コミックゼロサム7月号でおがきちかさんの「Landreaall(ランドリオール)」第157話「騎士の灯火」を読みました。

Comic ZERO-SUM (コミック ゼロサム) 2016年7月号[雑誌]
一迅社


ずいぶん間が空いてしまいましたが、一ヶ月ぶりの更新です。(その間のことはちょっと、直前のエントリに書きました)

前回156話「満ちる」はクレッサール編も大詰め、すべてが解決に向かいそうな状況が描かれていましたね。DXとクエンティンの「対決」が終わってからずいぶんたってる気がして単行本27巻を見てみたら、152話まで収録されていて、そのラストでクエンティンが倒れたところでした。

物理的に勝ったDX・ディアが、そこから4話かけてクエンティンとユージェニの真実を明らかにして行くことによって彼らのたましいを救い、「本当に」勝利する、そういう過程だったと思います。

今月の扉はベッドの上で眠りこけるディアと・・・。えっと、最初はDXだと思ったのですが、イオンかな?いや、多分DXでしょうね。現実では結ばれることのないDXとディアですから、せめて扉絵で、という作者さんの温情(?笑)ではないかという気がしました。

クエンティンとユージェニに敗北を認めさせたディアとDX。DXはディアに「大丈夫か?」といいますが、これはほとんどあなたの血よ、とディアは答えます。ごめんよ怖かったろ、というDXに首を振り、「あなたがいたもの」と答えるディアの瞳の深さ。この表情はとてもいいですね。

「竜創を戻してくれた君のおかげだ」というDX。DXには竜の加護がついている。これは1巻から3巻にかけて語られたエカリープ(DXの故郷)の火竜の加護なのですが、なぜかクレッサールに来てから消えかけていた。それを戻してくれたのはディアだ、とDXは思っていたのですが、ディアも、クエンティンの呪いによってDXがすべてを忘れてしまった時にDXの腕に宿る火竜の力に気がつき、それを呼び戻させたのですね。(28巻152話)。

「あなたの魂が呪いに縛られた時、竜創だけは免れた。呪いが発動したら竜創が反応してあなたを護る。解呪(アスペル)が施してあったの。聖職者の祝福(チャーム)のようなもの。私はあなたに、消えていた竜創のことを思い出させるだけで良かった」とディアは言います。

DXははっとします。読んでいて私もはっとしました。そう、22巻の119話「チャーム・チャーム」で王城の天恵ラボでダントンさんから純天恵の講義を受けたあと、リドがDXの竜創に触れ、何か竜創が発動し、それを「お守り(チャーム)だとでも思ってくれ」と言ったことがありました。

そう、リドはその時、そんなことをしてたのですね。

これは、アニューラスが召喚猫のシークレットにかけていた、もし自分が間違った命令をしたら自分を攻撃しろ、という命令(154話シークレットに描かれています)に共通するものがあります。自分が自分でなくなったときの保険、と言いましょうか。リドは、こういうことが起こることをーーDXはこういう攻撃には弱そうですからーー予見していたのかもしれませんね。まだクレッサールに行くことが決まる前の段階なんですけどね。

DXは改めて、一人で戦ってきたのではない、と思ったことでしょう。そしてこういう目だたないフォローが、リドというキャラに実に合っている、と思ったのでした。

しかし、ディアはここで反省モードに入ってしまいます。反省モードと言うか自己処罰モードと言うか。多分ディアは、こういうところがある人なんじゃないかという気がします。14巻70話でディアがレイを天恵で脅す?場面がありますが、逆に何かそういう失敗した過去のようなものがあったのかもしれないと言う気がしますし、「今の私がいるのは先生のおかげ。恩を返せるとしたらこれだけなの」と20巻109話で言っているのも、そこに何かディアの影のようなものを感じます。

ランドリの登場人物がいいのは、「過去の失敗」というものを多くのキャラが持っているところなんですね。そして現在の自分が、過去の自分の犯した失敗を越えて行こうとする。そこに物語の生々しさがあり、リアリティが生まれているように思います。ロビンは自分を父親に会わせようとしたDXを一度裏切ってしまったことを後悔していますし、DXは誤って人を殺してしまったことを忘れないために毎年レーカーベアの森にブドウを食べに行っている。「戦争と革命」にまつわる思い出は多くの大人たちに後悔を与え、なかでもDXの父、リゲインの抱えているものは大きい。ディアもまた、そうしたキャラの一人なのでしょう。

