級的には世間が狭いし、ライナスと二人でレイとディアがデート?しているところを目撃しています(17巻90話)から、そう思っている。

 

クラウスターはチューターと付き合うために、人質となってて逃げられないんじゃないか、と言うフィルにティティはまさか、と言いますが、超高位貴族(なにしろ真祖=ロイヤルクラシックの一族)であるディアはレイと付き合える身分じゃない。だから、二人の仲を許す代わりにファラオン卿が王を務められるように天恵を使わされているのでは、とフィルはいうわけです。

 

それに対しDXは、ディアは立場を強要されているとは思えない、と言います。まあそんなタイプでないことはDXはよく知ってますし、また決意、というかある種思い詰めている言葉も聞いていますから。「大老に恩があると言ってた」というDX。20巻109話での会話ですね。

 

さらに突っ込むフィルは、「普通に考えたら逃げられないのは相談役(レイ)の方か」と言います。つまりディアがレイにそばにいることを強要しているのでは、ということになるわけですね。「付き合ってるんだよね?(ディアが一方的に求めてるんではなくて)」というイオンに「それって確かなのかな」と長い目でいうティティ。ティティはその前提自体が間違ってると思っているようです。しかし気づかないフィルは「だろ?王と王妃だぞ逆らえるわけねー」と自分に同意したものと見なします。「相談役を手元に置いとくくらいは安いもんじゃねーの、クラウスターがそれで喜んで王妃やるなら」となんだかどんどん下世話な方向に持って行くフィルですが、ティティは慌てて否定しようとするものの、DXはディアの109話での言葉を思い出し、「ディアは好きな人にそんなことを望む人じゃない」と言います。「結婚するのにそばにいてほしい何て言えない」とか「想像もしなかった、誰かを特別と思うとか」という言葉、DXはレイのことを言っているのかと思っていたようです。

 

フィルは結局、ディアがファラオン卿を天恵で支える代わり、というかご褒美としてレイと一緒にいられるようにしている、という仮説にこだわっているわけですが、イオンは「そんなあ」というし、ティティは「そんなわけないんだよ〜!」というのですが、思い詰めてしまったDXは窓から抜け出して階上のレイの部屋を訪問するのでした。

 

この展開、言葉のやり取りから読み取るのはちょっと難しいのですが、最終的なDXの行動がウケます。そこにやって来たライナスとルーディ—は、前回でのディアの反応を見てますから、もうちょっと妥当な見解を持っているのではないかと思います。

 

レイを訪問したDXですが、レイはディアと付き合っているという前提で、そんなパワーポリティクスみたいな付き合い方で納得してるのかとレイに尋ねます。レイはDXに、「もしかして僕が脅されてるかなにかであの二人にこき使われてるんじゃないかって心配してくれてるのかい?」となんだかムフフ顔。「騎士道って病いは根が深いね!」と嬉しそうなレイにうつむくDXです。

 

ここからレイはディアとの関係を語り始めます。「僕とディアは10年近く一緒にファラオン卿に天恵の制御を教わってるんだよ。僕はディアを怖がってもいい数少ない人間。天恵の相性のせいでね。」と。

 

天恵の制御。このあたりのことは今本が手元にないので確認出来ませんが、スピンドル事件の後ディアがレイを見舞った時の会話でヒント的に語られていました。でも私は制御というより天恵を伸ばす訓練をしているのかと思ってましたが。(そんなニュアンスだったと思います)

 

「僕らの天恵は普通の人を壊したりは出来ない」というレイ。

 

!!

 

普通の人じゃない人なら壊したり出来るんでしょうか。確かにディアがクエンティンを追いつめたときはかなりそれに近い感じになってましたが。またレイもそんな力があるとは。ファラオン卿も同系統の力なのでしょうか。このへん、それぞれの天恵の詳細はよくわからないところがまだありますね。

 

「だけどあの子はずっと昔から周りの人間に天恵を誤解されて怯えられるのに傷ついて来た」

 

・・・・・・

 

なるほど。ディアが恐れているのは、自分の天恵を恐れられることだったんですね。

 

「君はディアが怖くないんだろう?でもディアがそれを信じるのは難しい。ディアは大老の下でやっと平穏を手に入れたんだ。王様以上の守り手がいるかい?」というレイ。

ディアの本質は、人に恐れられる、異形としての天恵の持ち主で、そのことにディアは傷ついて来た、いつか本当に人を壊してしまうかもしれない、という恐れを強く持っていることは、クエンティンを倒した時にうわごとのように口走った内容にも現れていました。大老はディアを守ってくれた、ということは、その天恵を制御出来ることを教えてくれた、ということも含まれているのでしょう。

 