「私は天恵を、怒りにまかせて人を傷付けるために使おうとした」というディア。「私の天恵は隠しておかないと、もし制御できなくなったら取り返しがつかない」と下を向いて自分の罪の世界に入ってしまいそうになるディアを、DXは押しとどめます。

「メイアンディア、俺を見て。」と。

この場面、地味にいいですね。

地味だけれども、「僕のヒーローアカデミア」のオールマイトが「私が来た!」と言っているのと同じことをしていると思います。

DXを焦点の合ってない目で見るディアに、DXは「誰がそう言ったんだ。クエンティンは生きてるだろ」と言います。

「彼が正気でいるのは運が良かっただけ。私、一瞬本気で人を壊そうとした」というメイアンディア。

27巻152話のディアが「これを辿ればクエンティンの精神を攻撃できる」と思っていたとき、やはりその壊す!という意志はあったよなあ、と思いました。先月号でディアは「すべてを忘れて逃げるなんて許さないわ、クエンティン」と言っていましたが、やはりその意志もあったんだよな、と思ったわけです。

今そのことを思い出し、後悔しているディアに、DXは言います。「違うだろメイアンディア。君はクエンティンと戦って、彼に勝って、彼を救った」と笑みを浮かべて。「何もなくしてないよ。君は君だ。」

この場面、本当にいいです。

まあ、結果オーライと言えばそうなのですが、どちらにしても、DXもディアもクエンティンもユージェニも、そしてイオンも、すべての力を傾けて戦っていたことは間違いない。その中で、ふと自分の弱さが出てしまうことはある。しかしDXはそれを力強く、自分の弱さ、自分の罪を見つめて動けなくなるのではなく、自分の成し遂げたことを見るんだ、と語りかけているわけです。

あの場面、ディアは精神的に、イオンは物理的に、「敵」であるクエンティンを殺そうとした。しかし、その時正気を失っていたはずのDXだけが、「殺してはいけない」と言う確信から、六甲にイオンを止めさせたのですね。

ここに、DXの強さが、敢えて言えば「騎士」の精神があるのだと思いました。敵を殺さなければならないことはあるかもしれない。でも、それは怒りにまかせてであってはならない。それは「今」、やらなければならないことではない、と。

そうやって落ち着かせたディアに、今度はイオンが涙を流しながら言います。「おにいちゃんを、たすけてくれてありがとう」と。そのことばに、目に星が飛ぶディア。表情が全く明るくなります。

そしてイオンがここに居ることを初めて認識したDX。ここは笑います。

「イオンじゃないか!お前なんでここに、いや待て、ずっといたな!」ピャル、と反応するイオン、口がギャグ化するディア、ひたいに縦線の入った六甲、「え、なにこれ」と混乱するDX。「六甲気づいてたのか」というDXに、懐かしの「タコのトーン」が飛んでいます。これは懐かしい。昔からの読者にはおなじみですね。(笑)

ここで全く平常モードに戻った感じがします。イオンがいると急に元気が出るDXくん。全くこれじゃシスコンと言われても仕方ないです。(笑)

ずっとディアの天恵でアイシャがイオンであることに気がつかないようにされていたDXですが、すっかり感心しています。騙していたことを謝るディアの顔が可愛いです。「いいんだ。どうせイオンが頼み込んだんだろう?正直助かった」というDXですが、本当にそうですよね。

警護はボルカたちにまかせて、この事件の事後処理を考えるDXですが、ディアに「暫くは私があなたに大丈夫?って言い続けてうんざりさせるのよ、DX」とディアが言っていて、こういうセリフの気の利き方がこのキャラが好きな理由だよなあ、と思います。「はいレディ」と素直に答えるDXですが、寝落ちします。(笑)

ボルカの手を握って「DXに力を貸してくださって本当にありがとう。あなたはとても誠実な方ですね」というディアは、これはもうなんというか、王妃?の威厳です。(笑)なんかふんわりしてて、今月はとてもいいですね。

時が経ち。

「バハルたちが到着した」とDXを起こす六甲。相変わらずいつ寝ているのかわかりません。(笑)「体中痛い~」とうめくDXですが、完全に六甲に甘えてますね。(笑)しかしディアに「だいじょうぶ?」と言われて焦るDX。こっちのベッドで眠っちゃったの。イオンと別の部屋で休むのは寂しくて、というディア。やはり扉の二人はイオンとディアですかね。わかりません。(笑)

「あいつよく今まで無口でいられたな」と思うDX。確かに良く我慢してましたよね。(笑)

DXとイオン、六甲が城の外に出ると、バハルたちが引いてきた馬車が。そしてその上空には…あの光の鰭(ハルフレット)が!メルメルさんたちをつれてきたバハルでしたが、馬車から降りてきたのはなんとリゲインとファレル、DXの両親でした。

先月のラストに獣鳴の笛(シュリール)が出てきて、これは、と思いましたが、やはりこの笛で暁追のイプカのハルフレットを呼んだのですね。イプカが見られる!と喜んだのですが、今月は出てきませんでした。(笑)来月、顔を出してくれるとは思いますが。(笑)

イプカについては、10巻48話で出てきています。ライナスが持っていたシュリールを六甲が吹いてイプカを呼び出し、ハルフレットのイルビに乗って、ウルファネアのリドを助けに行った、そこで出てきた少年です。ライナスとイプカの因縁?については21巻冒頭の110-111話に出てきています。番外編みたいな感じでしたね。

私はなぜかあのイプカが好きで、すごく楽しみにしていただけに残念でした。(笑)でもハルフレットの上に影が見えますので、多分来ているのでしょう。おそらくは、運賃の金塊が足りなかったので取り立てにきたに違いありません。(笑)

さて、両親と再会を果たしたDXたち。特にリゲイン・ファレルと同行したのに途中で行き別れになってしまった(23巻125話)六甲を、ファレルは一番心配していたのですね。そしてDXの腕に抱きつくイオンの嬉しそうな顔。ブラコンめ。(笑)「みんなで一緒に帰れるね!」と頬を紅潮させて言っています。家族の再会を見つめるのは、ディアと、ライナスとルーディー。そしてディアの腕には、あのレーカーベアの子ども。(DXが黒虹に囚われ奴隷にされていた時犬のようにうろついていて、ライナス・ルーディー・玉階オルタンスに救出された時、一緒に連れてきた。26巻140-141話に出てきます)何というか全体に一件落着という感じですね。

それにしてもイプカが出て来ない。(笑)それに、ライナスとルーディーはどこにいたのでしょうか。クエンティンの城に向かう傭兵軍団と黒虹を出た時には一緒だったのに、クエンティンの城についた時にはいなかったから、途中から別行動になったのでしょうね。そしてバハルたちと合流した。

・・・そうか、ユーハサン鎮守でバハルや六甲と合流した時に六甲はDXとクエンティンの城に来て、ライナスたちはバハルたちと一緒に行動したのですね。

21巻を読めばわかるように、ライナスはイプカと顔を合わせたくないので、そのへんどうなったのかも楽しみです。(笑)

そして一息ついて。

一息ついてないのは、DXとメイアンディアの関係ですね。

将軍(リゲイン)がクエンティンやユージェニと話をしている。そこには、リルアーナとユージェニの侍女だったメルメルさんもいるかもしれません。長い時間がかかりそうな話ですね。

そしてDXはメイアンディアに、「まだ使命は終わっていない、君を大老のところまで無事に送り届けないと」と言います。

DXはメイアンディアをレディとして、忠誠を誓う騎士になった。そしてディアは、新王たる大老・ファラオン卿を支えるために王妃になる。それは、ベネディクト卿が言うように、「貴族の結婚は、この国の役職に就くのと同じ」(22巻118話)なのかも知れません。まあ10代の二人に取って、そんな簡単に割り切れることではないでしょうけど、でも、そのように二人は動こうとしている。

切ないんですが、それはそれで未来もあるような気もします。

大きいのは、ロビンの存在かもしれません。

男子の子孫がいることが明らかになったファラオン卿が、本当に王に即位するのか。となると、王妃の地位が約束されているディアの立場も微妙です。救国の英雄となったDXが帰国して、どのような立場に置かれるのか。わからないことは多いですね。

さて、クレッサール編と言うかクエンティン編と言うか、が一段落して、さらに先が楽しみになったランドリオール。来月以降をさらに楽しみにしたいと思います。(でもイプカは見たい。笑)

今月は本当に、読んでいて幸せな気持ちになりました!