このことに関するディアの思いは28巻157話で語られていました。「私は天恵を怒りにまかせて人を傷付けるために使おうとした。私の天恵は隠しておかないともしも制御出来なくなったら取り返しがつかない。跳ね返った呪いと私の天恵がクエンティンの中でぶつかりあって消えたのを感じたわ。彼が正気でいるのは運が良かっただけ」呪いがあまりに強かったから、強力なディアの天恵とでもちょうど相殺されるくらいだったと言うことなのでしょう。「一瞬、本気で人を壊そうとした」

 

そのディアの暗く闇に落ち込んで行くような思いを、DXが再び輝かしい光の元へ、「クエンティンと戦って勝って救った」と、勝利と救済の物語へと描き直したわけです。

 

レイは、「ディアが、DXはディアが怖くないということを信じるのは難しい」と言いますが、大老は前話で「メイアンディアには一人でも多くの味方が必要だ。立場ではなく天恵が彼女を孤独にする。DX・ルッカフォート。待っているよ。」といいました。この「待っているよ」という言葉の意味があまりに謎めいていて解釈に困るのですが、少なくとも大老は期待しているし、おそらくはディアもそう言う思いは持っているのだろうと思います。

 

ディアの天恵をめぐるトラブルがこんなに根が深いとはちょっと思いませんでしたが、「うら若い女性が殺傷能力の高い能力を持っているということを悩んでいる」というのは、最近の魔法少女系とか最終兵器彼女的な強さとは真逆の設定なので、逆に私などには想像しにくかった気がします。でもまあ、優秀な女性が敬遠されがちだとか、そういうことのある意味での延長線上に、ディアの悩みもあるんだと思えば、理解出来ないことはありませんが。

 

まあDXならそんなの軽々と乗り越える感じがしますけどね!

 

まあそれをディアがどう思うかはまた別の問題ですが。

 

話はずれましたが、レイのその言葉に、DXは「レイ先輩はそれでいいんですか?」と尋ねます。これは、「王様がディアの守り手になる=好きな人が自分以外の人の妻になる」ことをレイは受け入れるのか、ということでしょうね。

 

ここでのレイがなんだかカッコイイと言うか、本当の意味でDXを諭すイケメンというか、になってるわけですが、「君は何故そんなことを僕に聞くんだい」と言います。「ディアが(好きな人だから)」と言いかけたDXに、レイは「僕がどう言ったってそれを自分の気持ちだと思い込むことは出来ないぞ。僕が何を考えようと君には関係ない。」と。ディアが好きな(とDXが思い込んでる)レイがそのことについてどう思っているかがわかれば自分がそのことをどう考えればいいかもわかるのではないか、とDXは思ったみたいですね。

 

でもレイにそういわれて、DXは「そうですよね」と言ってまた窓から消える。でも部屋には戻らず、屋上に行ったみたいです。

 

いやあ、ここ、レイがイケメン過ぎてどうしようかと思います。まあ大人なだけかもしれませんが。

 

DXも、自分がディアがファラオン卿の妃になることについて割り切れない思いを持っているのをレイの感想を聞くことによって折り合いをつけようとしていたことに気がついて、「俺何やってんだろ」と思います。久々に恋に悩む少年になってます。

 

屋上にひっくり返って色々なことを反芻するDXですが、ある重大なことに気づきます。レイは今、「僕らは10年以上ファラオン卿に・・」と言いました。でも109話でディアは、「決心が固まった今になって「出会うなんて」」と言ってたことに。

 

「出会う」?

 

「・・・誰の話だ?」

 

笑・笑・笑。

 

ここでバハルの言葉の意味が語られます。「鈴の緒を結んでおけというのは、脈がありそうならその子から気を逸らすなってことさ!」と。

 

「脈がありそうなら」。

 

柱で編集さんが「鈍感!」と叫んでます。(笑)

 

・・・いやあ、DX、ここまでニブいとは思っていませんでした。(笑)

まあよかったよかった?です。(笑)

 

しかしまあ、相思相愛ということになったら、余計話が面倒、という面もありますけどね。(笑)

 

ライナスとルーディーを出したのはそこでそう言う結論を出そうということかもしれませんが、さて次回はどういう展開になるのか。

 

楽しみでなりません。(笑)

 

しかしまあ、DXは、騎士の鏡である父・ルッカフォート将軍が、オソロシイ傭兵の母・ファレルにべた惚れで、何かと言うとすぐ吊るされて育って来たわけですから、ディアの天恵くらい、そのバリエーションみたいに思うだけかもしれないなあと思いました。

ここでもDXの両親が、彼らの力になるような気がしてきました。

 

まあ当面、DXはディアの騎士であることしか出来ないだろうなあとは思いますけどね。

はてさて、今後の展開がさらに楽しみになってきました。